16 / 16
16.黒狼騎士団のフェリクス(完)
しおりを挟む
「はぁ……あいつ、めちゃくちゃ怒ってんな」
ラルが辛うじて残っている家の壁に張り付いて、大トカゲの様子を伺った後ため息をつく。大トカゲはしっぽを瓦礫にバシン、バシンと打ち付けながら歩行している。いや、暴れ狂っていると言った方が正しい。
「前回はほとんどシドがやっつけたんだよなぁ。あんなでかい奴俺達だけでどうやって仕留めればいいんだ。っていうか、あいつ前よりでかくなってないか?」
ラルの言葉通り大トカゲは森で遭遇した時よりも一回りぐらい大きくなっていた。
他の皆は万が一住民がこちらに来ないように道を封鎖して回っている。この場にいるのはラルと僕の二人だけだ。正直全く人手が足りないけれど、やるしかない。
「気付いたか、ラル。今のあいつの額には黒狼騎士団の印が浮かんでいないんだ。以前は薄く青く光っていたのを覚えているだろう?」
「そういや、そうだな」
薄く光っていた部分からは何らかの力が作用していたように思う。
そう、例えば動きを封じるような魔法のようなものだ。演習用の魔獣であるあいつには意図的に大きさと動きをコントロールできるように、国家魔術師による魔法で管理されていたのかもしれない。
残念ながら一般的に魔法が浸透しているわけではないから僕も専門的な知識はないのだけれど。
さすがに演習で何の対策もしていない状態の魔獣を放つなんて狂気じみているから、あながちこの考えは間違っていないのではないかと思われる。
「あいつには大きさと動きをコントロールできるような魔法がかかっていたんじゃないだろうか」
あの額の光が消えているということは、力がコントロールされていない状態を表している。だから大トカゲはあんなにも暴れ狂っているのだ。
僕の考えを伝えるとラルも「なるほど」とつぶやく。
「以前の演習の際、荷台にあのトカゲが乗せられた時、団長があいつの額に触れた気がしたんだ。そしたら……」
「急に大人しくなって眠った。俺も、覚えている」
「ああ。少なくとも力を抑える状態・眠らせる状態・制御を外す状態の三段階があるはずだ」
「今は光が消えて制御が外れている状態だから一、二回額を叩けば眠らせられる可能性がある……ってことか!」
ラルの顔がパッと明るくなる。僕達だけでも何とか出来るかもしれないという希望を見出したのだ。
「あいつに地面から近づくのは危険だから、高所から狙うのがいいと思う。ラル、君は短剣の投擲が得意だったろう。額を狙えないか。刺さらなくてもいい、当てるだけでいいんだ」
「へえ、良く知ってるじゃん。お前は下手くそだったよな。いつも的の斜め左下に短剣が飛んでいく」
「あぁ……うん」
下手だとズバッと指摘されて恥ずかしくなって俯く。僕の投げる短剣は大抵的より下方に刺さるのだ。たぶん、力が弱いせいだ。コントロールが悪いわけではないし、投げ方の理論も分かっているのだけど、体が付いて行かないという状態なのだ。
「正直言って僕には当てられる自信がない。だからこの作戦はラルに頼りきりになってしまうけれど……」
「任せておけよ。とっととあいつを眠らせて、瓦礫の後片付けをしないとな」
僕達は早速作戦を開始するべく高所に行くため家の壁を登っていく。
しかし洪水の影響でもろくなった壁は手や足をかける度に剥がれ落ちて行く。
本来なら屋根に上り切ってから作戦開始だったが、それより前に耳ざとく物音に気付いた大トカゲがこちらに向かってズシズシとやって来る音が聞こえた。
背後まで迫ってくる気配がする。あいつが近くにいると思うと焦りと恐怖で上手く壁が掴めない。
「急げ、フェリクス!」
いち早く屋根まで上がったラルが僕に声を掛ける。
「ラル、僕のことはいいから……投擲を!」
「ちっ、分かったよ!」
舌打ちをしたラルは外套の内側に収納していた短剣を大トカゲの額めがけて放った。カシン、と音がして短剣は厚い鱗に弾かれる。
だけど予想通り大トカゲの額からは青い光が浮かび上がる。それは制御の効いた状態を表すもの。すかさずラルが二回目を当てようと短剣を構えたところで、大トカゲのしっぽが家の壁を叩いた。額を打たれたことで痛みを堪え切れず暴れ出したのだ。
「うわっ」
衝撃で外壁が崩れ、僕の手が掴んでいた外壁から外れる。
落ちる、と思った時にラルによって手首を掴まれ引っ張られて、勢いのまま屋上へと放り上げられた。入れ替わりになるようにラルの体が落下していく。
「ラル!?」
叫びながら地面を覗き込む。
「くそっ……」
ラルは無事だった。しかし地面へと叩きつけられた衝撃ですぐに動けずにいる。そんなラルに噛みつこうと大トカゲが迫る。頭を下げている大トカゲ。ここからでは額を狙うこともできない。
「うわあああ!!!」
僕は腰に佩いていた長剣を引き抜き、大トカゲの背中めがけて屋上から飛んだ。硬い鱗もさすがに自重を乗せた剣の一撃を防ぐことができず、貫くことができた。肌の深くまでズブズブと突き刺さる。
「くっ」
ビリビリと腕が痺れる。大トカゲが痛みで暴れ出し、僕を振り落とそうとしている。大トカゲの大きさは変わらないままだから落ちたらもう登れる自信はない。絶対に振り落とされてたまるか。ここから大トカゲの額を叩く、それしかもう残された方法はない。
ぐん、と体が前へと引っ張られる。大トカゲが速度を上げて走り出したのだ。向かったのは街と外を繋ぐ橋だった。大トカゲはそのままの勢いで橋脚に体をぶつけた。制御が効いているはずの状態なのにどこにこんな力があるのか。よほど僕を振り落としたいらしい。
体が激しく揺さぶられ、大トカゲの背に体が叩きつけられる。
「うぅ……」
剣を掴む手の力も限界をとうに迎えている。あと少しでトカゲの額に手が届きそうなのに、届かない。手が、滑り落ちそうになる……。
もう駄目なのだろうか。
「フェリクス!!」
その時、僕の名を呼ぶ愛しい人の声が頭上から聞こえた。
とうとう幻聴まで聞こえてしまったのかと思った時、黒づくめの稲妻が空から降って来た。大トカゲの背中に剣を突き刺して。
ああ、僕の英雄は危機が訪れると必ず駆け付けてくれる。
眩しくて目を細めながら愛する人を眺める。少し疲れた顔をしているが、怪我は一つもない。
どうやらズクロス討伐から戻って来たシドは、橋の上からここを目掛けて飛び降りて来たらしい。何という無茶をするのだろう。落ちそうになっていた僕の体がシドの片腕によってしっかりと抱き留められる。
「よく持ちこたえた」
「シド……ッ!」
間近でニッと唇の端を持ち上げて笑うシドに感極まって震える声でその名を呼んだ。
シド、シド、僕のシド。
もうずっと長いこと彼と離れていたような気がする。それぐらいたくさんの出来事があった。
聞いて欲しいことがたくさんある。だけどそれは全てが終わってからだ。
「シド、僕の体を支えて。トカゲの額を叩いて眠らせるから!」
「ああ。任せろ!」
シドは深く尋ねてくることは無く、片手で剣の柄を握って体が落ちないように固定したままもう片方の腕で僕の体を押し上げた。
相変わらず大トカゲは暴れ回って僕達を振り落とそうとしているが、シドに支えてもらっていることにより絶対に落ちないという安心感に包まれている。
僕は首によじ登り、パン、と音を立てて大トカゲの額を叩いた。
額の青い光が、白へと変わる。やった、と思ったその瞬間、眠りへと落ちて行く大トカゲの体がぐらりと大きく傾いた。
「ぅあっ……」
大トカゲと共に落下していくと思われた僕の体は、シドによって持ち上げられる。
シドの足が大トカゲの背を蹴り空中へと跳躍する。横抱きにされ、ギュッと目をつぶって前の制服へとしがみ付く。一瞬の浮遊感の後、地面へ降りた時の衝撃はほとんど無かった。
恐る恐る目を開けると、少し離れた場所で大トカゲは眠りに落ちていた。
全てが終わったことを知る。
空中で僕を横抱きに抱え直し、大トカゲの背中から飛び降りてくるという離れ業をやってのけたシド。それなのにどこも痛めた様子もなくピンピンしているシドに感嘆する。僕だったら着地に失敗して骨の一本や二本は折れているか、大トカゲの下敷きになっていたかもしれない。
「本当に君はすごい。僕の英雄だ!」
安堵して、改めてシドの背に腕を回してしがみ付いた。恐らく橋から降りてくる前に胸当ては外したのかもしれない。僕達を隔てるものは何もなかった。
本当はもう降りなくちゃいけないけど、惜しくて。シドも僕を下ろそうとしないから二人で抱き合っていた。
「おい、そろそろ離れろよ」
いつまでもいちゃついてんじゃねえ、そろそろ団長達もここに来るぞと不機嫌な声が背中の方から聞こえてきて、肩越しに振り返ると足を引きずりながらやって来るラルの姿があった。
「ラル!!」
シドに降ろしてもらい、ようやく自分の足で地面に着いてラルと向き合う。ラルの制服も体もドロドロで、満身創痍という姿だった。
「怪我をしたのか、僕のせいで……すまない」
「こんなのかすり傷だ。すぐに治るっての。それよりもよくやったじゃん。お前達があの化け物をやっつけるところ、遠くから見てたぜ」
これまで僕への敵意を隠そうともしなかったラルがニヤッて僕に笑うから、シドはかなり驚いたみたいだ。
「お前達、いつの間に仲良くなったんだ」
「シド達がいない間にめちゃくちゃ大変なことがあったんだぜ。洪水も起きて、だけどフェリクスが直前に気付いて住民を避難させて回ったんだ。正直すごかったよ、毅然とした態度で商人と交渉して、俺にはあんな真似出来なかった」
「ラル……」
ラルは僕に対して深々と頭を下げた。
「昨日からのお前を見てたら、シドの言う通りだったと気付いた。ずっと誤解してた。これまでの態度、謝罪させてくれ。嫌な奴だと決めつけて、お前のことを侮辱だってした。本当にすまなかった」
「いいんだ。顔を上げてくれ」
ラルの手を取って顔を上げるよう促す。「でも……」となおも謝罪を続けようとする彼に首を振る。
「僕達は同じ騎士団の仲間じゃないか。これからは仲間として接してくれたら嬉しい」
そう言いながらも、僕は一抹の不安を抱いていた。
仲間としてやっていく、果たしてそれは可能なのだろうか、と。
ドドド、といくつもの馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。橋を渡り、道を回り込んで来たザルツ団長達がここまで辿り着いたのだ。
他の団員達に洪水の後始末などの指示を飛ばし、その後で馬から降りてこちらへ近づいてくる。団長の後ろにはミハイルの姿もあった。彼もどうやら無事だったらしいと知り、安堵する。
「フェリクス、お前が住民達に避難指示を出したそうだな」
団長はここに辿り着くまでに、洪水が起こったことやその結果大トカゲが逃げ出したことなども馬上で報告を受けたらしい。
「はい、おっしゃる通りです。団長の指示も仰がずに行動を起こした今回のこと、いかなる処罰も受け入れます。責任は全て私にあります」
団長の指示も得ずに勝手に行動を起こした責任は取らなければならないだろう。深く頭を下げる。退団、そんな言葉が頭をよぎる。
「フェリクス!?」
シドとラル、それからミハイルが揃って声を上げ、三人して僕を庇うように団長の前に立ち塞がる。
「お待ちください、団長。あの時は一刻の猶予もありませんでした。あの時点でフェリクスが動かなければたくさんの人が洪水で流されていたに違いありません。彼を処罰するなら私のことも処罰してください」
「彼が努力している姿は私が一番よく知っています。どうかそれを考慮していただけませんか」
「大トカゲを眠らせたのはフェリクスだ。それでもこいつを罰するのなら俺にも考えがある」
「みんな……」
最初はラル、次はミハイル、最後はシドの言葉だ。シドの言葉はザルツ団長相手ですら一切怯むこともなく、それどころか不遜すぎるほどのものだった。シドも処罰されてしまわないかと僕の方がハラハラしてしまう。
三人の言葉に一瞬黙り込んだ団長だったが、次の瞬間クククッとお腹を抱えて笑い出した。
「お前達、随分と打ち解けたようじゃねえか。あんなにギスギスしていたくせに、フェリクスを助けるために団結するまでになるとはな。なあ、フェリクス。全てを見極めた上で最適だと思う組み合わせにしている、と俺の言った通りだったろう」
団長の言葉に目を見開く。それは僕とシドが上手くいってなくて、別の隊に入れ直して欲しいと団長に相談に行った時に返された言葉だ。
全てを見極めた上で、とはシドだけでなくミハイルやラルとの関係全てのことも含んでいたのだ。団長の目には僕達がいずれ団結するであろう姿が見えていたのかもしれない。
ザルツ団長の人を見る目に感嘆する。
「騎士団は集団での行軍が基本だ、それは正しい。だが、それはあくまでも基本だ。俺が欲しいのは何が何でも忠実に命令を聞くだけのお利口さんな人形じゃねえぞ。有事の際には自らの判断で動く、そういう臨機応変のできる奴も黒狼騎士団には必要だ。そういう意味で言うなら、フェリクス、今回のお前の働きは十分称賛するに値する。よくやった」
団長の大きな手が僕の頭をわしわしと撫でた。
最近気づいたのだけど、僕は褒められて撫でられるという行為に弱いのかもしれない。そうされると、胸の奥の方がじんじんと熱くなって泣きたくなってしまう。
だけど泣くのは騎士としては情けないんじゃないかと思うから、ぐっと堪えて「ありがとうございます!」と頭を下げた。
次に頭を上げた時、視界に映ったのは僕の制服の襟にバッジを付ける団長の手だった。襟元に輝く狼をかたどったバッジは、正式に入団した者だけがもらえる証。
「今回の功績を称えて第一号にしてやろう。これでお前は正式な黒狼騎士団の団員だ」
騎士として働くことを認められて、今度こそ僕の涙腺は決壊してしまった。
ミハイルもラルも「おめでとう」という言葉を贈ってくれた。こくこくと頷きながら涙を拭う。
「良かったな、フェリクス」
隣に立つシドはずっと震え続けてしまう僕の手をやさしく握ってくれた。
遠くから見つめることしかできず、憧れるばかりだったシドの背中にこれでようやく追いつくことができたのだろうか。
「おいおい、恋愛は禁止だなどと野暮なことを言うつもりはないが、時と場合を弁えろよ!」
団長の言葉に、シドは明後日の方向を向いて聞こえない振りを貫く。皆に注視された部分が恥ずかしくて繋がれた手を振りほどこうとしてみるが、残念ながら叶わなかった。仕方なく、いや、本当のところ僕も離して欲しくなかったので、ぎゅっと握り返した。
シドにこれ以上言っても無駄だと悟ったのか団長は呆れ果てたように頭を掻いた。
「はぁ、ったく。フェリクス。これで満足してもらっちゃ困るぞ。お前にはまだまだ成長してもらわなくちゃな。もちろん、お前達三人も。今年の新人は伸びしろがありそうで鍛えがいがあるな」
団長の言葉に、僕はもちろんのことシド達三人も背筋を伸ばした。
僕がシドの隣で胸を張って立てるようになるのはもう少し先のことだ。
何せ僕ときたら腕は未熟だから、まだまだ覚えなければならないことがたくさんあった。
そこに辿り着くまでに、色んな出来事もあった。
堂々と並び立てる頃には、常に離れず寄り添い合う僕達二人の姿を表して『白い主と忠実な黒狼』なんて不本意な呼ばれ方をすることになる。
シドを下僕として扱ったことは騎士団に入ってから一切ない。
だけど、常に僕に寄り添うシドの姿が傍からは忠実な下僕に見えてしまうらしい。そのことを知ったシドは「別に誰からどう見られていても構わない」と言った。
僕もシドも互いを尊敬し合っている。互いが対等だと感じているのなら他の誰に何を言われても構わないのだと。
それに……と言葉を続ける。
愛する僕に跪き、願いを何でも聞いてやりたいと思うのは事実だから、とも語った。
その言葉に思わず目をパチパチと瞬かせてしまう僕にシドがやさしく笑って口づけをくれたというのは、また別の話である。
END
ラルが辛うじて残っている家の壁に張り付いて、大トカゲの様子を伺った後ため息をつく。大トカゲはしっぽを瓦礫にバシン、バシンと打ち付けながら歩行している。いや、暴れ狂っていると言った方が正しい。
「前回はほとんどシドがやっつけたんだよなぁ。あんなでかい奴俺達だけでどうやって仕留めればいいんだ。っていうか、あいつ前よりでかくなってないか?」
ラルの言葉通り大トカゲは森で遭遇した時よりも一回りぐらい大きくなっていた。
他の皆は万が一住民がこちらに来ないように道を封鎖して回っている。この場にいるのはラルと僕の二人だけだ。正直全く人手が足りないけれど、やるしかない。
「気付いたか、ラル。今のあいつの額には黒狼騎士団の印が浮かんでいないんだ。以前は薄く青く光っていたのを覚えているだろう?」
「そういや、そうだな」
薄く光っていた部分からは何らかの力が作用していたように思う。
そう、例えば動きを封じるような魔法のようなものだ。演習用の魔獣であるあいつには意図的に大きさと動きをコントロールできるように、国家魔術師による魔法で管理されていたのかもしれない。
残念ながら一般的に魔法が浸透しているわけではないから僕も専門的な知識はないのだけれど。
さすがに演習で何の対策もしていない状態の魔獣を放つなんて狂気じみているから、あながちこの考えは間違っていないのではないかと思われる。
「あいつには大きさと動きをコントロールできるような魔法がかかっていたんじゃないだろうか」
あの額の光が消えているということは、力がコントロールされていない状態を表している。だから大トカゲはあんなにも暴れ狂っているのだ。
僕の考えを伝えるとラルも「なるほど」とつぶやく。
「以前の演習の際、荷台にあのトカゲが乗せられた時、団長があいつの額に触れた気がしたんだ。そしたら……」
「急に大人しくなって眠った。俺も、覚えている」
「ああ。少なくとも力を抑える状態・眠らせる状態・制御を外す状態の三段階があるはずだ」
「今は光が消えて制御が外れている状態だから一、二回額を叩けば眠らせられる可能性がある……ってことか!」
ラルの顔がパッと明るくなる。僕達だけでも何とか出来るかもしれないという希望を見出したのだ。
「あいつに地面から近づくのは危険だから、高所から狙うのがいいと思う。ラル、君は短剣の投擲が得意だったろう。額を狙えないか。刺さらなくてもいい、当てるだけでいいんだ」
「へえ、良く知ってるじゃん。お前は下手くそだったよな。いつも的の斜め左下に短剣が飛んでいく」
「あぁ……うん」
下手だとズバッと指摘されて恥ずかしくなって俯く。僕の投げる短剣は大抵的より下方に刺さるのだ。たぶん、力が弱いせいだ。コントロールが悪いわけではないし、投げ方の理論も分かっているのだけど、体が付いて行かないという状態なのだ。
「正直言って僕には当てられる自信がない。だからこの作戦はラルに頼りきりになってしまうけれど……」
「任せておけよ。とっととあいつを眠らせて、瓦礫の後片付けをしないとな」
僕達は早速作戦を開始するべく高所に行くため家の壁を登っていく。
しかし洪水の影響でもろくなった壁は手や足をかける度に剥がれ落ちて行く。
本来なら屋根に上り切ってから作戦開始だったが、それより前に耳ざとく物音に気付いた大トカゲがこちらに向かってズシズシとやって来る音が聞こえた。
背後まで迫ってくる気配がする。あいつが近くにいると思うと焦りと恐怖で上手く壁が掴めない。
「急げ、フェリクス!」
いち早く屋根まで上がったラルが僕に声を掛ける。
「ラル、僕のことはいいから……投擲を!」
「ちっ、分かったよ!」
舌打ちをしたラルは外套の内側に収納していた短剣を大トカゲの額めがけて放った。カシン、と音がして短剣は厚い鱗に弾かれる。
だけど予想通り大トカゲの額からは青い光が浮かび上がる。それは制御の効いた状態を表すもの。すかさずラルが二回目を当てようと短剣を構えたところで、大トカゲのしっぽが家の壁を叩いた。額を打たれたことで痛みを堪え切れず暴れ出したのだ。
「うわっ」
衝撃で外壁が崩れ、僕の手が掴んでいた外壁から外れる。
落ちる、と思った時にラルによって手首を掴まれ引っ張られて、勢いのまま屋上へと放り上げられた。入れ替わりになるようにラルの体が落下していく。
「ラル!?」
叫びながら地面を覗き込む。
「くそっ……」
ラルは無事だった。しかし地面へと叩きつけられた衝撃ですぐに動けずにいる。そんなラルに噛みつこうと大トカゲが迫る。頭を下げている大トカゲ。ここからでは額を狙うこともできない。
「うわあああ!!!」
僕は腰に佩いていた長剣を引き抜き、大トカゲの背中めがけて屋上から飛んだ。硬い鱗もさすがに自重を乗せた剣の一撃を防ぐことができず、貫くことができた。肌の深くまでズブズブと突き刺さる。
「くっ」
ビリビリと腕が痺れる。大トカゲが痛みで暴れ出し、僕を振り落とそうとしている。大トカゲの大きさは変わらないままだから落ちたらもう登れる自信はない。絶対に振り落とされてたまるか。ここから大トカゲの額を叩く、それしかもう残された方法はない。
ぐん、と体が前へと引っ張られる。大トカゲが速度を上げて走り出したのだ。向かったのは街と外を繋ぐ橋だった。大トカゲはそのままの勢いで橋脚に体をぶつけた。制御が効いているはずの状態なのにどこにこんな力があるのか。よほど僕を振り落としたいらしい。
体が激しく揺さぶられ、大トカゲの背に体が叩きつけられる。
「うぅ……」
剣を掴む手の力も限界をとうに迎えている。あと少しでトカゲの額に手が届きそうなのに、届かない。手が、滑り落ちそうになる……。
もう駄目なのだろうか。
「フェリクス!!」
その時、僕の名を呼ぶ愛しい人の声が頭上から聞こえた。
とうとう幻聴まで聞こえてしまったのかと思った時、黒づくめの稲妻が空から降って来た。大トカゲの背中に剣を突き刺して。
ああ、僕の英雄は危機が訪れると必ず駆け付けてくれる。
眩しくて目を細めながら愛する人を眺める。少し疲れた顔をしているが、怪我は一つもない。
どうやらズクロス討伐から戻って来たシドは、橋の上からここを目掛けて飛び降りて来たらしい。何という無茶をするのだろう。落ちそうになっていた僕の体がシドの片腕によってしっかりと抱き留められる。
「よく持ちこたえた」
「シド……ッ!」
間近でニッと唇の端を持ち上げて笑うシドに感極まって震える声でその名を呼んだ。
シド、シド、僕のシド。
もうずっと長いこと彼と離れていたような気がする。それぐらいたくさんの出来事があった。
聞いて欲しいことがたくさんある。だけどそれは全てが終わってからだ。
「シド、僕の体を支えて。トカゲの額を叩いて眠らせるから!」
「ああ。任せろ!」
シドは深く尋ねてくることは無く、片手で剣の柄を握って体が落ちないように固定したままもう片方の腕で僕の体を押し上げた。
相変わらず大トカゲは暴れ回って僕達を振り落とそうとしているが、シドに支えてもらっていることにより絶対に落ちないという安心感に包まれている。
僕は首によじ登り、パン、と音を立てて大トカゲの額を叩いた。
額の青い光が、白へと変わる。やった、と思ったその瞬間、眠りへと落ちて行く大トカゲの体がぐらりと大きく傾いた。
「ぅあっ……」
大トカゲと共に落下していくと思われた僕の体は、シドによって持ち上げられる。
シドの足が大トカゲの背を蹴り空中へと跳躍する。横抱きにされ、ギュッと目をつぶって前の制服へとしがみ付く。一瞬の浮遊感の後、地面へ降りた時の衝撃はほとんど無かった。
恐る恐る目を開けると、少し離れた場所で大トカゲは眠りに落ちていた。
全てが終わったことを知る。
空中で僕を横抱きに抱え直し、大トカゲの背中から飛び降りてくるという離れ業をやってのけたシド。それなのにどこも痛めた様子もなくピンピンしているシドに感嘆する。僕だったら着地に失敗して骨の一本や二本は折れているか、大トカゲの下敷きになっていたかもしれない。
「本当に君はすごい。僕の英雄だ!」
安堵して、改めてシドの背に腕を回してしがみ付いた。恐らく橋から降りてくる前に胸当ては外したのかもしれない。僕達を隔てるものは何もなかった。
本当はもう降りなくちゃいけないけど、惜しくて。シドも僕を下ろそうとしないから二人で抱き合っていた。
「おい、そろそろ離れろよ」
いつまでもいちゃついてんじゃねえ、そろそろ団長達もここに来るぞと不機嫌な声が背中の方から聞こえてきて、肩越しに振り返ると足を引きずりながらやって来るラルの姿があった。
「ラル!!」
シドに降ろしてもらい、ようやく自分の足で地面に着いてラルと向き合う。ラルの制服も体もドロドロで、満身創痍という姿だった。
「怪我をしたのか、僕のせいで……すまない」
「こんなのかすり傷だ。すぐに治るっての。それよりもよくやったじゃん。お前達があの化け物をやっつけるところ、遠くから見てたぜ」
これまで僕への敵意を隠そうともしなかったラルがニヤッて僕に笑うから、シドはかなり驚いたみたいだ。
「お前達、いつの間に仲良くなったんだ」
「シド達がいない間にめちゃくちゃ大変なことがあったんだぜ。洪水も起きて、だけどフェリクスが直前に気付いて住民を避難させて回ったんだ。正直すごかったよ、毅然とした態度で商人と交渉して、俺にはあんな真似出来なかった」
「ラル……」
ラルは僕に対して深々と頭を下げた。
「昨日からのお前を見てたら、シドの言う通りだったと気付いた。ずっと誤解してた。これまでの態度、謝罪させてくれ。嫌な奴だと決めつけて、お前のことを侮辱だってした。本当にすまなかった」
「いいんだ。顔を上げてくれ」
ラルの手を取って顔を上げるよう促す。「でも……」となおも謝罪を続けようとする彼に首を振る。
「僕達は同じ騎士団の仲間じゃないか。これからは仲間として接してくれたら嬉しい」
そう言いながらも、僕は一抹の不安を抱いていた。
仲間としてやっていく、果たしてそれは可能なのだろうか、と。
ドドド、といくつもの馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。橋を渡り、道を回り込んで来たザルツ団長達がここまで辿り着いたのだ。
他の団員達に洪水の後始末などの指示を飛ばし、その後で馬から降りてこちらへ近づいてくる。団長の後ろにはミハイルの姿もあった。彼もどうやら無事だったらしいと知り、安堵する。
「フェリクス、お前が住民達に避難指示を出したそうだな」
団長はここに辿り着くまでに、洪水が起こったことやその結果大トカゲが逃げ出したことなども馬上で報告を受けたらしい。
「はい、おっしゃる通りです。団長の指示も仰がずに行動を起こした今回のこと、いかなる処罰も受け入れます。責任は全て私にあります」
団長の指示も得ずに勝手に行動を起こした責任は取らなければならないだろう。深く頭を下げる。退団、そんな言葉が頭をよぎる。
「フェリクス!?」
シドとラル、それからミハイルが揃って声を上げ、三人して僕を庇うように団長の前に立ち塞がる。
「お待ちください、団長。あの時は一刻の猶予もありませんでした。あの時点でフェリクスが動かなければたくさんの人が洪水で流されていたに違いありません。彼を処罰するなら私のことも処罰してください」
「彼が努力している姿は私が一番よく知っています。どうかそれを考慮していただけませんか」
「大トカゲを眠らせたのはフェリクスだ。それでもこいつを罰するのなら俺にも考えがある」
「みんな……」
最初はラル、次はミハイル、最後はシドの言葉だ。シドの言葉はザルツ団長相手ですら一切怯むこともなく、それどころか不遜すぎるほどのものだった。シドも処罰されてしまわないかと僕の方がハラハラしてしまう。
三人の言葉に一瞬黙り込んだ団長だったが、次の瞬間クククッとお腹を抱えて笑い出した。
「お前達、随分と打ち解けたようじゃねえか。あんなにギスギスしていたくせに、フェリクスを助けるために団結するまでになるとはな。なあ、フェリクス。全てを見極めた上で最適だと思う組み合わせにしている、と俺の言った通りだったろう」
団長の言葉に目を見開く。それは僕とシドが上手くいってなくて、別の隊に入れ直して欲しいと団長に相談に行った時に返された言葉だ。
全てを見極めた上で、とはシドだけでなくミハイルやラルとの関係全てのことも含んでいたのだ。団長の目には僕達がいずれ団結するであろう姿が見えていたのかもしれない。
ザルツ団長の人を見る目に感嘆する。
「騎士団は集団での行軍が基本だ、それは正しい。だが、それはあくまでも基本だ。俺が欲しいのは何が何でも忠実に命令を聞くだけのお利口さんな人形じゃねえぞ。有事の際には自らの判断で動く、そういう臨機応変のできる奴も黒狼騎士団には必要だ。そういう意味で言うなら、フェリクス、今回のお前の働きは十分称賛するに値する。よくやった」
団長の大きな手が僕の頭をわしわしと撫でた。
最近気づいたのだけど、僕は褒められて撫でられるという行為に弱いのかもしれない。そうされると、胸の奥の方がじんじんと熱くなって泣きたくなってしまう。
だけど泣くのは騎士としては情けないんじゃないかと思うから、ぐっと堪えて「ありがとうございます!」と頭を下げた。
次に頭を上げた時、視界に映ったのは僕の制服の襟にバッジを付ける団長の手だった。襟元に輝く狼をかたどったバッジは、正式に入団した者だけがもらえる証。
「今回の功績を称えて第一号にしてやろう。これでお前は正式な黒狼騎士団の団員だ」
騎士として働くことを認められて、今度こそ僕の涙腺は決壊してしまった。
ミハイルもラルも「おめでとう」という言葉を贈ってくれた。こくこくと頷きながら涙を拭う。
「良かったな、フェリクス」
隣に立つシドはずっと震え続けてしまう僕の手をやさしく握ってくれた。
遠くから見つめることしかできず、憧れるばかりだったシドの背中にこれでようやく追いつくことができたのだろうか。
「おいおい、恋愛は禁止だなどと野暮なことを言うつもりはないが、時と場合を弁えろよ!」
団長の言葉に、シドは明後日の方向を向いて聞こえない振りを貫く。皆に注視された部分が恥ずかしくて繋がれた手を振りほどこうとしてみるが、残念ながら叶わなかった。仕方なく、いや、本当のところ僕も離して欲しくなかったので、ぎゅっと握り返した。
シドにこれ以上言っても無駄だと悟ったのか団長は呆れ果てたように頭を掻いた。
「はぁ、ったく。フェリクス。これで満足してもらっちゃ困るぞ。お前にはまだまだ成長してもらわなくちゃな。もちろん、お前達三人も。今年の新人は伸びしろがありそうで鍛えがいがあるな」
団長の言葉に、僕はもちろんのことシド達三人も背筋を伸ばした。
僕がシドの隣で胸を張って立てるようになるのはもう少し先のことだ。
何せ僕ときたら腕は未熟だから、まだまだ覚えなければならないことがたくさんあった。
そこに辿り着くまでに、色んな出来事もあった。
堂々と並び立てる頃には、常に離れず寄り添い合う僕達二人の姿を表して『白い主と忠実な黒狼』なんて不本意な呼ばれ方をすることになる。
シドを下僕として扱ったことは騎士団に入ってから一切ない。
だけど、常に僕に寄り添うシドの姿が傍からは忠実な下僕に見えてしまうらしい。そのことを知ったシドは「別に誰からどう見られていても構わない」と言った。
僕もシドも互いを尊敬し合っている。互いが対等だと感じているのなら他の誰に何を言われても構わないのだと。
それに……と言葉を続ける。
愛する僕に跪き、願いを何でも聞いてやりたいと思うのは事実だから、とも語った。
その言葉に思わず目をパチパチと瞬かせてしまう僕にシドがやさしく笑って口づけをくれたというのは、また別の話である。
END
228
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
実況配信中!没落オメガの通信魔術師と氷の騎士団長の契約結婚~迷宮の底でヒートしたら冷徹アルファの溺愛が始まった
水凪しおん
BL
かつて名門だったアステリア家の生き残りである青年ルミナス。
彼は自身が「オメガ」であることを隠し、ベータと偽って王都の裏社会で通信魔術師として借金を返す日々を送っていた。
ある日、そんな彼に信じられない大仕事が舞い込む。
それは王国最強のアルファと謳われる冷徹な騎士団長レオンハルトとの「契約結婚」。
そして、危険な未踏破迷宮アビスロンドの攻略戦に同行し、その模様を国中に実況配信するというものだった。
オメガを憎悪しているレオンハルトに正体がバレれば、ただでは済まない。
命懸けでベータを演じるルミナスだったが、迷宮の奥深くで吸い込んだ濃密な瘴気により、隠し続けていた「ヒート」が突如として始まってしまう。
絶体絶命の危機。しかし、ルミナスは自らのフェロモンを支援魔法に変換し、魔力暴走を起こしかけたレオンハルトを救い出す。
その気高くも美しい献身に、オメガを憎んでいたはずの氷の騎士団長は完全にほだされてしまい――。
「俺は残りの人生のすべてを懸けて、お前を幸福にすると誓う」
ただの契約結婚だったはずが、最強アルファからの過保護で独占欲全開の溺愛がスタート!
しかもその極甘な様子は、魔法通信を通じて王都の国民たちにすべて実況配信されていて……!?
身分差と過去の傷跡を乗り越え、真実の番となる二人を描く、王道ファンタジー&溺愛オメガバース!
※本作にはオメガバース設定に基づく軽度な性的表現(ヒート、番の印など)、および魔物との戦闘による流血・残酷表現が含まれます。15歳未満の方の閲覧はご注意ください。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とても素敵な作品をありがとうございました。
DL版も楽しみにしています♪
mikiyammm様
感想に気付かずお返事がたいへん遅れてしまい申し訳ありません!
DL版でもぜひお会い出来たら嬉しく思います。頑張って制作していきます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
作者様 初めまして(*^^*)
とても面白く拝読させて頂いております。
素敵な作品をありがとうございます
応援しています!
環様
わぁ…!
とても嬉しい感想ありがとうございます!
完結まで残り少しとなりました。最後までお付き合いいただければ幸いです♪