煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依

文字の大きさ
29 / 39
煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

21

しおりを挟む
 瑞稀の唇を感じた瞬間、吸血鬼の本能が全身を駆け巡る。
 湯気の中で瑞稀の濡れた肌が輝き、その首筋から漂う甘い血の香りが俺の理性を焼き尽くす。吸血衝動が頭を支配し、目の前が赤く染まった。

「瑞稀!」

 瑞稀の薄い肩を掴み、力任せに湯船の縁に押しつける。水しぶきが激しく飛び散り、熱い湯が二人の体を叩いた。瑞稀が小さく「っ!」と息を呑むが、もう止まれない。

 唇を奪うように噛みつき、瑞稀の口内に舌を押し込む。吸血鬼の唾液が混じったキスは荒々しく、瑞稀の体を瞬時に火照らせた。

「んぁっ! マサ、さんっ……!」

 瑞稀の喘ぎ声が湯気に溶け、欲望をさらに煽る。

 首筋に牙を押し当て、血を吸いたい衝動を必死で抑えながら、代わりに舌で強く舐めあげる。舌で触れた肌が熱く震え、俺の背中に瑞稀の爪が深く食い込む。

「俺との本気じゃないなんて、言ってくれたね。 瑞稀、俺は君で狂ってるんだよ」

 俺の声は熱にうなされるように掠れ、その唇で瑞稀の耳朶を噛み砕くように吸う。

「あぁっ!」

 瑞稀は体を仰け反らせて俺と距離をとったので、水面にある細い腰を鷲掴みにし、力強く引き寄せる。湯の中で二人の体がぶつかり合い、水面が激しく波打つ。

「俺のことを感じたいって言った君に、全部あげよう。ここで君を俺のものにする」

 浴室で告げた俺の言葉は命令のように響き、瑞稀の膝を割り開く。湯に濡れた太ももに指を食い込ませ、瑞稀の最も敏感な部分に触れる。

 瑞稀が「ひっ…!」と声を上げて体を硬直させるが、容赦しない。唇を首筋から胸へと滑らせ、瑞稀の濡れた肌を貪るように舐めあげる。

 湯気の中で瑞稀の心臓が激しく脈打ち、その音が耳にまで届く。瑞稀の胸の頂を舌で強く吸うと、

「うぁっ……そこっ、くすぐったぃ!」

 掠れた声がイヤらしく響き、瑞稀の体が弓なりにしなる。感じまくりの体を離さないようにすべく、瑞稀の腰を離さずに、湯の中でさらに深く引き寄せた。

「瑞稀、君の声、もっと聞かせてくれ。俺を壊してくれ!」

 熱に焼かれたように震えた声で告げ、吸血鬼の牙が瑞稀の肩に軽く刺さる。脈打つ血管が浮き上がり、血が流れている音が耳に響く。

 吸血鬼の本能が叫ぶ——「吸え、全部奪え」と。だが瑞稀の瞳を見つめ返すと、その潤んだ瞳に映る自分を見て、無理やり本能を抑え込んだ。

「君を傷つけたくない。でも君が欲しい、全部!」

 想いの丈を告げた声は苦しげなものになり、瑞稀の胸に唇を押し当てる。瑞稀の心臓の鼓動が舌先に伝わり、血の誘惑が限界を超える。それでも歯を食いしばり、吸血を拒む。

 代わりに瑞稀の敏感な頂を強く吸い上げ、血は吸わない。ただその疼きを抑えるために、肌に痕を残すように噛みつく。

 瑞稀が「ぁあっ!」と喘ぎ、俺の髪を掴んで引き寄せる。その痛みと熱が、我慢していた欲望をさらに暴走させる。

 湯船の縁に瑞稀の背を押し付け、自分の体を瑞稀に重ねた。水面が激しく波立ち、熱い湯が二人の間を埋め尽くす。

 瑞稀の太ももを割り開いたまま、ゆっくりと瑞稀の内側に触れる。

「やっ! そこっ、ダメ!」

 恥ずかしさを滲ませた声をあげ、体をよじらせても俺の動きは止まらない。

「ダメじゃない。君が欲しいって言ったんだ。全部感じてくれ!」

 俺の指が瑞稀の中を探り、熱い反応を引き出す。瑞稀の体がビクビクと震え、湯に濡れた髪が顔に張り付く。目の前にあるその表情——痛みと快感が混じった潤んだ瞳が、俺の心をさらに狂わせる。

「マサさん熱いぃ。俺、変になるっ」

 瑞稀の声が切なげに響き、胸を痛いくらいに締めつける。俺は瑞稀の腰を掴み直し、自分の硬くなった欲望を瑞稀の内側に押し当てた。

「俺も。君で狂いそうだ、瑞稀……」

 そう言って、そのまま一気に貫く。

「ぁああっ!」

 瑞稀の叫びが浴室に響き渡り、俺の背中に深く爪が食い込む。湯の中で二人の体が一つになる瞬間、水しぶきが飛び散り、熱い波が二人を飲み込む。

 瑞稀の首筋に顔を埋め、動きを止めずに囁く。

「好きだ、愛してる、瑞稀……君しかいない!」

 瑞稀の内側が俺自身を締めつけ、その熱さに理性が完全に吹き飛ぶ。動きは激しさを増し、湯船の水がどんどん溢れ出す。

「マサさんっ…もっと、深く!」と瑞稀が喘ぐたびに、体の隅々まで燃えあがる。

 吸血衝動が限界に達して瑞稀の肩に牙を立てるが、血を吸う寸前で止める。代わりにその熱い肌に唇を押しつけ、強く吸いあげた。

「君の全部が欲しい。血も、体も、心も」

 獣のように腰を荒々しく動かすと、瑞稀の両腕にも力がこもる。

「俺もマサさんの、全部!」

 二人の動きが完全にシンクロし、湯の中で絡み合う体が限界まで高ぶる。

「ぁっ! マサさんっイク!」

「瑞稀っ! 一緒に……っ!」

 浴室に咆哮が重なった瞬間、絶頂が二人を同時に襲った。湯船が大きく揺れ、湯水が床に溢れ出す。二人の吐息と水音が混じり合い、熱い余韻が浴室を満たす。

 瑞稀の体が縋るように震えたのがわかり、細身の体を強く抱きしめて崩れ落ちる。湯の中で二人はしばらく動けず、互いの鼓動だけが響き合う。

 落ち着いてから瑞稀を湯船の中で抱き上げ、背中からぎゅっと抱きしめる。瑞稀の息が荒いままで、肩に残った牙の痕が赤く染まっていた。

 俺はそこに唇を押し当て、優しいキスを繰り返す。

「痛かったろう? 俺、抑えきれなくて激しくしてしまった……」

 瑞稀は目を閉じたまま、掠れた声で囁く。

「痛くなかったよ。マサさんが全部熱くて……すごく気持ちよかった」

そのセリフに胸が締め付けられ、瑞稀の濡れた髪に顔を埋める。

「君の血を吸わなくても、こんなに満たされるなんて思いもしなかった」

「じゃあ俺の血、もう要らない?」

 目の前で肩を竦めて冗談めかす瑞稀に、俺はくすくす笑った。

「いや。君の血がどんどん美味しくなっているから、もっと欲しくなる。これからも献上してほしいね」

 俺のお願いを聞いた瑞稀がふと真剣な表情を見せ、水面にある俺の利き手をぎゅっと握りしめた。

「これで俺たち、もっと一つになったよね」

「ああ。君は俺の全部だ」

 振り返った瑞稀の額に自分の額を押し当て、熱を込めて答えた。

 互いの想いを確かめるように湯の中で体を寄せ合い、熱いキスを交わす。湯気と情熱に包まれながら、互いの存在を刻み込むように強く抱きしめ合う。

 瑞稀との結びつきを、さらに深めた瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている

春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」 王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。 冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、 なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。 誰に対しても一切の温情を見せないその男が、 唯一リクにだけは、優しく微笑む―― その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。 孤児の少年が踏み入れたのは、 権謀術数渦巻く宰相の世界と、 その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。 これは、孤独なふたりが出会い、 やがて世界を変えていく、 静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

処理中です...