イーペン・サンサーイのように

黒豆ぷりん

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私を見つけると、秋月さんはいつもと変わらない風に、手を振った。

「さくら!」

「秋月さん」

ぎこちなくそう呼んで手を振った

「じゃ、行こう!」

と秋月さんに手を引っ張られて駅に入ると

海の最寄り駅までの運賃を確かめてから、秋月さんはIKOKAに3000円チャージした。

お年玉を財布にねじ込んできたので、私も同じようにした。

「さくら、ラッキー!めっちゃいいタイミングで来たな。電車、あと5分で出る」

タイミングがいいとかラッキーと言う言葉が妙にくすぐったく感じる。

間の悪い私とは真逆の言葉だから・・。

ホームに入ると、すぐに電車がやってきた。

秋月さんが先に乗り、続けて私が乗り込み空いていた席に二人並んで座った。

アニメのキャラについて、とりとめのない会話をしながら

2回電車を乗り換えて、やっと海についた。

平日4時すぎの海はとてもすいていた。

どんよりした気持ちにはかわりがないけれど、海の香がツンと鼻孔をくすぐって、

海に来たという実感をわかせてくれた。

10月の浜は少しひんやりとしていたけれど、

太陽が出ている間はまだ体をじんわりと包んでくれているようなぬくもりを感じた。


秋月さんはリュックからビニールシートを出して敷いてくれた。

「どうぞ」

「ありがとう」

そう言って二人は海に向かって並んで座った。

波の音がしていた。波は規則正しいようで実はその時時で音や大きさも違っている。

しばらく、海に飲み込まれているようなそんな錯覚にとらわれていると、

秋月さんがぼそっと言った。

「さくら、つらかったな。なんかしらんけど、しょうもない悪口気にしたらあかんで」

「・・・」

「詳しいことは分からへんし、しゃべりたないことは、しゃべらんでええから」

「・・・」

秋月さんは私のことをとても気を遣って優しくしてくれてる。とても嬉しい。

でも、私が間の悪い人生を歩んできて

母の命と引換えにここにいて、母や父を不幸にして生きてることの辛さなんか分からないから。

私のつらい気持ちは絶対に分からないから。

素直になれない自分にガックリしながらもどこかで秋月さんに助け求めているような自分が嫌。

弱い自分が嫌。


波の音だけしか聞こえなかったその時間はどれくらい長かっただろう。

そんな静寂を秋月さんのとんでもない言葉が止めた。
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