欲しがり男はこの世のすべてを所望する!

相沢蒼依

文字の大きさ
77 / 83
番外編2

多いときは、1日に5~6件ほど出席することも。週で平均を出すなら、連日3件の会合をこなすことになる。

そんな平日が終われば、金曜日の夜には地元に帰郷する。今度は地元の方々との会合が、土曜の“朝10時”からセッティングされていることがデフォだった。

土日は朝・昼・晩・晩・晩とだいたい2時間ずつ、お酒を飲みながらの会合に参加しなければならない。

芸能界で活動した経験上、ドラマや地方ロケのせわしない忙しさを経験しているゆえに、多忙を極める業務をそれなりにこなせると思っていた。しかしそれは、子どもの頃から慣れ親しんでいる芸能活動だからこなせていたというのを、現在進行形で思い知らされている。

ずぶの素人である俺が政界入りし、聞き慣れない単語を耳にしたり書類で見たりしているうちに、焦りを覚えずにはいられなかった。新人でも議員バッチをつけている以上は、知りません・わかりませんでしたでは済まされない。

先輩議員に追いつくべく、日々の勉強が欠かせない状況だった。

「陵、お茶を持ってきた。少し休憩したらどうだ?」

議員会館の事務所で、出された要望書を眺めながら頭を抱えていると、秘書である克巳さんが、俺好みの渋いお茶をデスクに置く。

「さすがはできる秘書って感じだね。ナイスなタイミングで、お茶を持ってきてくれちゃって。ありがと! おかげで仕事が捗りそう!!」

「無理やり笑顔に妙なハイテンション。昨日は何時に寝たんだ?」

美味しいお茶を啜っているところになされた、厳しい表情をした恋人の質問に、どう返せばいいのか……。

議員宿舎には、家族以外の部外者をみだりに入れては駄目という規律があるため、克巳さんは近くのマンションに引っ越してくれた。

議員宿舎に送ってから、俺がどんなふうに過ごしているのかを、彼はまったく知らない。

「えっと、つい勉強に夢中になっちゃって、多分午前1時すぎだったような?」

視線を右往左往しながら答えると、胸ポケットから電子手帳を取り出し、眉間に深い皺を寄せつつ、なにかをチェックしはじめる。

困惑顔を決めこんだ俺を尻目に、静まり返った事務所内で、無機質かつ規則的なピッピッという音が鳴り響く。

(――今の現状にげんなりしてる、俺の心電図を計ってるみたいなリズムだな)

「今週の睡眠時間の平均を出してみた。それじゃあ駄目だ。今日からは遅くても、午前12時半には寝るように」

「え~……。睡眠なら空き時間や車での移動を使って、さりげなく寝てるから大丈夫だって。食欲もそれなりにあるし、お酒もガバガバ飲める。俺はまだまだいけるよ」

せっかくわかりかけてきた勉強時間を、どうしても削られたくなかったこともあり、克巳さんに食ってかかった。

だって一人前の議員になるには、もっともっと勉強しなければならない。

それと同時に提出された要望書を処理するために、いろいろ調べる必要がある。それをもとにして、要望書に書かれたことを叶えなければいけないんだ。

自分の寝る時間を削って1秒でも早く、それらの仕事をこなしたかった。

「まったく、二階堂の予想どおりになった。さすがは陵の行動を彼なりに分析して、しっかり把握しているといったところか」

「……はじめがどうかしたの?」

二階堂はじめは俺が選挙に立候補するにあたり、革新党から用意された、勝率8割の凄腕選挙プランナーだった。

革新党にいる彼の兄曰く『本人にはきつく注意をしているんだが、行く先々で問題を起こすものですから。見境なく相手に手を出す有り様で……』とのことで、克巳さんからも注意するように、キツく言われていた。

そんな前情報があるにも関わらず、噂どおりというか選挙戦に挑みながら彼に迫られたけれど、逆に克巳さんとの愛が深まるところを見せつけたからか、彼はあっさり身を引いてくれた。

そんないきさつはあるものの、凄腕の選挙プランナーとして名を馳せるはじめを、どうしても手元に置きたかった。名だたる議員との繋がりと、仕事についての正確な分析力が彼にある。

俺にないものをもっているはじめを口説き落とした結果、請け負っている選挙戦を終えてから、補佐という形で仕事を手伝ってくれる約束を取りつけていた。

「ねぇ克巳さん、はじめとなにを喋ったの?」

するとチェックしていた電子手帳をもとに戻し、小さな溜息をつきながら俺を見つめる。

「選挙事務所で二階堂と別れた次の日に、地方からわざわざ電話をしてくれたんだ。これから毎日、仕事を含めた陵の生活習慣をチェックするようにって。君は真面目な性格だから一生懸命にこなしすぎて、体調を崩す恐れがあるだろうってさ」

(そんなときから、はじめに心配されていたとは――)
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜