大好きな幼馴染の恋人は実の兄でした【完結】

ノノノ

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最終話:ごめんね(颯斗視点)

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「千鶴、元気でね!」

「…うん、雲雀も元気でね」

そよ風が心地良い昼下がり。
家の出入り口で雲雀と妹の千鶴は数分話し合った後、手を振って別れの挨拶をした。
俺は黙ってその様子を見守っていた。千鶴は俺に目を合わせようともしなかった。まあ当然そうなるか。痛む心は持ち合わせているが仕方がなかったんだ。

千鶴と引っ越しの荷物を乗せた車が名残惜しそうにゆっくりと離れていく。
雲雀は何度も千鶴に手を振り、車が見えなくなるまで見送っていた。その横顔は、なんだか寂しそうだった。

「でも、いきなり祖母の家に引っ越しだなんて…千鶴ももう少し早く言ってくれれば良かったのに」

「親はいつでも来ていいと言っていたし、千鶴も彼氏が出来たみたいだしね。ここからじゃ彼氏の家遠いらしい」

「えっ、千鶴彼氏居たのか!?」

「ずっとある異性に告白をされていたけど断っていたらしい。けど紆余曲折あって千鶴が折れたみたいで交際を始めたようだ。そこまで愛情深い人ならきっと千鶴も幸せになれるよ」

「そっか」

雲雀は安心したようににこっと笑った。

千鶴に職場で告白された相談は以前何度か聞いていた。俺は背中を押したが本命が居るからと断っていたらしい。
その本命との告白は結局することさえ出来なかったようだ。

兄として申し訳ない気持ちはとてもある。本命の相手を知らぬ内は、妹の恋も本気で応援し、場合によっては手助けしようとは思っていた。

…雲雀でなければ。
雲雀以外なら良かったんだ。

雲雀の誕生日のあの日のことは、千鶴のトラウマになっているかもしれない。俺は一生妹に許されないだろう。

それでも、仕方ないんだ。
俺は怖かったんだ。

雲雀は今でも男性である自分は女性を好きにならないといけないと心の奥底で思っている。
1番気を許していて親しい千鶴の告白なら、千鶴を受け入れて俺は別れ話を切り出される可能性があった。

もしそんな未来になれば、俺は千鶴の心だけでなく、身体にも深い傷を負わせていたかもしれない。
当然そんなこと雲雀も喜ばない。
でもきっと俺は、心の奥底で燃えるような強い嫉妬心に負けて、最も愚かな選択をしてしまっていただろう。

本当にすまない。許してくれとは言わない。一生俺を恨んで…どうか幸せになって欲しい。

「それじゃ雲雀、行こうか」

「ん、あっ…」

雲雀の腰に手を回し、彼のへそのした辺りを軽く押さえつけると、雲雀は小さな悲鳴のような嬌声を上げる。
さらにグリグリと撫でてやると、身体を震わせながら俺にしがみついて来た。そして涙目で俺を睨む。でも本気で怒っているわけではないのは分かっているよ。

「雲雀、どうしたんだい?」

「白々しい…僕の中に入れたモノ…取ってよ…」

「おや、ちゃんと了承を得てから入れたモノだろう? 気に入らなかったのかな?」

「千鶴が行くまで入れられたままとは思わないじゃん…バレたら颯斗も困るだろ?」

もう今はそれほど困らないけど、とは言えるわけもないので笑顔で誤魔化しておいた。それに多分、千鶴にはバレていたよ。
だって千鶴は雲雀のこと大好きだから、雲雀をずっと見ていた。雲雀は俺が入れた玩具に気を取られていて気づかなかっただろうけどね。

今の君はへそを撫で回すだけでも感じてしまうほど快楽に弱い。こんな可愛い子、放っておけるわけない。

「分かった、取ってあげる。牽制のため一応入れておいただけだし。もうそんな玩具いらない」

「何、意味わからないこと言ってるんだ…」

「こっちの話。さあ雲雀、おいで。もう私だけの家みたいなものだ。一日中、好きなだけ愛してあげられる」

へその筋を人差し指ですーっと撫でると、雲雀は顔を真っ赤にさせて視線をそらす。
そしておもむろに肩掛け鞄の中をゴソゴソ漁り出す。
なんだろうと思っていると、雲雀は見覚えのある小瓶を取り出した。

雲雀の誕生日の日、ゴミ箱に捨てた媚薬だった。
いつのまにか拾っていたらしい。

「期限…まだ切れていないから…い、一回だけだからな…!」

「…っ、雲雀…!」

あまりの可愛さに咄嗟に雲雀を抱きしめてしまった。
意図的ではないとはいえ、雲雀のお腹を思い切り押さえつける形となってしまい、雲雀の身体がビクビクと震える。
前から押さえつけられているせいで、内側に入れているモノが弱い部分にゴリゴリと当たっているのだろう。見開かれた目の焦点があっていない。射精を伴わない絶頂に達してしまったらしい。
ズボン越しでも膨らんでいるのが分かる。ああ、早くそこを暴いて蕩ける愛をいっぱい注いであげたい。

「すっかりイキ癖がついて可愛いね。ベッドまで運んであげる」

「んはぁ…うん…♡」

玄関の扉を開けて雲雀を両腕で抱き抱える。雲雀もまた、私の首に腕を回して懸命につかまってくれている。
君を抱えて階段を登るのも、もう慣れたものだ。

さあ雲雀、俺たちの愛の巣へ…もっと深くへおいで。
一生巣立たず、ここに居なさい。

腕の中で震える愛おしい温もりは、その心も身体も全て俺だけのものだ。





―――――――――

ここまで読んでくださり有難うございました。
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次回は中編くらいの物語を書きたいなぁと思っています。

ちなみに颯斗が料理が得意な理由は猫が病死したきっかけから「雲雀と千鶴にはバランスの取れた食事で健康的に長生きしてほしいから」です。
雲雀が関わらなければ良いお兄ちゃんです。
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