天田照貴の事故物件×心霊現象なんとかし〼

ベロニカ・サザンクロス

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第5章『首なし地蔵の風車』

第31話「じいちゃんのカルボナーラ」

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「とりあえず冷めてしまう前に、カルボナーラをみんなで食べようじゃないか」

じいちゃんがそう言うと、

「そうですね。早く食べましょう」

と文也くんがノリノリでカルボナーラが入った鍋をちゃぶ台の上に置いた。

「犬神くんとにゃんこちゃん、おじいさんは食べれるの?」

香里ちゃんの率直な質問にじいちゃんは

「形だけなら食べれるぞ。
しかし物理的には食べられない。
味が少し薄くなるが、
他の者が食べても平気なのじゃ」

と答えた。

「へえ、そうなんですね。実際に味わってみたいので、
僕はおじいさんの食べた残りを食べさせてもらってもいいですか?」

文也くんが聞くと、じいちゃんはうなずく。

「いいぞいいぞ。いつもは塩分を気にする照貴に食べさせているがな」

じいちゃんがニヤニヤしながらこっちを見るので、俺は反論する。

「確かに30代になったから、塩分控えめの方がいいけど。そんなに味は変わらないと思うよ。
文也君も心霊体験をしてみるのもいいかもしれないな。何でも経験が大事だし」

と言っておいた。

「私も一口食べてみたい」

香里ちゃんがすぐにそう申し出る。

「いいよ。2人で食べようか」

そう言って2人は、じいちゃんがカルボナーラを自分の皿によそって食べるのを見守る。

ズルズルとカルボナーラから半透明な麺がじいちゃんの口の中に入っていく。
実物は下に何も変わらないようにあるのに。

「わぁ、すごい!これが霊食というやつですか?!」

文也君が身を乗り出してじいちゃんの食べているのをガン見する。

「そう、お供え物の味が薄くなるのは、こうやって霊がその食べ物の霊気だけを食べているからなんじゃよ」

じいちゃんはあらかた食べ終わると、文也君にまるで手つかずのようなカルボナーラを差し出した。

「いただきますね」

文也君はカルボナーラを食べてみると、

「普通に美味しいです!お店のみたい」

と言って食べた。

香里ちゃんは鍋から自分の分をよそうと、フォークでカルボナーラを巻いて、文也君の口元に持っていく。

「ほら、これがそのまんまの味」

文也君はあーんをして、香里ちゃんから与えられたカルボナーラを食べる。

「そんなに味は大差ないと思います。普通に両方とも美味しいです!」

じいちゃんに向かって、文也君がそう感想を言うと、じいちゃんは

「そうじゃろう、そうじゃろう。よっぽど霊感が強くないと変わりなんてわからないもんじゃ」

と得意気に言った。

香里ちゃんも文也君のカルボナーラをフォークでひと巻きして食べてみる。

「うん。本当に大差ないよ?
すごい美味しい。おじいさん料理上手なんですね!」

香里ちゃんが褒めると

「ワシはここ数年、照貴の面倒を見てきたからな。
家事全般、料理に洗濯掃除…何でもこの部屋のことなら、ワシが全部やっている。風呂沸かすのも、風呂を洗うのもワシの仕事じゃ」

「なんだか専業主婦みたいですね。アマテラスさんいいなぁ」

文也くんがそう言うと、香里ちゃんが

「一家に1人は欲しい素敵な家政婦おじいさんですね!」

と笑顔で言った。

確かに俺も一家に1人、こんな家政婦のような完璧なじいちゃんがいてくれたら、と思ったことはある。

犬神くんとにゃんこちゃんは、文也くんと香里ちゃんの周りをふわふわと漂って、

「美味しそうだね、いいな」

と言いながら飛んでいる。

「つくもがみはやっぱりご飯を食べれないの?」

俺がそう聞くと、犬神くんはうなずく。

「そうだよ。僕たちは元々はぬいぐるみだからしょうがないと言えばしょうがないけど。
でもこうして人間と交流できるのはとても楽しいよ」

犬神くんの答えに、香里ちゃんは

「ずっと私達を見守ってくれてありがとう、犬神くん」

と優しく微笑んでいった。

「いいんだよ。君を守ることができて、僕は幸せさ。大事にしてくれた分、恩返しをするからね」

泣けるようなセリフを犬神くんが言う。

「わらわも文也を守るぞ!二人揃ってわらわ達を大切にしてくれた。その恩義に報いなくては!」

二人のつくもがみの忠誠心に俺は感動した。

うちにつくもがみなるようなものってあるのかな?
あるとしたら座布団しかないか?
いや、常に話しかけているわけでもないし、ただいつも頭を乗せて寝ているだけの座布団だ。
無理だな…

みんなでカルボナーラを食べ終わると、じいちゃんを部屋に残して、俺たちは東さんの部屋に向かった。
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