ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

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桃瀬画伯ねた

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「ねぇねぇ郁也さん、どうして得意げに絵を描くようになったの?」

 得意げという言葉がちょっとだけ、ひっかかりつつ――

「毎年行われる出版社の新年パーティで、イベントがあるんだ。1分間で、お題の絵を描いてみようって企画な。ジュエリーノベルから、俺が代表で出てるんだ」

「へえぇ、誰が推薦したの?」

 郁也さんの絵のレベルを知ってないと、推薦できないような気がするのに。
"o(-_-;*) ウゥム…

「三木編集長。太鼓判を押してくれた」

「……そうなんだ。あのねこの間、仕事に使う手帳をちょっとだけ見たんだけど、これはなに?」

「ああ、そのコは太郎の妹。小学5年生だってさ。周防の病院前であったんだ」

 ……すざましい絵としか、いいようがないよ。きっとこんな人物に逢ったと、周防さんに説明するのに、喜んで描いたんだろうな。

「でも、どことなく太郎くんの似顔絵にも、似てるトコがあるような……?」

「だろだろ! ソックリだよな」

「――どうして、こんなにワイルドさをアピールしたのか、理解できないんだけど」

 実際に逢った彼は、そこまでワイルドな感じじゃなかったもの。

「そうかぁ? 周防のソーセージが食いたいなんて言うとこなんか、まんまワイルドだろ。このビリビリに裂けて、肌を露出させたトコ結構頑張ったんだぞ」

 確かに――

 どうして、ヘソ出しルックになってるのが疑問だったのだ。しかも胸ポケットに刺さっている物は、一体何だろう?

 あえて聞かないけどね。(ーー;).。oO(想像中)

 気を取り直して。

「あのね郁也さん、とあるクリエさんが【みたびぐだぐだ】というエッセイの706ページに、郁也さんが描いたインコを想像して、ねりキャンで作ってくれたんだよ。立体的に……」

「ねりキャンって何だ?」

「えっとね、粘土のように捏ねて作った物を、キャンディとして食べることが出来るお菓子なんだ。食べるのが勿体ないくらい、精巧な出来だった」

 いろんな意味で、すごいって思ったんだ。そこで――

「郁也さんに是非とも、インコの絵を描いてほしいって思うんだけど、どうかな?」

「うーん、インコか。描いたことねぇな」

「じゃあ早速、ネットで調べて描いてみる?」

 傍にあったノートPCを引き寄せ、インコを調べようとしたら――

「いやいや、そこはあえて脳みそ使って思い出しながら、俺なりに描いてみるよ。そのほうが、頭の働きにもすっげぇいいんだ」

 僕が用意した紙に、ボールペンで思い出しながら、ゆっくりと描いていく郁也さん。ゆっくり描いたけど、いつも通り1分で終了。

「よぉし、いいのが出来たぞ!」

 無言でそれを受け取り、どんな感想を言おうか悩んでしまった。
 o( ̄ー ̄;)ゞううむ

(やはり、期待を裏切らない桃瀬画伯の絵!)

 そんなことを思いながら、気になることを指摘してみる。



「郁也さん、インコが乗ってるこの丸いモノ、ボールなの? 芸をしてるところを描いたんだね」

「いいや、丸太に留まってるトコだぞ」

 Σ(|||▽||| )しまった、マズイ!

「そっ、そうなんだ。目つきが鋭くて、サイコーだね……」

 立体的に見ちゃダメだ、全体を大まかに捉えないと!

「周防の病院でドラ○もんを描いたとき、子どもが泣いちゃってさ。あれは焦ったぞ」

 何故かそのときのことを思い出し、遠くを見る郁也さん。

 ( ▽|||)サー

 某所で掲載している【周防武の最後の恋】の挿絵のドラ○もんは、あまりに凄まじすぎて、大人の諸事情で強制非公開になったけど、ピロトークのものは消されずに、恐ろしいモノが掲載中……

 桃瀬画伯に何か描いてほしい人は、コメントください。

(誰もいないってば!)
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