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第三章「男たちの夢」
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そんな折、長年の宿敵である猪人族と手を組んだエゼキウス王が、いきなり大軍を率いて西方へ侵攻してきたという報せが入った。
皇帝アクセル一世の予期せぬ崩御により、三度にも及んだ遠征がうやむやのまま終わり、帝国各地から馳せ参じた諸侯たちが兵を退いてしまったあとも、東方では相変わらず猪人族との戦いが続いていた。
猪人族の指導者はすでに矢を食らって戦死していたが、統率を失った残党があちこちに散らばって略奪を繰り返し、状況はますます泥沼化しつつあった。
そこでエゼキウス王は、それぞれの部族を率いる族長を辛抱強く説得し、敵全体のおよそ半分を自軍に引き入れ、残りの半分を撃退することで、この長きにわたる戦いにようやく終止符を打った。
荒野の果てから大挙して押し寄せてきた猪人族の目的は、農耕や牧畜が盛んな帝国領へ移り住むことだったので、結果的には痛み分けだったとも言える。
「男ならば、誰しも一度は夢見るものだ」
「と、申しますと?」
「この世界のすべてを征服し、自分だけの理想のハーレムを築く。わしにとって政治や戦争とは、その野望を実現するための手段に過ぎん」
エゼキウス王は、収穫の季節を待って準備をととのえたのち、総勢二万五千を超える兵と百隻の艦隊を揃え、いざ帝都エルドランドへ向けて出陣した。
「なぜ今まで敵の動きに気づかなかった! さては事前に察知していながら、わざと報告しなかったな?」
暴君ダリオンは、粛清におびえる大臣や官僚たちを呼び出して厳しく叱責した。
かの偉大なる皇帝アクセル一世亡きあと、暴君ダリオンによって首都を乗っ取られた帝国は、いまだ混乱の最中にあった。
王朝の存続を支持する有力な諸侯たちが、それぞれ派閥に分かれて手を組んでおり、領内を平定するべく出陣すれば、すかさず背後を突かれるような状況にある。
いくら戦上手で鳴らしたダリオンといえども、今ここでエゼキウス王と正面切って戦うわけにはいかない。
さらに近ごろでは、聖女フローディアを指導者とする宗教勢力があちこちで蜂起し、もはや収拾がつかなくなりつつある。
エゼキウス王は、何事にも慎重かつ万全を期する用心深い人物だった。よほど勝算が見込めない限り、みずから戦争を仕掛けたりしない。
それでいて、いざ好きな人に告白してフラれたら、そもそもあんなブスなど最初から好みではなかったと言い出すような男でもあった。
きっとこの時も、必ず勝てると踏んで賭けに出ておきながら、あらかじめ負けた時の言い訳を考えていたに違いない。
皇帝アクセル一世の予期せぬ崩御により、三度にも及んだ遠征がうやむやのまま終わり、帝国各地から馳せ参じた諸侯たちが兵を退いてしまったあとも、東方では相変わらず猪人族との戦いが続いていた。
猪人族の指導者はすでに矢を食らって戦死していたが、統率を失った残党があちこちに散らばって略奪を繰り返し、状況はますます泥沼化しつつあった。
そこでエゼキウス王は、それぞれの部族を率いる族長を辛抱強く説得し、敵全体のおよそ半分を自軍に引き入れ、残りの半分を撃退することで、この長きにわたる戦いにようやく終止符を打った。
荒野の果てから大挙して押し寄せてきた猪人族の目的は、農耕や牧畜が盛んな帝国領へ移り住むことだったので、結果的には痛み分けだったとも言える。
「男ならば、誰しも一度は夢見るものだ」
「と、申しますと?」
「この世界のすべてを征服し、自分だけの理想のハーレムを築く。わしにとって政治や戦争とは、その野望を実現するための手段に過ぎん」
エゼキウス王は、収穫の季節を待って準備をととのえたのち、総勢二万五千を超える兵と百隻の艦隊を揃え、いざ帝都エルドランドへ向けて出陣した。
「なぜ今まで敵の動きに気づかなかった! さては事前に察知していながら、わざと報告しなかったな?」
暴君ダリオンは、粛清におびえる大臣や官僚たちを呼び出して厳しく叱責した。
かの偉大なる皇帝アクセル一世亡きあと、暴君ダリオンによって首都を乗っ取られた帝国は、いまだ混乱の最中にあった。
王朝の存続を支持する有力な諸侯たちが、それぞれ派閥に分かれて手を組んでおり、領内を平定するべく出陣すれば、すかさず背後を突かれるような状況にある。
いくら戦上手で鳴らしたダリオンといえども、今ここでエゼキウス王と正面切って戦うわけにはいかない。
さらに近ごろでは、聖女フローディアを指導者とする宗教勢力があちこちで蜂起し、もはや収拾がつかなくなりつつある。
エゼキウス王は、何事にも慎重かつ万全を期する用心深い人物だった。よほど勝算が見込めない限り、みずから戦争を仕掛けたりしない。
それでいて、いざ好きな人に告白してフラれたら、そもそもあんなブスなど最初から好みではなかったと言い出すような男でもあった。
きっとこの時も、必ず勝てると踏んで賭けに出ておきながら、あらかじめ負けた時の言い訳を考えていたに違いない。
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