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告白
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なにがどうしてこうなったのか、最初はまったくわからなかった。目の前にあるのは多分石崎さんの胸だろう。だけど昨日着ていた服じゃなく、トレーナーみたいな室内着に変わっていたことで、彼が一度目覚めて着替えたのがわかった。
(あのまま寝ちゃったことはわかるけど、どうして僕は石崎さんに抱きしめられているんだ? もしや、抱き枕みたいにされてるとか?)
頭の中に、たくさんの疑問符が浮かんでは消えていく。しかしながらちょっと苦しいので、遠慮してもらわなくてはと思い、体の隙間に自分の両手を入れて、石崎さんの胸を押した。
「聖哉、起きたのか?」
「あ、おはようございます。あのまま寝てしまってすみません」
「聖哉が掛け布団代わりになってくれたからな。何気に俺も寝ちゃったし」
そう言った石崎さんは僕の体から両腕を外してくれたのに、なぜか僕の上に跨って見下ろす。その瞬間、ベッドが軋んだ音をたてた。
「……キスしていいか?」
「は?」
僕の頬に触れた石崎さんの大きな手の熱が高くて、これはマズイのではと慌てふためいた。
「石崎さん、きっと熱がありますよ。ちゃんと寝なきゃ!」
頬に触れる手を両手で外し、みずからの手で体温を測ってみたのだが、明らかに僕よりも熱があるのは確かだった。
「きっと聖哉が傍にいるから。ほしくて堪らないし」
「なにをわけのわからないことを言ってるんですか。ほら、ちゃんと寝てください」
跨ってる石崎さんと対峙するように起き上がり、彼を退かせようとしたら、ぎゅっと抱き竦められてしまった。
「聖哉が好きなんだ」
耳元で告げられたセリフに聞き覚えがあったけど、そんなことはどうでもよかった。
「石崎さんわかってます? 病人はおとなしく、横になってくださいって!」
「おまえは俺のこと、どう思ってるんだ?」
「どうって……?」
「昨夜は好きだと言ってたけど、寝ぼけて言った可能性も捨てきれないと思ってさ」
「僕が石崎さんを好き?」
「俺は聖哉が好きだよ」
テンポよく会話をかわした後で、僕が疑問形で訊ねたというのに、まるで愛の告白に対しての答えを石崎さんは口にした。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
ここでやっと気づいた。抱きしめられているせいで、僕の体に石崎さんのカタチの変わったアレが当たっている!
(僕は男なのに、石崎さんのアレが大きくなっているということは、ソッチの気があるってことなのかな……)
そんな彼とベッドインした時点で、危険度が二割増しになることに、ようやく気付いてしまった。
「聖哉?」
「僕が昨日口走ったことはですね、石崎さんの作るカクテルが好きと言ったことでして、石崎さん本人じゃないんです!」
僕の絶叫が、寝室に虚しく響いた。
目に映る石崎さんの面持ちは、ショックを隠しきれないのが見てとれるせいで、直視するのを躊躇うくらいに酷いものだった。
「聖哉はその……俺のことは、どう思ってる?」
僕の絶叫とは対象的な、とてもか弱い声。いつもハキハキ喋る人なのに、聞いたことのないそれを耳にしただけで、胸が苦しくなる。
「と、友達としてなら……」
「だよな、普通はそうなんだよ。悪い、昨日好きとか言われたせいで、ひとりで舞い上がってしまった」
石崎さんはあからさまな作り笑いをしながら、僕の体からおりて背中を向ける。
彼が極力傷つかないように言葉を選んだものの、結局は傷つけてしまったことに、どうしようもない苛立ちを覚えた。
「石崎さん、ごめんなさい。僕、帰ります!」
長居は無用と言わんばかりにベッドから飛び出し、そのまま玄関に向かって一直線に進んだ。靴を履いて玄関の扉を開けても、彼は出てくる様子もなく、静まり返った室内はまるで、彼の心を表しているように感じたのだった。
なにがどうしてこうなったのか、最初はまったくわからなかった。目の前にあるのは多分石崎さんの胸だろう。だけど昨日着ていた服じゃなく、トレーナーみたいな室内着に変わっていたことで、彼が一度目覚めて着替えたのがわかった。
(あのまま寝ちゃったことはわかるけど、どうして僕は石崎さんに抱きしめられているんだ? もしや、抱き枕みたいにされてるとか?)
頭の中に、たくさんの疑問符が浮かんでは消えていく。しかしながらちょっと苦しいので、遠慮してもらわなくてはと思い、体の隙間に自分の両手を入れて、石崎さんの胸を押した。
「聖哉、起きたのか?」
「あ、おはようございます。あのまま寝てしまってすみません」
「聖哉が掛け布団代わりになってくれたからな。何気に俺も寝ちゃったし」
そう言った石崎さんは僕の体から両腕を外してくれたのに、なぜか僕の上に跨って見下ろす。その瞬間、ベッドが軋んだ音をたてた。
「……キスしていいか?」
「は?」
僕の頬に触れた石崎さんの大きな手の熱が高くて、これはマズイのではと慌てふためいた。
「石崎さん、きっと熱がありますよ。ちゃんと寝なきゃ!」
頬に触れる手を両手で外し、みずからの手で体温を測ってみたのだが、明らかに僕よりも熱があるのは確かだった。
「きっと聖哉が傍にいるから。ほしくて堪らないし」
「なにをわけのわからないことを言ってるんですか。ほら、ちゃんと寝てください」
跨ってる石崎さんと対峙するように起き上がり、彼を退かせようとしたら、ぎゅっと抱き竦められてしまった。
「聖哉が好きなんだ」
耳元で告げられたセリフに聞き覚えがあったけど、そんなことはどうでもよかった。
「石崎さんわかってます? 病人はおとなしく、横になってくださいって!」
「おまえは俺のこと、どう思ってるんだ?」
「どうって……?」
「昨夜は好きだと言ってたけど、寝ぼけて言った可能性も捨てきれないと思ってさ」
「僕が石崎さんを好き?」
「俺は聖哉が好きだよ」
テンポよく会話をかわした後で、僕が疑問形で訊ねたというのに、まるで愛の告白に対しての答えを石崎さんは口にした。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
ここでやっと気づいた。抱きしめられているせいで、僕の体に石崎さんのカタチの変わったアレが当たっている!
(僕は男なのに、石崎さんのアレが大きくなっているということは、ソッチの気があるってことなのかな……)
そんな彼とベッドインした時点で、危険度が二割増しになることに、ようやく気付いてしまった。
「聖哉?」
「僕が昨日口走ったことはですね、石崎さんの作るカクテルが好きと言ったことでして、石崎さん本人じゃないんです!」
僕の絶叫が、寝室に虚しく響いた。
目に映る石崎さんの面持ちは、ショックを隠しきれないのが見てとれるせいで、直視するのを躊躇うくらいに酷いものだった。
「聖哉はその……俺のことは、どう思ってる?」
僕の絶叫とは対象的な、とてもか弱い声。いつもハキハキ喋る人なのに、聞いたことのないそれを耳にしただけで、胸が苦しくなる。
「と、友達としてなら……」
「だよな、普通はそうなんだよ。悪い、昨日好きとか言われたせいで、ひとりで舞い上がってしまった」
石崎さんはあからさまな作り笑いをしながら、僕の体からおりて背中を向ける。
彼が極力傷つかないように言葉を選んだものの、結局は傷つけてしまったことに、どうしようもない苛立ちを覚えた。
「石崎さん、ごめんなさい。僕、帰ります!」
長居は無用と言わんばかりにベッドから飛び出し、そのまま玄関に向かって一直線に進んだ。靴を履いて玄関の扉を開けても、彼は出てくる様子もなく、静まり返った室内はまるで、彼の心を表しているように感じたのだった。
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