ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

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オカメちゃん

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「たらいまー!」

 周防さんの家から、夜遅くに帰ってきた郁也さん。予想通り呑んでいるらしく、ご機嫌な様子だ(苦笑)

「お帰りなさい、そんな状態でよく家まで帰って来られたね。足元が、ふらふらしてるじゃないか」

 はーっと呆れながら言ってやると、持っていたカバンからスケッチブックを取り出してぱらぱらめくり、顔色をパッと輝かせて、僕の手に強引に押し付けた。

 ――また、いつものヤツを見なきゃならないのか……

 渋い顔をしながらソレを見てみると、どうやらオカメインコだというのが分かる。きちんと特徴を捉えているのが、郁也さんの絵なんだ。



 しかし――

「ねぇ郁也さん。どうしてオカメインコが、ワカメを食べているの?」

 僕の質問にキッチンで水を飲みながら、何故か苦笑いをした。変なことを言ったつもりは、まったくないんだけどな。

「どうして、周防と同じことを聞くんだ。オカメだからワカメだろ」

 ( ̄▼ ̄)ニヤッ!
 何故かこんな顔をした郁也さんを、どんな顔をして迎え撃てばいいのか……

 いくら言葉が似てるからって、ワカメを食べさせるとか、意味が分からないよ。ここはこの絵から回避しないと、変な地雷を無意識に踏んで、キズつけちゃうかもしれない。話題変換しないとな――

「周防さんの家に、オカメインコがいたんだ?」

「ああ。太郎が旅行に行ってる間、世話を押しつけられたらしい。よく喋る鳥でさ、タケシスキスキッて煩く騒いでたぞ」

「ぷぷっ。それは聞いてるだけでも、周防さんがムダにテレまくってる姿が、想像ついちゃうかも」

 真っ赤な顔して、オカメインコと向かい合ってる周防さん。なかなか可愛い絵面だな。

「それだけじゃなくてな、随分と自己愛が強い鳥なのか、時折アイムスキという言葉を喋っていた。変わってるよなぁ」

「アイムスキ?」

 アイムスキ アイムスキ 歩、好き……あ、だからか!

 オカメインコとワカメをかける郁也さんだからこそ、気がつかないのかもしれない!

「郁也さんそれって、歩好きっていう言葉だったんじゃないの?  それなら辻褄が合うよ」

 くすくす笑いながら指摘してやると、(; ̄Д ̄)なんじゃと? なーんていう表情を浮かべた。

「俺が突っ込んだら、周防は否定しなかったし。確かに太郎の名前の歩なら、納得いく……」

「そりゃそうでしょ。恥ずかしがり屋で素直じゃない周防さんだからこそ、誤魔化すことが出来てラッキーだと思っただろうな」

 水の入ったペットボトル片手に近づいてきて、僕が持っていたスケッチブックを取り上げると、脱力した様子でソファに座る。

「ちっくしょ! からかうネタを、目の前で見逃していたとは」

 悔しそうに言って、描かれているオカメインコに、ぱしぱしとデコピンをしまくる。その刺激で何か思いついたのか、傍に置いてあったカバンから筆記用具を取り出して、一心不乱に何かを描き始めた。

 よっぽど悔しかったんだろう。いつもなら楽しそうに描くのに、唇を尖らせたまま、難しい顔をしてさらさら描いている。

 描いているものが鳥だと分かったので――

「えっと、あのさ。こんなのはどう? オカミインコ」

「は? 何だソレ」

 無理矢理考えたネタに、そんな厳しい顔して突っ込んで欲しくない(涙)
 
「オカメインコとオカミインコをかけてみたんだけど。オカミだけに、トサカをちょん髷にするんだよ、将軍っていう感じで」

「……面白くない!」

 Σ(|||▽||| )ウゥッ
 オカメインコとワカメをかける人に、言われたくないやい!

 不機嫌で固まる僕を尻目に、しっかり彩色を丁寧に施し、やがて出来上がった絵をこっちに見せてくれた。

「これくらいの遊び心がないとダメなんだぞ。俺を見習え!」

「∑(!? ̄Д ̄)゚Д゚)・д・) エェーッ!!」



 思わず郁也さんの顔とスケッチブックを交互に見てしまったくらい、その出来上がりはホント、何て表現したらいいのやら――

 僕は多くを語れなかった。皆さんはどう思いますか? オカミインコとオカマインコ、どっちが上でしょうか?

(オカマらしく、足を内股にしてるのがミソらしいです(;^ω^))
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