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秘められた熱
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次の日、普通に手紙を渡せばいいものを何を血迷ったのか坂本は、自作の小説が書かれたノートに挟んでわざわざ持って来た。
「これ読んでください。大事なものもしっかり挟まってます」
「あー、例のアレね。分かった、預かる」
「それじゃあ、失礼します」
なぜか逃げるように去って行く背中を不思議に思いながらぼんやりと眺めつつ、手渡されたノートをパラッとめくって中身を確認した。
冒頭に書かれた詩を読みながら職員室へ向かおうとしたのだが、思わず足を止めて読みふけってしまった。
「へえぇ――コイツは驚いた」
コレを読んで欲しいなんて、結構大胆だな。まるで僕宛にラブレターを貰った気分だぞ。何だか分からないが、ニヤニヤが止まらん。
次の時間、受け持ちの授業がないのをいいことに、ケロカーの中でじっくりと中身を拝見させてもらった。学校の授業以外でこうやって文章と向き合うのは久しぶりの行為で、思わず添削までしてしまう始末。
(若いっていいなぁ。勢いで何も考えずに書いてる感じが、羨ましいというか何というか)
ホクホクしながら楽しいひとときを過ごした僕とは対照的に、ノートを取りに来た坂本の顔は酷くやつれ切ったものだった。やつれているんだが、若干頬が赤くなってるのが疑問である。熱でもあるんだろうか?
「あのぅ三木先生、ノート返してくださぃ……」
「ああ、あのノートな。今、手元にない」
「はあ!?」
「だってよー、すっごく面白そうな内容だったからニヤニヤしながら読んでる自分の姿を、他のヤツに見られたくないだろ。だから車の中で、しっかり読ませてもらったぞ」
「そうですか、読んだんですね……」
僕が読んだと言った途端、悔しそうな顔をする。読めと言って渡したクセに、一体何だっていうんだ?
「ノート間違って、渡しちゃったんです……。国語の先生に読んで欲しいなんて、そんな大それたことしませんって……」
間違って渡したって、見かけによらずドジな奴なんだな。
「でも良かったぞ。主人公が死んじゃうとは、思ってなかったけどな」
「――それって、最後まで読んだんですね……」
良かったと誉めてやったからか、更に顔を赤くして俯く坂本。ドジな上に照れ屋なんだ、へぇ。結構可愛いじゃないの。影口叩いてたこと、許してやろうかな。
テレまくって恥らう様子を好感に思いながら(恥らってるにしては、ちょっと嫌がってるような顔してるのは何故だ?)小説について詳しく訊ねたいとことがあったので、思い切ってミーティングを提案してみた。
ケロカーの鍵を渡すと脱兎のごとく職員室を出て行った姿に、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
きっと話し合いで遅くなる予感がしたので、坂本を送ることになるだろうと家を調べてみたら、近所であることが分かった。
自宅から歩いて送って行ける距離に笑ってしまったが、坂本にとっては苦手な僕が近所に住んでるって分かったら、また渋い顔をするんだろうなと予想できてしまった。
次の日、普通に手紙を渡せばいいものを何を血迷ったのか坂本は、自作の小説が書かれたノートに挟んでわざわざ持って来た。
「これ読んでください。大事なものもしっかり挟まってます」
「あー、例のアレね。分かった、預かる」
「それじゃあ、失礼します」
なぜか逃げるように去って行く背中を不思議に思いながらぼんやりと眺めつつ、手渡されたノートをパラッとめくって中身を確認した。
冒頭に書かれた詩を読みながら職員室へ向かおうとしたのだが、思わず足を止めて読みふけってしまった。
「へえぇ――コイツは驚いた」
コレを読んで欲しいなんて、結構大胆だな。まるで僕宛にラブレターを貰った気分だぞ。何だか分からないが、ニヤニヤが止まらん。
次の時間、受け持ちの授業がないのをいいことに、ケロカーの中でじっくりと中身を拝見させてもらった。学校の授業以外でこうやって文章と向き合うのは久しぶりの行為で、思わず添削までしてしまう始末。
(若いっていいなぁ。勢いで何も考えずに書いてる感じが、羨ましいというか何というか)
ホクホクしながら楽しいひとときを過ごした僕とは対照的に、ノートを取りに来た坂本の顔は酷くやつれ切ったものだった。やつれているんだが、若干頬が赤くなってるのが疑問である。熱でもあるんだろうか?
「あのぅ三木先生、ノート返してくださぃ……」
「ああ、あのノートな。今、手元にない」
「はあ!?」
「だってよー、すっごく面白そうな内容だったからニヤニヤしながら読んでる自分の姿を、他のヤツに見られたくないだろ。だから車の中で、しっかり読ませてもらったぞ」
「そうですか、読んだんですね……」
僕が読んだと言った途端、悔しそうな顔をする。読めと言って渡したクセに、一体何だっていうんだ?
「ノート間違って、渡しちゃったんです……。国語の先生に読んで欲しいなんて、そんな大それたことしませんって……」
間違って渡したって、見かけによらずドジな奴なんだな。
「でも良かったぞ。主人公が死んじゃうとは、思ってなかったけどな」
「――それって、最後まで読んだんですね……」
良かったと誉めてやったからか、更に顔を赤くして俯く坂本。ドジな上に照れ屋なんだ、へぇ。結構可愛いじゃないの。影口叩いてたこと、許してやろうかな。
テレまくって恥らう様子を好感に思いながら(恥らってるにしては、ちょっと嫌がってるような顔してるのは何故だ?)小説について詳しく訊ねたいとことがあったので、思い切ってミーティングを提案してみた。
ケロカーの鍵を渡すと脱兎のごとく職員室を出て行った姿に、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
きっと話し合いで遅くなる予感がしたので、坂本を送ることになるだろうと家を調べてみたら、近所であることが分かった。
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