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主の誕生日プレゼント
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(リーシア様の助言で、私の誕生日に二年連続で私物を奪い、プレゼントを贈ることで、好意を伝えたつもりなのでしょう。そして両想いを強固にするために、南方にある寂れた古城の管理を私に任せ、名前を変えたアンドレア様がアシスタントをするという)
「伯母上以外、南方に知り合いはいないが、念のために髪を染めるのと、瞳はカラーコンタクトで誤魔化す。目元に、ホクロでもつければ完璧か」
「どうでしょうね」
告げられた姿がイマイチ想像できなくて、曖昧な返事をした。
「……ここまで考えた俺を、カールは好きになってくれないのか?」
アンドレア様は構ってほしい子どもが母親にする感じで、私の手をゆらゆら左右に揺らし、強引に注目させる。私はそれに導かれるように目の前に座り、首を力なく横に振った。
「なんでだよ! 俺がしたくない見合いをしてたときに、悲しそうな目で見ていたじゃないか」
「私ではなく、アンドレア様に相応しい身分の方とご一緒になったほうが、きっと幸せに――」
思ったことを口にした瞬間、アンドレア様は眉をひそめて、チッと舌打ちをする。
「おまえの物差しで、そんなことを決めつけるな。カールじゃなきゃ幸せになれないんだよ、俺は!」
「アンドレア様……」
「おまえに窘められて、凹むくらいに叱られて、たまに褒められなきゃ、俺は生きてる意味はない」
掴んでいる手を引っ張られた勢いをそのままに、アンドレア様の胸の中に抱きしめられてしまった。
「俺はカールが好きなんだ。俺がこれだけ気持ちを伝えているのに、どうして素直になってくれないんだ」
「しかし――」
薄闇の中で上半身は熱いぬくもりを、鼻腔にアンドレア様の香りを感じて、胸が痛いくらいに締めつけられる。
「今の俺は貴族じゃなく、ただの男に成り下がってる。そんな俺がおまえとともにありたいと豪語しているのが、気に食わないのか?」
「…………」
(アンドレア様が心の内をお伝えしてくださるたびに、傷ついた私の心が癒され、沈んでしまったところから、どんどん浮上していく)
アンドレア様の胸元から、恐るおそる顔をあげた。蝋燭の淡い光に照らされた彼の面差しが、とても悲しげだった。目に映るそのお顔を、笑顔にしたくて――。
「私はアンドレア様をお慕いいたして…んッ!」
唐突に唇を塞がれたせいで、続きを言うことができない。しかも、くちづけが深いものに変化していく。
「んんっ……ぁっ」
後頭部の髪を手荒に掴み、逃げられないように施されたせいで、アンドレア様の激しいくちづけを受け続けた。まるで彼の想いを示すようなキスに、呼吸がままならなくて苦しかった。
苦しい中でも求められる幸せを感じることができて、みずから唇を押しつける。するとそれを合図にして、アンドレア様の顔が遠のいた。
「アンドレア様からのプレゼント、とても嬉しいです」
「なにを言ってるんだ。俺はおまえから、プレゼントをもらってないぞ」
「それって――」
言いかけて瞬間的にすべてを悟り、顔全部が熱を持ったことで、赤くなるのがわかった。
「伯母上以外、南方に知り合いはいないが、念のために髪を染めるのと、瞳はカラーコンタクトで誤魔化す。目元に、ホクロでもつければ完璧か」
「どうでしょうね」
告げられた姿がイマイチ想像できなくて、曖昧な返事をした。
「……ここまで考えた俺を、カールは好きになってくれないのか?」
アンドレア様は構ってほしい子どもが母親にする感じで、私の手をゆらゆら左右に揺らし、強引に注目させる。私はそれに導かれるように目の前に座り、首を力なく横に振った。
「なんでだよ! 俺がしたくない見合いをしてたときに、悲しそうな目で見ていたじゃないか」
「私ではなく、アンドレア様に相応しい身分の方とご一緒になったほうが、きっと幸せに――」
思ったことを口にした瞬間、アンドレア様は眉をひそめて、チッと舌打ちをする。
「おまえの物差しで、そんなことを決めつけるな。カールじゃなきゃ幸せになれないんだよ、俺は!」
「アンドレア様……」
「おまえに窘められて、凹むくらいに叱られて、たまに褒められなきゃ、俺は生きてる意味はない」
掴んでいる手を引っ張られた勢いをそのままに、アンドレア様の胸の中に抱きしめられてしまった。
「俺はカールが好きなんだ。俺がこれだけ気持ちを伝えているのに、どうして素直になってくれないんだ」
「しかし――」
薄闇の中で上半身は熱いぬくもりを、鼻腔にアンドレア様の香りを感じて、胸が痛いくらいに締めつけられる。
「今の俺は貴族じゃなく、ただの男に成り下がってる。そんな俺がおまえとともにありたいと豪語しているのが、気に食わないのか?」
「…………」
(アンドレア様が心の内をお伝えしてくださるたびに、傷ついた私の心が癒され、沈んでしまったところから、どんどん浮上していく)
アンドレア様の胸元から、恐るおそる顔をあげた。蝋燭の淡い光に照らされた彼の面差しが、とても悲しげだった。目に映るそのお顔を、笑顔にしたくて――。
「私はアンドレア様をお慕いいたして…んッ!」
唐突に唇を塞がれたせいで、続きを言うことができない。しかも、くちづけが深いものに変化していく。
「んんっ……ぁっ」
後頭部の髪を手荒に掴み、逃げられないように施されたせいで、アンドレア様の激しいくちづけを受け続けた。まるで彼の想いを示すようなキスに、呼吸がままならなくて苦しかった。
苦しい中でも求められる幸せを感じることができて、みずから唇を押しつける。するとそれを合図にして、アンドレア様の顔が遠のいた。
「アンドレア様からのプレゼント、とても嬉しいです」
「なにを言ってるんだ。俺はおまえから、プレゼントをもらってないぞ」
「それって――」
言いかけて瞬間的にすべてを悟り、顔全部が熱を持ったことで、赤くなるのがわかった。
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