ギルド《ボンド》

きたじまともみ

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第一章 癒しの矢

5 素材集め

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 話しながら食べ「ごちそうさま」と四人で手を合わせる。片付け終わるとシーナが紅茶を淹れてくれた。

「ねぇチアちゃん、隣の武器屋に行ったんだけど、この素材ってどこで手に入るか分かる?」

 俺とマイルズは貰ったメモ用紙を差し出す。

「基本的には素材屋さんで買えるよ。魚人の鱗とスノースパイダーの糸は高価だから、私が持ってるのをあげるよ」
「いや、そんな高価なものなら貰えないよ。いくらくらいするの? 払うよ」
「ご飯のお礼。お金のことが気になるなら、またご飯を作って」
「チアちゃんのためなら毎日でも作るよ!」

 顔を真っ赤にしたマイルズの精一杯の告白を、チアは「毎日は大変でしょ」とスルーした。

「量のいる鉄鉱石と木材は一昨日出会ったケイルの森にあるよ。他の細かいのは素材屋さんで買うのがいいかな」

 シーナが素材屋の場所を、チアが書いた地図に加えてくれた。

「私は明日から依頼でしばらく街を離れるから、今から家に取りに来てくれる?」
「行く!」

 マイルズが身を乗り出して声を上げる。

「ルルを預けるね。移動も楽だし鉄鉱石と木材も質の良いものを教えてくれるよ」
「助かる。俺とマイルズには分からないから」

 シーナが収納ボックスをまた貸してくれた。木材も鉄鉱石も持ち運ぶのが大変だろうから、と。
 礼を言い、紅茶を飲み干してシーナと別れてチアについていく。

 チアの家は歩いて五分ほどの場所にある共同住宅。ホテルのように入り口に人がいて「おかえりなさいませ」と頭を下げた。五階まで登り、部屋の前に着く。

「ここで待ってて。取ってくるから」

 チアが部屋に入り、マイルズと二人になった。

「ここって空き部屋あるかな?」
「絶対高いって! もっと身の丈に合った家を選べよ」

 チアはギルドで働いている。この家に住めるのだから、実力のある魔術師なのだろう。
 すぐに扉が開き、マイルズに魚人の鱗、俺にスノースパイダーの糸をくれた。

「本当に貰っていいの?」
「うん、私は武器を使わないから素材は売りに行くしか用途がないし」
「でも金になるんだろ?」
「売れる素材は他にもいっぱいあるし、お金に困ってるわけでもないからいいよ」
「そんなに儲かるの? ギルドって」

 まだ畑仕事しかしていないから、俺とマイルズの懐は寒い。

「人によるかな。高度な依頼ならいっぱい報酬が貰える。SからDまでのランクがあるんだけど、Sランクの依頼はSランクのギルド員しか受けられないから高い。Dは誰でも受けられる優しいものだから安いよ」
「チアちゃんのランクは?」
「私はAランクだよ」

 ボンドにはSランクが三人しかいないと教えてくれた。チアはかなりの実力がある魔術師だと窺える。

「じゃあ素材集め頑張ってね」
「チアちゃんも依頼頑張ってね」
「ありがとう」

 チアがルルをマイルズに預ける。ルルはマイルズに抱かれて顔を擦り寄せた。
 チアが手を振り、部屋の扉が閉まる。

「今日のうちに素材屋で必要なもの買っとくか。そうしたら明日、鉄鉱石と木材を手に入れたら、武器屋に持って行けるし」
「そうだな」

 素材屋に行き、ルルを連れていることでチアの知り合いだと分かり、店主がかなり割引をしてくれた。チアは安価で質の良い素材を売ってくれるから、と。明日の素材集め以外でも助けてもらってしまった。

「チアに足向けて寝られないな」
「自分に合う武器を作ってもらって、絶対にギルドの入団試験に合格しよう。そうしたら、今度は俺たちがチアちゃんを助けられるかもしれないし」
「そうだな」
 帰宅して、明日のために早い時間からベッドへ入った。




 早起きして街の外に出る。大きくなったルルに乗って森に向かった。何度乗っても心が踊る。スピードも乗り心地も最高だ。

 森に入ってルルが辺りを見渡しながら進む。一本の木の前で止まって俺とマイルズを下ろした。この木を切れということだろう。いつも使っている弓よりも長く切った。足りないよりは余裕があるほうがいいだろう。

 収納ボックスにしまって、再びルルに跨った。
 鉄鉱石がある場所に着いて降りる。ルルが前足を叩きつけると、鉄鉱石がバラバラと落ちた。
 ルルのパワーに身震いする。初めて会った時、俺はあの足に踏まれていたのだから。

「ルルありがとう」
「ルル助かった」

 鉄鉱石も収納ボックスにしまい、マイルズとルルを撫でる。大きなルルは甘えた声を出しているのだろうが、辺りが震えるような地を這う鳴き声だった。

「帰ろうか。武器屋に寄って、素材を渡したら美味しいものを作るから」

 マイルズの言葉にルルはすぐに身体を低くする。早く乗れということだろう。主人に似て食いしん坊だ。

 ものすごい速さで街に戻り、武器屋に素材を渡した。道具屋に行くとシーナはおらず、マナに収納ボックスを返す。シーナに会えなくて少し残念に思っていたら、帰宅途中で食材を抱えたシーナと出会った。

「荷物いっぱいだな。持つよ」

 シーナから受け取る。

「カイくんありがとう」
「俺はシーナを送っていくから、マイルズは先に帰ってて」

 二人っきりにしろ、と目で訴える。感じ取ってくれたのか、マイルズは頷いた。

「先に帰ってご飯作っとく。ルルもお腹減ってるだろ?」

 街の中だから小さくなっているルルは、可愛らしい鳴き声をあげた。
 シーナと並んで道具屋に向かう。

「重くない?」
「これくらい平気だ。でも女の子には大変だろ? いつも買い物をするの、大変じゃないか?」

 そう聞いてはたと気付く。俺とマイルズに収納ボックスを貸してくれたから、シーナは食材を抱えていたのかもしれない。それなのに「大丈夫だよ」と何でもないことのようにシーナが笑う。

 笑った顔が可愛くて、胸が跳ねた。一緒に過ごす時間が増えるに連れて、シーナに惹かれていくのが分かる。まだ好きかは分からないけれど、もっとシーナのことが知りたい。

「今度さ、二人で飯食べに行かない?」
「いいよ」
「夜でもいい?」

 昼間だと店があり、ゆっくりできないだろうから、なるべくなら夜に会いたい。

「うん、分かった。いつにする?」
「明日は?」
「大丈夫だよ。楽しみにしているね」
「ああ、俺も」

 満面の笑みでそんなことを言われるから、舞い上がってしまいそうになる。
 店の奥にあるテーブルに食材を置いて「また明日」と道具屋を出た。




 部屋に帰ってシーナとデートすることを、マイルズに伝えると驚かれた。

「カイはシーナちゃんのことが好きだったのか?」
「いや、知り合ったばかりだしそこまでではないけど、可愛いなと思うし、もっと知りたいと思ったから誘った」

 ルルが俺よりも大きくなり、前足を上げて爪を光らせる。
 森で会った時はシーナの近くにいただけなのに、問答無用で踏まれた。その頃に比べれば、俺にも懐いてくれたのか? 威嚇だけで済んでいるし。ルルは主人の代わりに、シーナを守ろうとしているのだろう。

「大丈夫だって! 飯食いに行くだけだしなにもしないって。だから足下ろして小さくなろう、な?」

 俺が身体の前で両手を見せて、落ち着け、とルルを宥める。
 ルルはマイルズに視線を送った。

「カイはシーナちゃんの嫌がることはしないよ」

 不服そうな表情ながらも、ルルは小さくなってマイルズの腕の中に収まりに行く。マイルズには完全に懐いている。美味い飯って偉大だよな。

「それでさ、ちょっと相談なんだけど、デートって何したらいいんだ?」
「さぁ? 俺だってデートなんてしたことないし」
「飯食って別れるだけだと、ツレと遊びに行くのと何が違うんだろ?」

 俺もマイルズも村に歳の近い女の子がいなかったから、知識も経験も乏しい。
 二人でうーん、と頭を捻る。

「プレゼントとかはどうだ?」
「金なんてねぇよ」

 昨日の依頼で得た報酬は、素材屋で使ってしまった。食事代くらいしか残っていない。

「明日は昼に依頼を受ければいいじゃん。花とか贈れば?」
「そうか、そうだな! 昼は働いて花をプレゼントしてみるわ」
「夜なんだから帰りは家まで送ってやれよ」
「ああ、なんかデートっぽいな」

 マイルズだってデートをしたことがないのに、案を出されてなんか悔しい。

「楽しんでこいよ」
「ああ、マイルズもチアを誘えば?」
「帰ってきたら誘ってみようかな」

 ルルが首を伸ばしてマイルズの頬を舐める。

「ルルも応援してくれんの?」

 嬉しそうにマイルズが笑うが、俺とマイルズのこの差は何だろう。腑に落ちない。
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