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叶side
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毎日話したい。ずっと傍にいたい。史哉さんを私だけのモノにしたい……
想えば想うほど、2人の距離は遠くなる――
奥さんの綾さんだけでなく、会社の人間も欺き付き合っていくのは辛い作業だった。
2人きりのときは何も考えることなく、史哉さんを独占することのできる悦びの余韻に浸った。だけど一歩外に出た瞬間から罪悪感に苛まれる。
――まるでドラッグに溺れる中毒者みたいだ……。
こんな愛人生活は、あれから1年も続いていた。
史哉さんは綾さんと別れることなく別居状態を続ける一方で、会社では忙しくしているため、以前より会う回数は確実に減っていた。
同じように私も忙しい。店舗責任者となり、店と本社の往復で自宅に帰るのがやっとの状態だった。精神的・肉体的にも最悪な時期と言えるかもしれない。
だけど唯一、心が洗われる時があった。常連客の中に、屈託のない笑顔で笑う人がいる――
いつも一緒にいる髪の長い人は、片側の口角をあげて笑うのに、対照的に彼は顔面をクチャクチャにして、本当に可笑しそうに笑ってみせる。
私はあんな風に笑った記憶がない。特にここ最近は、全く……。
店の女の子達は髪の長い子に夢中になってたが、私はもうひとりの彼の無邪気な笑顔に心を捕らわれていた。
羨ましくもあり、同時に妬ましくもあった――
想えば想うほど、2人の距離は遠くなる――
奥さんの綾さんだけでなく、会社の人間も欺き付き合っていくのは辛い作業だった。
2人きりのときは何も考えることなく、史哉さんを独占することのできる悦びの余韻に浸った。だけど一歩外に出た瞬間から罪悪感に苛まれる。
――まるでドラッグに溺れる中毒者みたいだ……。
こんな愛人生活は、あれから1年も続いていた。
史哉さんは綾さんと別れることなく別居状態を続ける一方で、会社では忙しくしているため、以前より会う回数は確実に減っていた。
同じように私も忙しい。店舗責任者となり、店と本社の往復で自宅に帰るのがやっとの状態だった。精神的・肉体的にも最悪な時期と言えるかもしれない。
だけど唯一、心が洗われる時があった。常連客の中に、屈託のない笑顔で笑う人がいる――
いつも一緒にいる髪の長い人は、片側の口角をあげて笑うのに、対照的に彼は顔面をクチャクチャにして、本当に可笑しそうに笑ってみせる。
私はあんな風に笑った記憶がない。特にここ最近は、全く……。
店の女の子達は髪の長い子に夢中になってたが、私はもうひとりの彼の無邪気な笑顔に心を捕らわれていた。
羨ましくもあり、同時に妬ましくもあった――
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