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漫画家の漫画家による漫画家のための漫画雑誌

 自分なりの火の鳥

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「ベレー帽は置いといて」
「置いといて」
 佐々木が物を置く仕草をするので、吉田は真似をする。

「俺が浦沢先生に言いたいのはね」
「はい」
「浦沢先生も、そのコムだかポムだかトムだかをね」
「ハハハハハハッ、はい」
「それをやるべきだ」
「分かんねぇのをやるべきだと」

「つまり」
「はい」
「若い漫画家に浦沢先生が編集者として付くのプラス」
 佐々木が指を回す。
「大物の漫画家が、自分なりの火の鳥を描いていくのね」
「はいはいはいはい」

「だからもう、生涯収入は稼いでいる」
「はい」
「そう言う漫画家の人らが、自分の描きたいものを描く」
「はいはいはい」
「ウケるとか人気とか関係ない、自分が描きたいもの、訴えたいこと」
「はい」
「これが私の火の鳥なんだ、ってモノを描く漫画雑誌、月刊ウラサワ」
 ハハハハハハッと吉田は笑う。
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