イーペン・サンサーイのように

黒豆ぷりん

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秋月さんはあたりが暗くなって来るのを待っていたように口を開いた。

「魔法始めます」

リュックの中から秋月さんは白い袋のようなものを出した。

そして、折りたたんであった白い袋のようなものを膨らませてお堂の鐘のような形にして

一つずつ砂浜に並べ始めた。

1,2,3,・・10

並べ終わると、

持っていたライターで白い袋の中に固定してあったのだろう着火剤のようなものに火をつけていった。

闇の中、ランプシェードのような白い袋の中でオレンジ色の炎がゆらめき、

それらは1つ、2つ・・とランタンになっていった。

明かりがともる様は幻想的で、息ができないほど素敵で・・あまりにも非現実的で・・・

10個全てに明かりが灯ると、砂浜はまるで宮殿のよう。

しばらくすると、温まった空気で浮力を得たランタンはそのままふわりと空中に浮かび上がっていった。

この世のものとは思えない炎のマジック・・まさに魔法!


「すごい!」


ランタンに灯る炎に見とれていると、そこに優しい笑顔の女性の顔がぼんやりと浮かび上がった。

写真でしか見たことのない私の母・・


「お母さん」


「さくら・・私の大事なさくら。会いたかった」


「私もだよ。ずっとずっと、誰よりも会いたかった」


「私は、あなたにずっと伝えたかった。

 あなたが生きることを苦しんでいることは何よりも辛い。
 
 だって、あなたは私のために生まれてきたのだから。

 あなたは私のために生まれてきたの。

 私のために生まれてくれてありがとう。

 大好きだよ。さくら」


「お母さん!」


  
気がつけばとめどなく涙があふれていた。

私、間が悪かったわじゃない。

お母さんのために私はいまここにあるんだ!



いつの間にか隣に戻っていた秋月さんは言った。

「さくらのためのイーペン・サンサーイや」

「イーペン・サンサーイ?」

「仏様に感謝の気持ちを捧げるタイのお祭りで、熱気球を空に一斉に放つねんて。

 ディズニーのラプンツェルの映画にもこんな風景が出てくるんやけど、一回やってみたかってん。

 さくらに元気になってほしかったから・・今日この魔法を発動したというわけや」

「本当に、秋月さんは魔法つかいだったんだね。」

「まあな」

「一生忘れない!こんな素敵な魔法一生忘れない!」

私は秋月さんに抱きついていた。

「実は私・・・お陰でおかあ・・」

「何やのん?」

「ううん、何でもない。ありがとう。秋月さん、本当にありがとう」

お母さんに会えたのは私の幻想かもしれない・・

「言いかけてやめるんはいややなあ」

「まあ、まあ」

「そや、気になっとったんやけど、さくらも秋月さんやなくて、楓って名前で呼んでくれてもええから」

「そうやな。じゃ、楓、これからもよろしく」

「あれ?さくら、変な関西弁になっとるで」

「アハハハ」

夢のような時間・・素敵な魔法・・もう二度と会えない時間・・

「私、本物のイーペン・サンサーイ見たい!楓と」

「私も・・」




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