おねしょ地蔵

のの花

文字の大きさ
1 / 1

おねしょ地蔵

しおりを挟む
ワシはこの山奥に住むじいさんタヌキ。

ジジタヌキじゃ。

山奥にあるこの小さな村はなぁ、いつの頃からかお地蔵さまがいらっしゃってな。

ほかには、な~んもないところじゃったが、むかしから村の子どもたちの元気よく遊ぶ声だけがひびく良いところなんじゃ。

ワシはこの村が大好きなのだよ。

だからこの村のことなら知らないことはなにもない。

そんなこのジジタヌキが地蔵さまの前を通ったときのことじゃ。

地蔵さまがシクシク泣いておってなぁ。

心配になって聞いてみたんじゃよ。

「はて?地蔵さまや。どうしたのじゃ?」

地蔵さまはシクシク泣くばかりでのう。

だからもう一度きいてみたんじゃ。

「地蔵さまや。なにかかなしいことでもあったのかの?」

地蔵さまは
「子どもたちがわたしを『おねしょ地蔵』と言って指をさして笑うんです。

しかも、まいにちまいにちここに来ては『おねしょ地蔵』って手をたたきながら大はしゃぎしているんです。

わたしはおねしょなどしてはいないと思うのですが。

でも、夏の暑い日も雪が降る寒い日もここから動けず夜になると疲れてぐっすりねてしまうのです。

だから、もしかしてほんとうにおねしょしているのかもしれないと自信がなくなってきたんです。

たしかに、朝目が覚めるとなんだかぬれているような気がするのです。

だから、かなしくてかなしくて涙がとまらないのです。」


「なるほど、それはつらい思いをしておるのぅ。

なんとか確かめることはできないのかの?」


「ムリです。
どうせわたしは『おねしょ地蔵』といわれつづけるしかないのです。

ただただ子どもたちを見守るのがわたしの役目なのに、これでは見守るどころか笑われるだけの何の役にも立たない地蔵です。

グスン・・・」


ワシはどうしたものかと考えた。

「そうじゃ、朝目が覚めておねしょしているのがわかるのなら、ワシが夜中の間ずっとここにおって見ているというのはどうじゃな?

そうすれば、きっと何かがわかるじゃろ・・」


「でも、ほんとうにおねしょしていたら見られるのははずかしい・・・です。」


「大丈夫じゃよ。ワシはもうジジタヌキじゃ。

おねしょのひとつやふたつ見たって、どうってことないわい!

それにワシだって子どもの頃はおねしょなど毎日しとったもんだ!」


そうして、夜になるとこのジジタヌキがやってきては木のかげからお地蔵さまを見守る日が続いていました。


月も出ていない真っ暗なある夜のことです。

風の音しか聞こえない暗やみに鼻歌がかすかにきこえてきます。

「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」

ジジタヌキは目をじっとこらしました。

でも、暗くてなにも見えません。

すると鼻歌まじりに「ジョジョォ~、ジョジョジョジョォ~」

変な音もきこえてきました。

よぉーく目をこらして見てみると、ぼんやりとある姿が見えてきました。

「あれは・・・キツネではないか!」

陽気な歌をうたいながらやってきたのは、まちがいなくキツネなのでした。

「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」

キツネはお地蔵さまのところまでくると、なんとなんとお地蔵さまめがけて “おしっこ” をかけているではありませんか!

それも、お地蔵さまの前を通るたびに何度も・・・


ジジタヌキはあきれてしまいました。

「これでは、おねしょ地蔵と言われるわけじゃ。」


夜が明けると、お地蔵さまはまたおねしょをしてしまったのかとシクシク泣きだしました。

子どもたちもあいかわらず「おねしょ地蔵や~い!」といってお地蔵さまをからかっています。

ジジタヌキはお地蔵さまの所へ行くと、夜に起きたことを教えてあげました。

「これは、すこしこらしめてやらないかんのう。
ワシにまかせてくれんかの?」

お地蔵さまは、おねしょが自分のせいではないことがわかり、ホッとしました。

そして、ジジタヌキにまかせることにしたのです。


ある夜のことです。

「ヨイヨイヨイヤサ!ヨイヤサのヨイヤサ!!」

どうやらあのキツネが来たようじゃな。

ジジタヌキは目をじっとこらしました。

キツネはお地蔵さまのところまでくると、いつもどおり “おしっこ” をかけようと片足を上げたその瞬間、聞いた事のないような声があたり一面ひびきわたりました。

グワワワワ~~

ドワワワワ~~
 
グビャアアアアアアアアアア~~~~~


地面がギシギシとゆれるほどです。


キツネはびっくりしてお地蔵さまを見ると、かいぶつかと思うような大きいジジタヌキがお地蔵さまの後ろにそびえたっていました。

そして、今にもキツネにおそいかかってきそうでした。

ジジタヌキにとっては、山のように大きく化けることなどあさめし前なのです。

腰が抜けるほどおどろいたキツネは “おしっこ” をするのも忘れて、ガクガクふるえながら後ろも振りかえらずピコンピコンと逃げていってしまいました。

「あっはっは!これにこりて、もうこんな悪さはしないだろう!」

それからというもの、二度とキツネはお地蔵さまに近寄らなくなったのじゃよ。

もちろんお地蔵さまは「おねしょ地蔵」などとからかわれることもなくなり、毎日子どもたちを見守りつづけています。

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

野栗
2023.10.07 野栗

タヌキとキツネは永遠のライバルですね!

2023.10.10 のの花

ご感想頂きましてありがとうございます。

お返事が遅くなり申し訳ございませんでした。

まだまだ書くことに不慣れで、四苦八苦しておりますが、ご感想頂いたことは
とても勇気になります。

精進していきたいと思います。

本当にありがとうございました。

解除

あなたにおすすめの小説

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

まほうのマカロン

もちっぱち
絵本
ちいさなおんなのこは 貧しい家庭で暮らしていました。 ある日、おんなのこは森に迷い込み、 優しいおばあちゃんに出会います。 おばあちゃんは特別なポットから 美味しいものが出てくる呪文を教え、 おんなのこはわくわくしながら帰宅します。 おうちに戻り、ポットの呪文を唱えると、 驚くべき出来事が待っていました

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

城下のインフルエンサー永遠姫の日常

ぺきぺき
児童書・童話
永遠(とわ)姫は貴族・九条家に生まれたお姫様。大好きな父上と母上との楽しい日常を守るために小さな体で今日も奮闘中。 全5話。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ナナの初めてのお料理

いぬぬっこ
児童書・童話
ナナは七歳の女の子。 ある日、ナナはお母さんが仕事から帰ってくるのを待っていました。 けれど、お母さんが帰ってくる前に、ナナのお腹はペコペコになってしまいました。 もう我慢できそうにありません。 だというのに、冷蔵庫の中には、すぐ食べれるものがありません。 ーーそうだ、お母さんのマネをして、自分で作ろう! ナナは、初めて自分一人で料理をすることを決めたのでした。 これは、ある日のナナのお留守番の様子です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。