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Please say yes:突然の来訪
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「さっき廊下ですれ違ったんだけど、どっからどう見ても、王子様って感じ!」
「ちょ~羨ましいんだけど。マジ、ヤバいよね」
朝から大騒ぎする女子共を、俺と同じように他の男子もウンザリしながら、聞いているだろう。
どっかの国の王子様が短期留学生という名目で、ウチの高校にやってくる。国名はおろか、名前すら覚えちゃいない。だって俺には全く、関係のないことだから。
きっと有能な学級委員長や、女子たちがこぞって大喜びしながら、王子様のお世話を進んでするだろう。
ホームルームを告げる鐘が鳴り、みんなきちんと着席する。いつもなら先生が来てからバタバタ着席するクセに、変なトコで一致団結する姿に、思わず苦笑いをした。
「ったく、ダルいわ……」
窓際の一番後ろの席。外から入ってくる心地良い風に、つい欠伸が出る。昨夜遅くまでゲームをしたツケが、やはり回ってきたようだ。
机に突っ伏して、堂々と居眠りを決行。先生の話も王子様の存在も今の俺には、関係ナッシングだしな。
どれくらいの時間が経ったか知らないけれど、あっという間に眠りについた俺の頭を、誰かがいきなり、つんつんと小突いてきた。折角の安眠を邪魔され、ムッとしながら渋々顔を上げると、そこには――
「やあ、おはよう!」
流暢な日本語で挨拶をした澄んだ声色に、ぎょっとするしかない。
肩まで伸ばした金髪を揺らしながら、二重瞼の青いガラス玉のキレイな瞳で俺を見下してくる王子様が、すぐ傍に立っていた。
突っ伏している俺の体を両手で押し退け、何故か強引に机へと腰掛ける。とても長い脚をすっと格好良く組んで、ハリウッドスターの様なキラキラした笑顔を、これでもかと振りまきながら、
「先生、俺この席がいいです! プリーズ!」
なんていう、信じられないお願いを言い出した。
「あの、王子様……。ここ俺の机、なんですけど」
(――お前の国じゃ、机を椅子にするのか?)
「ここから見る教室の景色が、とても眺めが良い。すごく気に入ったのだ」
「机を椅子にされる、俺の身になってくれよ……」
激しく顔を引きつらせながら王子様の顔を仰ぎ見たのに、俺の顔色も何のその。王子様は肩越しに振り返り、眩しい笑顔を崩さない。
クラスメートも王子様の奇行を、ただ黙って見ていた。担任もどうしていいか分からないらしく、オロオロするばかり。下手に注意したら、国際問題に発展しそうだからな。
「アンドリュー様、黙って見ていれば、また無茶なことを言い出して!」
執事らしき老人が廊下から、いそいそと教室に入って来た。途端に、苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな顔をしてもイケメンのまんまっていうのは、王子様のすごいところかも。
「はいはい。くだらないワガママ言って、すみませんでした。でも彼の隣の席ならイイでしょ?」
そう言って隣にいた女子の左手をそっと手に取り、その甲に優しくキスをした。教室にいる女子全員が、ごくりと息を飲む。
ホント何をやっても、様になるったらありゃしない。
「アンドリュー様っ!」
「一歩譲って、手を打ってやっているじゃないか。そう、喚き立てるな」
それを言うなら、百歩譲ってだろ。
まんまと隣の席をせしめ、ほくほく顔の王子様を呆れた顔しながら横目で見る。
「ねぇ、トイレの場所さ、休み時間に教えてくれない?」
なぜか俺の机に自分の机をぴったりとくっ付け、こそこそと耳元で囁く。
(そうだよな。王子様だろうがお姫様だろうが、出るモノは出る)
「分かりました……。あの、そんなに、くっ付かないで下さい」
「ごめん、嬉しくてつい。どうもありがとう」
ごめんと謝ったクセに、反省の色が全然ないと思われる。だって机に頬杖をついたまま、すげぇ楽しそうに、俺の顔を見つめるから。
何がそんなに嬉しいんだか……さっぱりワケが分からない。
食い入るような視線を完全スルーして、しょうがなく担任の話に耳を傾けることにした。
ざわざわとした、とっても嫌ぁな予感が、頭の中を駆け巡る――
「ちょ~羨ましいんだけど。マジ、ヤバいよね」
朝から大騒ぎする女子共を、俺と同じように他の男子もウンザリしながら、聞いているだろう。
どっかの国の王子様が短期留学生という名目で、ウチの高校にやってくる。国名はおろか、名前すら覚えちゃいない。だって俺には全く、関係のないことだから。
きっと有能な学級委員長や、女子たちがこぞって大喜びしながら、王子様のお世話を進んでするだろう。
ホームルームを告げる鐘が鳴り、みんなきちんと着席する。いつもなら先生が来てからバタバタ着席するクセに、変なトコで一致団結する姿に、思わず苦笑いをした。
「ったく、ダルいわ……」
窓際の一番後ろの席。外から入ってくる心地良い風に、つい欠伸が出る。昨夜遅くまでゲームをしたツケが、やはり回ってきたようだ。
机に突っ伏して、堂々と居眠りを決行。先生の話も王子様の存在も今の俺には、関係ナッシングだしな。
どれくらいの時間が経ったか知らないけれど、あっという間に眠りについた俺の頭を、誰かがいきなり、つんつんと小突いてきた。折角の安眠を邪魔され、ムッとしながら渋々顔を上げると、そこには――
「やあ、おはよう!」
流暢な日本語で挨拶をした澄んだ声色に、ぎょっとするしかない。
肩まで伸ばした金髪を揺らしながら、二重瞼の青いガラス玉のキレイな瞳で俺を見下してくる王子様が、すぐ傍に立っていた。
突っ伏している俺の体を両手で押し退け、何故か強引に机へと腰掛ける。とても長い脚をすっと格好良く組んで、ハリウッドスターの様なキラキラした笑顔を、これでもかと振りまきながら、
「先生、俺この席がいいです! プリーズ!」
なんていう、信じられないお願いを言い出した。
「あの、王子様……。ここ俺の机、なんですけど」
(――お前の国じゃ、机を椅子にするのか?)
「ここから見る教室の景色が、とても眺めが良い。すごく気に入ったのだ」
「机を椅子にされる、俺の身になってくれよ……」
激しく顔を引きつらせながら王子様の顔を仰ぎ見たのに、俺の顔色も何のその。王子様は肩越しに振り返り、眩しい笑顔を崩さない。
クラスメートも王子様の奇行を、ただ黙って見ていた。担任もどうしていいか分からないらしく、オロオロするばかり。下手に注意したら、国際問題に発展しそうだからな。
「アンドリュー様、黙って見ていれば、また無茶なことを言い出して!」
執事らしき老人が廊下から、いそいそと教室に入って来た。途端に、苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな顔をしてもイケメンのまんまっていうのは、王子様のすごいところかも。
「はいはい。くだらないワガママ言って、すみませんでした。でも彼の隣の席ならイイでしょ?」
そう言って隣にいた女子の左手をそっと手に取り、その甲に優しくキスをした。教室にいる女子全員が、ごくりと息を飲む。
ホント何をやっても、様になるったらありゃしない。
「アンドリュー様っ!」
「一歩譲って、手を打ってやっているじゃないか。そう、喚き立てるな」
それを言うなら、百歩譲ってだろ。
まんまと隣の席をせしめ、ほくほく顔の王子様を呆れた顔しながら横目で見る。
「ねぇ、トイレの場所さ、休み時間に教えてくれない?」
なぜか俺の机に自分の机をぴったりとくっ付け、こそこそと耳元で囁く。
(そうだよな。王子様だろうがお姫様だろうが、出るモノは出る)
「分かりました……。あの、そんなに、くっ付かないで下さい」
「ごめん、嬉しくてつい。どうもありがとう」
ごめんと謝ったクセに、反省の色が全然ないと思われる。だって机に頬杖をついたまま、すげぇ楽しそうに、俺の顔を見つめるから。
何がそんなに嬉しいんだか……さっぱりワケが分からない。
食い入るような視線を完全スルーして、しょうがなく担任の話に耳を傾けることにした。
ざわざわとした、とっても嫌ぁな予感が、頭の中を駆け巡る――
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