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番外編2
2
多いときは、1日に5~6件ほど出席することも。週で平均を出すなら、連日3件の会合をこなすことになる。
そんな平日が終われば、金曜日の夜には地元に帰郷する。今度は地元の方々との会合が、土曜の“朝10時”からセッティングされていることがデフォだった。
土日は朝・昼・晩・晩・晩とだいたい2時間ずつ、お酒を飲みながらの会合に参加しなければならない。
芸能界で活動した経験上、ドラマや地方ロケのせわしない忙しさを経験しているゆえに、多忙を極める業務をそれなりにこなせると思っていた。しかしそれは、子どもの頃から慣れ親しんでいる芸能活動だからこなせていたというのを、現在進行形で思い知らされている。
ずぶの素人である俺が政界入りし、聞き慣れない単語を耳にしたり書類で見たりしているうちに、焦りを覚えずにはいられなかった。新人でも議員バッチをつけている以上は、知りません・わかりませんでしたでは済まされない。
先輩議員に追いつくべく、日々の勉強が欠かせない状況だった。
「陵、お茶を持ってきた。少し休憩したらどうだ?」
議員会館の事務所で、出された要望書を眺めながら頭を抱えていると、秘書である克巳さんが、俺好みの渋いお茶をデスクに置く。
「さすがはできる秘書って感じだね。ナイスなタイミングで、お茶を持ってきてくれちゃって。ありがと! おかげで仕事が捗りそう!!」
「無理やり笑顔に妙なハイテンション。昨日は何時に寝たんだ?」
美味しいお茶を啜っているところになされた、厳しい表情をした恋人の質問に、どう返せばいいのか……。
議員宿舎には、家族以外の部外者をみだりに入れては駄目という規律があるため、克巳さんは近くのマンションに引っ越してくれた。
議員宿舎に送ってから、俺がどんなふうに過ごしているのかを、彼はまったく知らない。
「えっと、つい勉強に夢中になっちゃって、多分午前1時すぎだったような?」
視線を右往左往しながら答えると、胸ポケットから電子手帳を取り出し、眉間に深い皺を寄せつつ、なにかをチェックしはじめる。
困惑顔を決めこんだ俺を尻目に、静まり返った事務所内で、無機質かつ規則的なピッピッという音が鳴り響く。
(――今の現状にげんなりしてる、俺の心電図を計ってるみたいなリズムだな)
「今週の睡眠時間の平均を出してみた。それじゃあ駄目だ。今日からは遅くても、午前12時半には寝るように」
「え~……。睡眠なら空き時間や車での移動を使って、さりげなく寝てるから大丈夫だって。食欲もそれなりにあるし、お酒もガバガバ飲める。俺はまだまだいけるよ」
せっかくわかりかけてきた勉強時間を、どうしても削られたくなかったこともあり、克巳さんに食ってかかった。
だって一人前の議員になるには、もっともっと勉強しなければならない。
それと同時に提出された要望書を処理するために、いろいろ調べる必要がある。それをもとにして、要望書に書かれたことを叶えなければいけないんだ。
自分の寝る時間を削って1秒でも早く、それらの仕事をこなしたかった。
「まったく、二階堂の予想どおりになった。さすがは陵の行動を彼なりに分析して、しっかり把握しているといったところか」
「……はじめがどうかしたの?」
二階堂はじめは俺が選挙に立候補するにあたり、革新党から用意された、勝率8割の凄腕選挙プランナーだった。
革新党にいる彼の兄曰く『本人にはきつく注意をしているんだが、行く先々で問題を起こすものですから。見境なく相手に手を出す有り様で……』とのことで、克巳さんからも注意するように、キツく言われていた。
そんな前情報があるにも関わらず、噂どおりというか選挙戦に挑みながら彼に迫られたけれど、逆に克巳さんとの愛が深まるところを見せつけたからか、彼はあっさり身を引いてくれた。
そんないきさつはあるものの、凄腕の選挙プランナーとして名を馳せるはじめを、どうしても手元に置きたかった。名だたる議員との繋がりと、仕事についての正確な分析力が彼にある。
俺にないものをもっているはじめを口説き落とした結果、請け負っている選挙戦を終えてから、補佐という形で仕事を手伝ってくれる約束を取りつけていた。
「ねぇ克巳さん、はじめとなにを喋ったの?」
するとチェックしていた電子手帳をもとに戻し、小さな溜息をつきながら俺を見つめる。
「選挙事務所で二階堂と別れた次の日に、地方からわざわざ電話をしてくれたんだ。これから毎日、仕事を含めた陵の生活習慣をチェックするようにって。君は真面目な性格だから一生懸命にこなしすぎて、体調を崩す恐れがあるだろうってさ」
(そんなときから、はじめに心配されていたとは――)
そんな平日が終われば、金曜日の夜には地元に帰郷する。今度は地元の方々との会合が、土曜の“朝10時”からセッティングされていることがデフォだった。
土日は朝・昼・晩・晩・晩とだいたい2時間ずつ、お酒を飲みながらの会合に参加しなければならない。
芸能界で活動した経験上、ドラマや地方ロケのせわしない忙しさを経験しているゆえに、多忙を極める業務をそれなりにこなせると思っていた。しかしそれは、子どもの頃から慣れ親しんでいる芸能活動だからこなせていたというのを、現在進行形で思い知らされている。
ずぶの素人である俺が政界入りし、聞き慣れない単語を耳にしたり書類で見たりしているうちに、焦りを覚えずにはいられなかった。新人でも議員バッチをつけている以上は、知りません・わかりませんでしたでは済まされない。
先輩議員に追いつくべく、日々の勉強が欠かせない状況だった。
「陵、お茶を持ってきた。少し休憩したらどうだ?」
議員会館の事務所で、出された要望書を眺めながら頭を抱えていると、秘書である克巳さんが、俺好みの渋いお茶をデスクに置く。
「さすがはできる秘書って感じだね。ナイスなタイミングで、お茶を持ってきてくれちゃって。ありがと! おかげで仕事が捗りそう!!」
「無理やり笑顔に妙なハイテンション。昨日は何時に寝たんだ?」
美味しいお茶を啜っているところになされた、厳しい表情をした恋人の質問に、どう返せばいいのか……。
議員宿舎には、家族以外の部外者をみだりに入れては駄目という規律があるため、克巳さんは近くのマンションに引っ越してくれた。
議員宿舎に送ってから、俺がどんなふうに過ごしているのかを、彼はまったく知らない。
「えっと、つい勉強に夢中になっちゃって、多分午前1時すぎだったような?」
視線を右往左往しながら答えると、胸ポケットから電子手帳を取り出し、眉間に深い皺を寄せつつ、なにかをチェックしはじめる。
困惑顔を決めこんだ俺を尻目に、静まり返った事務所内で、無機質かつ規則的なピッピッという音が鳴り響く。
(――今の現状にげんなりしてる、俺の心電図を計ってるみたいなリズムだな)
「今週の睡眠時間の平均を出してみた。それじゃあ駄目だ。今日からは遅くても、午前12時半には寝るように」
「え~……。睡眠なら空き時間や車での移動を使って、さりげなく寝てるから大丈夫だって。食欲もそれなりにあるし、お酒もガバガバ飲める。俺はまだまだいけるよ」
せっかくわかりかけてきた勉強時間を、どうしても削られたくなかったこともあり、克巳さんに食ってかかった。
だって一人前の議員になるには、もっともっと勉強しなければならない。
それと同時に提出された要望書を処理するために、いろいろ調べる必要がある。それをもとにして、要望書に書かれたことを叶えなければいけないんだ。
自分の寝る時間を削って1秒でも早く、それらの仕事をこなしたかった。
「まったく、二階堂の予想どおりになった。さすがは陵の行動を彼なりに分析して、しっかり把握しているといったところか」
「……はじめがどうかしたの?」
二階堂はじめは俺が選挙に立候補するにあたり、革新党から用意された、勝率8割の凄腕選挙プランナーだった。
革新党にいる彼の兄曰く『本人にはきつく注意をしているんだが、行く先々で問題を起こすものですから。見境なく相手に手を出す有り様で……』とのことで、克巳さんからも注意するように、キツく言われていた。
そんな前情報があるにも関わらず、噂どおりというか選挙戦に挑みながら彼に迫られたけれど、逆に克巳さんとの愛が深まるところを見せつけたからか、彼はあっさり身を引いてくれた。
そんないきさつはあるものの、凄腕の選挙プランナーとして名を馳せるはじめを、どうしても手元に置きたかった。名だたる議員との繋がりと、仕事についての正確な分析力が彼にある。
俺にないものをもっているはじめを口説き落とした結果、請け負っている選挙戦を終えてから、補佐という形で仕事を手伝ってくれる約束を取りつけていた。
「ねぇ克巳さん、はじめとなにを喋ったの?」
するとチェックしていた電子手帳をもとに戻し、小さな溜息をつきながら俺を見つめる。
「選挙事務所で二階堂と別れた次の日に、地方からわざわざ電話をしてくれたんだ。これから毎日、仕事を含めた陵の生活習慣をチェックするようにって。君は真面目な性格だから一生懸命にこなしすぎて、体調を崩す恐れがあるだろうってさ」
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