上 下
13 / 114
兄貴の絶望

しおりを挟む
「宏斗兄さんが好きなんだ!」

 僕は迷うことなく両腕を使って、兄貴の上半身にしがみついた。重なったところから伝わるぬくもりに、ゼロ距離なのを意識する。

(告白されることに慣れている兄貴は、どんな気持ちで僕の告白を聞いただろうか。ただの兄弟愛と思っているから、僕の抱擁に抵抗しないとか?)

「辰之ありがとう、俺のことを大切に思ってくれて」

 抱きつく僕の背中を優しく撫でる兄貴の耳元に、そっと顔を寄せた。

「兄貴は僕のこと、どう思ってるの?」

 答えはわかっているのに、訊ねずにはいられない。目を閉じて兄貴の返事を待つ。

「そんなの好きに決まってるじゃないか。俺を大切に思って、やってしまった行動はいただけないけど、それでも嬉しいよ」

「兄貴、違うんだ」

 僕は閉じていた目を開けるなり、自分の全体重を兄貴にかけて強引に押し倒した。スプリングで弾んだ躰を逃がさないようにすべく、ベッドに押さえつける。兄貴の下半身にカタチを変えた僕のモノが当たってるせいで、告げた言葉の意味が嫌というくらいに理解できただろう。

「辰之、なんでおまえ…こんなこ、と」

「言ったろ、好きだって。この世の誰よりも兄貴を愛してる」

 愕然とした表情で固まる兄貴の唇に、ドキドキしながら触れるだけのキスをした。

「んうっ!」

 顔を左右に振りながら僕からのキスを逃れた兄貴の両手を、隠し持っていた長い紐で素早く縛りあげ、ベッドの上部にある支柱にキツく拘束した。

「おまえ、俺になにか飲ませたな。くっ、力が入らない……」

「部活をやってる兄貴に、体力が劣る僕が勝てるわけないしね」

「このまま俺を抱くのか?」

 それでも抵抗しようと両腕に力を込めつつ、訝しげに細められた兄貴の瞳が、長い前髪の隙間から見え隠れする。どことなく色っぽく見える双眼に、ずっと見つめられたいと思ってしまった。

「抱かないよ。僕は兄貴の童貞を奪うために、こういうことをしたんだ」

「なっ!?」

 僕のセリフを聞いた兄貴の口が、ぽかんと開けっ放しになる。イケメンを崩すような仕草をされると子どもじみて見えるため、可愛らしくてめちゃくちゃにしたくなる。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,331pt お気に入り:22,201

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,388pt お気に入り:3,017

極道恋事情

BL / 連載中 24h.ポイント:1,108pt お気に入り:776

淫乱お姉さん♂と甘々セックスするだけ

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:8

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:33,009pt お気に入り:11,554

追放された悪役令息だけど何故キミが追いかけて来るんだ

BL / 完結 24h.ポイント:413pt お気に入り:1,316

極道オメガと魂の番~抗えない発情~

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:100

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:603pt お気に入り:3,085

処理中です...