煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依

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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

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 俺が行きたいと強請った場所に、瑞稀を連れて来た。テーマパークで思う存分に楽しんだであろう彼を癒してあげたいと考え、ここを選んだのだが――。

「マサさん、こんなところに俺を連れて来て、なにを考えているんですか?」

 少しだけ高級感溢れるラブホの部屋に入った瞬間、呆れた声で告げられてしまった。

「ここならお風呂が大きいから、足を伸ばしてゆっくりできる上に、ジャグジーだって完備されている。休憩するには、もってこいだと思ったんだ」

「休憩……」

「なんだったらカラオケだってあるし、疲れたらベッドで寝たらいい」

「寝る、ですか」

 俺との会話をするたびに、瑞稀の表情が渋いものに変わる。

「いかがわしいコトをしなくても大丈夫。俺としては瑞稀の疲れを考えて、ここに連れて来ただけなんだよ」

 流暢に説明を終えてから、お風呂のお湯を溜めるべく、浴室に移動した。入浴剤が数種類用意されていることに気づき、それを手にして戻る。

「瑞稀、どの入浴剤にしようか?」

「……なんでもいいです」

 俺のてのひらの上に置いた入浴剤を一瞬見てから、乾いた口調で告げるなり、顔を俯かせた。

「それじゃあ疲れが取れそうな、森林浴にしようか。楽しみだね」

 どんどん元気がなくなっていく瑞稀の態度が気になったが、早く疲れをとってもらおうと考え直し、お湯を湯船に流し込み、手に持っていた入浴剤を勢いよく放り投げた。

「これでよし!」

 颯爽と瑞稀のいるベッドルームに戻り、未だに俯いたままでいる背中に声をかけた。

「お風呂のお湯が溜まるまで、なにか飲むかい?」

「……いりません」

 妙な間のあとに告げられたセリフを耳にしつつ、冷蔵庫を開けて、お茶の入ったペットボトルを取り出し、ガラスのコップにそれを注ぎ入れる。

 そして一口飲んで自身の口内を潤してから、瑞稀の正面に移動した。

「不満げな顔をしてるね。言いたいことを言ってみるといい」

 腰を屈めて俯かせた顔を覗き込むと、嫌そうに顔を横に背けられた。俺を見てほしくて、目の前にあるシャープな頬に唇を押しつける。

「ちょっ!」

 驚いた面持ちの瑞稀の瞳が俺を捉えた。しっかり目が合ったことで、俺たちの心の距離が少しだけ縮まったのがわかり、それが嬉しくてほほ笑みながら告げてやる。

「言わないと、次はその可愛い唇にキスするよ」

「変な脅しをかけないでください……」

「そうでもしないと、不機嫌な理由を言ってはくれないだろう?」

 視線を右往左往させる、挙動不審な瑞稀の躰をぎゅっと抱きしめた。

「俺は君とふたりきりになれただけで、こんなに嬉しいのに」

「俺は嫌です。マサさんが元カノと来た場所にいることが」

「えっ?」

 どんな小声でも、逃さない勢いで耳をそばだてていたため、しっかりと聞き取れてしまった。

「ここに来たのは元カノじゃなく、仕事中にゲリラ豪雨に巻き込まれてしまってね。雨宿りした関係で知っていたんだ」

 瑞稀の背中を優しく撫で擦る。悲しい気持ちがなくなりますようにと。

「だってこんなところ、だから……てっきり元カノと来たんじゃないかって」

「必要のない嫉妬に、みずからかられてしまったみたいだね」

「うっ……」

 ふたたび瑞稀が俯く。耳まで赤くなっているところを見ると、恥ずかしがっているのだろうか。
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