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4 温かい家族
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夕方になると「ただいま」と玄関の扉を開けながら、男性が帰ってきた。
この人がハンスさんだろう。
リビングでリリアちゃんを抱く私と、ぷくぷくの小さな手に人差し指を握られて嬉しそうなフィンさんに目を見張る。
「お帰りなさい。フィンがいい人を連れて会いにきてくれたのよ」
私とフィンさんはまだ誤解されたままだが、フィンさんは否定しない。私はご馳走のためだけど、フィンさんは私と誤解されたままでいいのだろうか。
「フィンくん来てくれてありがとう」
「うん、俺も会えて良かったよ」
リリアちゃんがハンスさんに向かって拳を振り回すから、私はそっとリリアちゃんをハンスさんの腕に預けた。
抱っこし慣れているのだろう。フィンさんとは手つきが全然違う。
何も心配することのない、温かい家族だ。
私は家族の顔が思い浮かんだ。
全員血の繋がりはないけれど、いつもみんな笑顔で家計は寒くても心は温かかった。
少しだけみんなに会いたくなった。
「ステラちゃん、リリアの面倒を見てくれてありがとう。食事ができたわ」
ダイニングテーブルにはチキンソテーとキノコのポタージュ、サラダにパンが並んでいた。
美味しそうな匂いにお腹が鳴る。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。
チキンソテーには濃い紫色のソースがかかっていた。珍しく思いながら口に含むと、ジューシーな鶏肉にブドウのフルーティーな香りが合わさり、上品な酸味がクセになる。
ブドウが名産の町だから、ブドウのソースを合わせたのだろう。フレッシュなブドウを使うことによって、豊な香りと酸味がチキンの旨味を引き出している。
チーズと葉物野菜のサラダもブドウのドレッシングが掛かっていて、パンにもブドウのジャムが添えられていた。
キノコのポタージュはとろけるようななめらかな口当たりで、生クリームのコク加わり、まろやかで優しい味がする。
夢中になって食べていると「気に入ってもらえたみたいでよかった」とイレーネさんが目を細める。
「すごく美味しいです」
「ブドウ酒もどうかな? 僕が作っているんだけど」
ハンスさんが勧めてくれたブドウ酒もいただく。
あまりお酒を美味しいと思ったことはないけれど、甘味が強くて飲みやすい。
グタンはブドウ酒やドレッシングなど、お土産を買うのにすごくいい町だ。
観光名所や飲食店が少ないから、旅行としての選択肢には上がらないだろうことが勿体無い。
私とイレーネさんとハンスさんが話している中、フィンさんは無言でイレーネさんの料理を噛み締めるように味わっていた。
食事を終えて、片付けを手伝った。
「すみません、この町の宿屋はどこにありますか?」
私が聞けば、イレーネさんが目をパチクリとする。
「ここに泊まっていけばいいじゃない」
「いえ、そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません」
宿代はフィンさんが払ってくれることになっているし、知らない人の家より一人の宿の方がのんびりできる。
「でも宿屋なんてないから、町長の家になるわよ」
「……宿屋がないんですか?」
「ええ。他所から来る人なんて滅多にいないから」
ここか町長の家か……。全く知りもしない町長よりは、ここの方がいいのかな?
「すみません。お世話になります」
頭を下げると、ハンスさんが「客室を整えてくるよ」と部屋を出ていく。
「フィンと一緒の部屋でいいの?」
フィンさんとの仲を勘違いされているが、いいわけがない。
「別の部屋でお願いいたします」
口角を引き上げて、にっこりと微笑む。
「わかったわ。残念だったわね、フィン」
フィンさんはイレーネさんに肩をポンと叩かれて慰められているが、私とフィンさんはただの旅行会社の社員とお客様というだけの関係だから、何も落ち込むことはない。
ハンスさんが戻ってきて、部屋に案内された。
「ゆっくりしてね」
ハンスさんがリビングに戻っていく。
部屋に入る前にフィンさんに声をかけた。
「イレーネさんのことが問題なかったので、私は明日のお昼頃に王都へ戻ろうと思います。お迎えの日時を指定していただければ、町の入り口にまたお迎えにあがります。その方が料金も抑えられますし」
どれだけ滞在するかわからないから私はここにいる。私がいるだけで料金がかさむから、その方がいいと思って。私も別の仕事ができるし。
「俺も一緒に帰ります」
「承知いたしました。明日のお昼に町の入り口にいらしてください」
「一緒に行かないんですか?」
「帰る前にレストランに行きたいので。それでは失礼いたします」
部屋に入って扉を閉めるとベッドにダイブする。
疲れた。
転移魔法を使うより、お客様といる方が気を使いっぱなしで疲れる。
お風呂に呼ばれるまでのんびりして、あがってからはブドウジュースをいただいた。濃厚な甘味と爽やかな酸味が、幅広い世代の人に愛されるであろう味わいだった。
売っている場所を聞き、お土産に買って帰ろうと決める。
この人がハンスさんだろう。
リビングでリリアちゃんを抱く私と、ぷくぷくの小さな手に人差し指を握られて嬉しそうなフィンさんに目を見張る。
「お帰りなさい。フィンがいい人を連れて会いにきてくれたのよ」
私とフィンさんはまだ誤解されたままだが、フィンさんは否定しない。私はご馳走のためだけど、フィンさんは私と誤解されたままでいいのだろうか。
「フィンくん来てくれてありがとう」
「うん、俺も会えて良かったよ」
リリアちゃんがハンスさんに向かって拳を振り回すから、私はそっとリリアちゃんをハンスさんの腕に預けた。
抱っこし慣れているのだろう。フィンさんとは手つきが全然違う。
何も心配することのない、温かい家族だ。
私は家族の顔が思い浮かんだ。
全員血の繋がりはないけれど、いつもみんな笑顔で家計は寒くても心は温かかった。
少しだけみんなに会いたくなった。
「ステラちゃん、リリアの面倒を見てくれてありがとう。食事ができたわ」
ダイニングテーブルにはチキンソテーとキノコのポタージュ、サラダにパンが並んでいた。
美味しそうな匂いにお腹が鳴る。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。
チキンソテーには濃い紫色のソースがかかっていた。珍しく思いながら口に含むと、ジューシーな鶏肉にブドウのフルーティーな香りが合わさり、上品な酸味がクセになる。
ブドウが名産の町だから、ブドウのソースを合わせたのだろう。フレッシュなブドウを使うことによって、豊な香りと酸味がチキンの旨味を引き出している。
チーズと葉物野菜のサラダもブドウのドレッシングが掛かっていて、パンにもブドウのジャムが添えられていた。
キノコのポタージュはとろけるようななめらかな口当たりで、生クリームのコク加わり、まろやかで優しい味がする。
夢中になって食べていると「気に入ってもらえたみたいでよかった」とイレーネさんが目を細める。
「すごく美味しいです」
「ブドウ酒もどうかな? 僕が作っているんだけど」
ハンスさんが勧めてくれたブドウ酒もいただく。
あまりお酒を美味しいと思ったことはないけれど、甘味が強くて飲みやすい。
グタンはブドウ酒やドレッシングなど、お土産を買うのにすごくいい町だ。
観光名所や飲食店が少ないから、旅行としての選択肢には上がらないだろうことが勿体無い。
私とイレーネさんとハンスさんが話している中、フィンさんは無言でイレーネさんの料理を噛み締めるように味わっていた。
食事を終えて、片付けを手伝った。
「すみません、この町の宿屋はどこにありますか?」
私が聞けば、イレーネさんが目をパチクリとする。
「ここに泊まっていけばいいじゃない」
「いえ、そこまでご迷惑をかけるわけにはいきません」
宿代はフィンさんが払ってくれることになっているし、知らない人の家より一人の宿の方がのんびりできる。
「でも宿屋なんてないから、町長の家になるわよ」
「……宿屋がないんですか?」
「ええ。他所から来る人なんて滅多にいないから」
ここか町長の家か……。全く知りもしない町長よりは、ここの方がいいのかな?
「すみません。お世話になります」
頭を下げると、ハンスさんが「客室を整えてくるよ」と部屋を出ていく。
「フィンと一緒の部屋でいいの?」
フィンさんとの仲を勘違いされているが、いいわけがない。
「別の部屋でお願いいたします」
口角を引き上げて、にっこりと微笑む。
「わかったわ。残念だったわね、フィン」
フィンさんはイレーネさんに肩をポンと叩かれて慰められているが、私とフィンさんはただの旅行会社の社員とお客様というだけの関係だから、何も落ち込むことはない。
ハンスさんが戻ってきて、部屋に案内された。
「ゆっくりしてね」
ハンスさんがリビングに戻っていく。
部屋に入る前にフィンさんに声をかけた。
「イレーネさんのことが問題なかったので、私は明日のお昼頃に王都へ戻ろうと思います。お迎えの日時を指定していただければ、町の入り口にまたお迎えにあがります。その方が料金も抑えられますし」
どれだけ滞在するかわからないから私はここにいる。私がいるだけで料金がかさむから、その方がいいと思って。私も別の仕事ができるし。
「俺も一緒に帰ります」
「承知いたしました。明日のお昼に町の入り口にいらしてください」
「一緒に行かないんですか?」
「帰る前にレストランに行きたいので。それでは失礼いたします」
部屋に入って扉を閉めるとベッドにダイブする。
疲れた。
転移魔法を使うより、お客様といる方が気を使いっぱなしで疲れる。
お風呂に呼ばれるまでのんびりして、あがってからはブドウジュースをいただいた。濃厚な甘味と爽やかな酸味が、幅広い世代の人に愛されるであろう味わいだった。
売っている場所を聞き、お土産に買って帰ろうと決める。
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