私訳戦国乱世  クベーラの謙信

zurvan496

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  能登畠山

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 足利義昭の言ってきた武田北条との和睦を、謙信は断った。
 氏政と勝頼も同じ様だ。

 しかし本願寺との和睦の仲介は、頼む事にした。
 そうなれば、織田とは手を切ることになる。
 だが信長は上方での青苧の商いを、禁止にはしなかった。
 この辺りが信長と義昭の差なのかもしれない。

 敵対しても、完璧に手を切らない。交渉の余地を残しておく。
 そう考えているのだろう。

 しかし流石に、鉄砲や玉薬は売ってくれなくなった。

 上方の鉄砲や玉薬は、全て織田の御用商人である納屋の今井宗久が仕切っている。
 織田と敵対すれば、上方から買うことは出来ない。

 仕方なく毛利を通じ、西国から取り寄せる事にした。
 だが毛利も博多の町を大友に抑えられており、あまりこちらに回して貰えない。

 ただ謙信にすれば、加賀越前の門徒との戦さが収まれば、そこまで鉄砲が必要なわけで無い。

 そういう意味では束の間ではあるが、とりあえず安定は手に入れた。



 しかし当然、平穏は長く続かない。
「是非に弾正さまのお力を・・・・・・」
 小太りで目の小さな若者が、何卒、と頭を下げる。
 若者は能登畠山家の家老、遊佐続光の息子、盛光だ。
「このままでは、能登は織田のものになってしまいます」
 謙信は黙って、盛光の言葉を聞く。


 事の起こりはなんの事はない、よくあるお家騒動だ。
 能登の守護は畠山家には、七人衆と呼ばれる重臣たちがいる。
 有力な国衆がいて、その上に名家の守護がいる。どこの国でも同じだ。
 数年前まで七人衆の筆頭は、温井総貞という男だった。
 越中で椎名康胤と神保長職が争っていた時、和睦の仲介を謙信は能登畠山家に頼んだのだが、その時に実際に裁いたのは総貞である。
 しかしその後、畠山家の当主、義綱が総貞の専横を憎み、誅殺。次席家老だった遊佐続光が筆頭家老になり、くり上がって長続連が次席家老になった。
 二人は総貞の様に、自分たちも義綱に誅殺されるのではと思い、先手を打って義綱を追放、その息子の義慶を当主にする。
 こうして能登は、遊佐続光と長続連のものとなった。

 だが当然、そのままで済む訳がない。
 続光と続連の間で対立が生まれる。
 そこで次席家老の長続連が考えたのは、古来より誰もが取る悪手である。
 つまり他国に、それも強大な相手に後ろ盾を頼むという事だ。
 続連が頼ったのは、もちろん天下人信長である。

 こうなればいつの時代、どこの国でも同じことを対立者はする。他の有力者に助力を頼むのだ。
 遊佐続光は謙信に、息子の盛光を寄越した。


 愚かな事だ。
 遊佐続光も長続連も自ら能登という国を、謙信と信長に売り渡しに来たのだ。

 彼らは愚かだが、能登が織田のものになるのは不味い。
 織田は越前を領有し、加賀にも攻めている。これで能登も織田のもになればかなり厄介だ。
 越後を守る為には、越中を壁にしなければならない。
 その越中の北が能登で、西が加賀だ。
 能登と加賀を取られれば、北と西から挟み撃ちにされる。
 逆に能登を謙信が取れば、加賀を北と東から挟み撃ちにできる。
 だからなんとしても、能登は手に入れたい。

「承知した、助太刀いたそう」
 そう謙信が言うと、かたじけない、と遊佐盛光が頭を下げた。
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