レツダンセンセイ・グレーテストヒッツ

れつだん先生

文字の大きさ
18 / 74

カルピス・ウォーター

しおりを挟む
 昨日、長野県が爆発した。毎週日曜日になると、四十七都道府県の内、どれかが爆発する。既に沖縄と神奈川と長野が荒野と化していた。何故なのかは誰にもわからない。勿論、単なる学生の身分である僕にもわからない。最初こそ、学校が休みになるだの会社がやすみになるだので喜んでいたのだが、今じゃどこが爆発するのかにおびえる毎日だ。「あそこは大丈夫だ!」なんていうデマに右往左往され、転々と住家を変える人もいる。
 そんな時、僕は一人の男に出会った。僕が住むアパートの隣に住んでいる男なのだが、一日中部屋に篭り、たまに出てきてもぼさぼさの髪の毛と贅肉の塊となった腹を掻き毟り、近所の人から忌み嫌われている中年ニート。「怪しい人には近づいてはいけません」という代々からの言い伝えを守らないわけがなく、僕は引越しの挨拶や、それだけでなくすれ違い様の挨拶でさえしないように徹底していた。
 朝。暇を持て余した僕は、友人の家に遊びに行こうと部屋を出た。その時、ちょうど中年ニートと出会ってしまったのだ。離れていても異臭を放つその男を見て、僕は部屋に戻りたくなる衝動に駆られたのだが、我慢して廊下を歩く。そして中年ニートとすれ違うといった時、中年ニートがぼそりと「……次は大阪」と言ったのを聞いてしまった。
 そしてその週の日曜日、大阪が崩壊した。
 そのニュースを見た瞬間、僕は中年ニートの部屋へ転がり込んだ。部屋中に放つ腐敗臭に顔をしかめながら、部屋の中へと入っていく。中年ニートはパソコンをいじっていた。広がるゴミの上に座り、頭を掻き毟っている。ふけが風に舞い、はらはらと地面に落ちていった。
「まあ、座りなよ」
 中年ニートは、僕に背を向けながらそう呟いた。しかしゴミ山に座るわけも無くただうろたえていると、中年ニートは声を荒げながら、「ゴミに座ればいいだろ!」と叫んだ。
「次はさぁ、群馬だよ」
「なぜわかるんですか」
 背中にじっとりとひっつくシャツをぱたぱたとしながら、僕は仕方なくゴミ山に座り込んだ。
「神の声が聞こえるんだ」

 それからというもの、僕は中年ニートのマネージャーとして、預言者NEETを祭り上げた。そして信者から金を請求し、安全な場所を教え、億万長者になった僕たちは南国の島で悠悠自適の生活を送った。

 そして、最後に残った北海道が爆発し、日本人は僕と中年ニートだけになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

虚無・神様のメール・その他の短編

れつだん先生
現代文学
20年間で書き溜めた短編やショートショートをまとめました。 公募一次通過作などもあります。 今見返すと文章も内容も難ありですが、それを楽しんでいただけると幸いです。

処理中です...