32 / 47
救愛
今川目線3
しおりを挟む
***
何とか難問をクリアした俺が部署に戻ると、窓際から外を見ている山田くんを見つけた。
降りだした雨が窓ガラスを濡らしていて、反射してガラスに映っている山田くんの頬を濡らしているように見える。ぼんやりしている山田くんがどこか脱け殻のようで、少し前の自分と重なった。
「山田くん、君に話があります」
「今川部長? もうお昼休みが終わったんですか?」
腕時計を見て、時間を確認しようとする。
「まだだよ。君と話がしたくて、早めに昼食を切り上げたんだ」
そう言うと、途端に困った顔をした。
「あとから朝比奈さんに、グチグチ言われそうだな」
「グチグチ言う口は、きちんと塞いでおきましたから大丈夫です。それより最近の君の態度が、とても気になります」
「いつもと変わらないですよ?」
この間見たような、乾いた笑みを浮かべてみせる。それを見るだけで、何とかして助けてあげたくなった。
「できる部下を持つと、上司は苦労します。できるだけに倒れられたら、こちら側としては非常に困るんですよ」
「今川部長……」
「何か、あったんですよね? きちんと説明してください、上司命令です」
こうでも言わないと、は話をしてくれないだろう。
山田くんは俺から視線を外し、そっと窓の外を見る。その寂しげな横顔が、俺に微妙な表情を作らせた。
「彼女と別れました。きっかけは、朝比奈さんと一緒に歩いてるところを見られたからです」
「何だって!?」
「俺彼女に3回もプロポーズしてるんですが、ずっと断られ続けていて、正直疲れていたのもあるんです」
視線を伏せて、窓ガラスに流れ落ちる雨の滴に手を伸ばす。
「きっかけは今回のことですが、もう限界がきてたんです。だから今川部長は、気にしないでください」
「気にするに決まっているだろう! 今から俺が彼女に弁解するのは、駄目なんだろうか?」
思わず山田くんの肩を掴んで、ゆさゆさと激しく揺さぶってしまった。そんな俺に義理立てするようにほほ笑む。
「もうダメっす。完全に終わらせましたから」
「山田くん――」
「この雨が俺の気持ちを洗い流してくれてるから、きっと大丈夫です。愛しさも切なさも、悲しみもすべて……」
そしてまた、ぼんやり外を見つめた。
「今は苦しいけど必ず立ち直ります。ご心配おかけしました」
俺に向かって、丁寧にペコリと頭を下げた。
完全に終わらせたって言ってるけど、その瞳には愛情がまだたっぷりと残ってるじゃないか。若いのに、妙に引き際がいいもんだ。
「それよりも今川部長は会長に伝える決心、つきましたか?」
「あ……ぼちぼちかな」
照れていると山田くんが俺に体当たりしてきながら、嬉しそうに笑ってくれた。
「会長に呼び出されたら、一緒に行きましょうね」
そう言って、部署から出て行ってしまう。
山田くんの無理矢理な笑顔が、頭からどうしても離れなかった――
何とか難問をクリアした俺が部署に戻ると、窓際から外を見ている山田くんを見つけた。
降りだした雨が窓ガラスを濡らしていて、反射してガラスに映っている山田くんの頬を濡らしているように見える。ぼんやりしている山田くんがどこか脱け殻のようで、少し前の自分と重なった。
「山田くん、君に話があります」
「今川部長? もうお昼休みが終わったんですか?」
腕時計を見て、時間を確認しようとする。
「まだだよ。君と話がしたくて、早めに昼食を切り上げたんだ」
そう言うと、途端に困った顔をした。
「あとから朝比奈さんに、グチグチ言われそうだな」
「グチグチ言う口は、きちんと塞いでおきましたから大丈夫です。それより最近の君の態度が、とても気になります」
「いつもと変わらないですよ?」
この間見たような、乾いた笑みを浮かべてみせる。それを見るだけで、何とかして助けてあげたくなった。
「できる部下を持つと、上司は苦労します。できるだけに倒れられたら、こちら側としては非常に困るんですよ」
「今川部長……」
「何か、あったんですよね? きちんと説明してください、上司命令です」
こうでも言わないと、は話をしてくれないだろう。
山田くんは俺から視線を外し、そっと窓の外を見る。その寂しげな横顔が、俺に微妙な表情を作らせた。
「彼女と別れました。きっかけは、朝比奈さんと一緒に歩いてるところを見られたからです」
「何だって!?」
「俺彼女に3回もプロポーズしてるんですが、ずっと断られ続けていて、正直疲れていたのもあるんです」
視線を伏せて、窓ガラスに流れ落ちる雨の滴に手を伸ばす。
「きっかけは今回のことですが、もう限界がきてたんです。だから今川部長は、気にしないでください」
「気にするに決まっているだろう! 今から俺が彼女に弁解するのは、駄目なんだろうか?」
思わず山田くんの肩を掴んで、ゆさゆさと激しく揺さぶってしまった。そんな俺に義理立てするようにほほ笑む。
「もうダメっす。完全に終わらせましたから」
「山田くん――」
「この雨が俺の気持ちを洗い流してくれてるから、きっと大丈夫です。愛しさも切なさも、悲しみもすべて……」
そしてまた、ぼんやり外を見つめた。
「今は苦しいけど必ず立ち直ります。ご心配おかけしました」
俺に向かって、丁寧にペコリと頭を下げた。
完全に終わらせたって言ってるけど、その瞳には愛情がまだたっぷりと残ってるじゃないか。若いのに、妙に引き際がいいもんだ。
「それよりも今川部長は会長に伝える決心、つきましたか?」
「あ……ぼちぼちかな」
照れていると山田くんが俺に体当たりしてきながら、嬉しそうに笑ってくれた。
「会長に呼び出されたら、一緒に行きましょうね」
そう言って、部署から出て行ってしまう。
山田くんの無理矢理な笑顔が、頭からどうしても離れなかった――
0
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
Marry Me?
美凪ましろ
恋愛
――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。
仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。
不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。
※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。
※彼の過去だけ、ダークな描写があります。
■画像は、イトノコさまの作品です。
https://www.pixiv.net/artworks/85809405
恋い焦がれて
さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。
最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。
必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。
だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。
そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。
さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。
※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です
※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません)
※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。
https://twitter.com/SATORYO_HOME
美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
花里 美佐
恋愛
★神崎 蓮 32歳 神崎造船副社長
『玲瓏皇子』の異名を持つ美しき御曹司。
ノースサイド出身のセレブリティ
×
☆清水 さくら 23歳 名取フラワーズ社員
名取フラワーズの社員だが、理由があって
伯父の花屋『ブラッサムフラワー』で今は働いている。
恋愛に不器用な仕事人間のセレブ男性が
花屋の女性の夢を応援し始めた。
最初は喧嘩をしながら、ふたりはお互いを認め合って惹かれていく。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる