転生したら悪役貴族だったので思い切って学園に行かずに旅人になることにしました

八条零

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第11話 殲滅の誓いと神殿の影 前半

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爆風が森を焼いた。

異形の魔獣が呻き、なおも蠢く。黒煙に包まれながらも、その身は再構成されようとしていた。焼けただれた皮膚の内側で、不気味に脈打つ瘴気が明滅している。

「……まだ動くのかよ、こいつ……」

アレクが歯噛みし、剣を構え直す。クラリスの展開した結界も歪み、魔力の逆流を受けていた。

「この再生、常軌を逸してる。自然の理則を踏み越えてるわ……!」

そのとき、雷鳴のような一閃が大地を裂いた。

巨斧を握った男――ガルドが、咆哮とともに魔獣へ斬撃を叩き込んだ。刃は骨ごと肉を断ち割り、再生しかけた部位を粉砕する。

「クラリスは後衛に徹しろ。アレク、お前は右から回り込め!」

「了解!」

アレクは疾風のように駆け、魔獣の側面へと躍りかかった。剣先が腹部を貫き、ガルドの斧がその頭部をたたき潰す。

しかし、魔獣はなおも吠えた。喉の奥から、忌まわしき咆哮と黒煙を吐き出し――その姿が、次の瞬間、変質を始める。

「……姿が……変わる?!」

クラリスが叫んだ。

黒い影が獣の体内から溢れ出し、背中に異形の羽のようなものが出現する。形状すら固定されず、歪みながら増殖するそれは、まるで“別の存在”が内部から現れようとしているようだった。

「やばい、これは……!」

ガルドが地を蹴った。

「離れろ!! 自爆する!!」

直後――魔獣は、爆ぜた。

灼熱の波が森の一角を吹き飛ばし、三人は吹き飛ばされるように木々の間へと転がった。



やがて、静寂が戻る。

焼け焦げた魔獣の残骸を前に、アレクが息を吐いた。

「……終わったか……?」

「いや」ガルドが警戒を解かずに言う。「まだ、これで終わりじゃない。問題は、こいつらを“送り込んだやつ”だ」

クラリスが、残された魔石の欠片を拾い上げる。その色は濁り、まるで“精霊の気配”を一切宿していない。

「……普通の魔獣じゃない。外部魔素、つまり人工生成された何かよ。これは……魔獣にすら分類できない“異形”」

「しかも結界の内側で現れた。つまり……誰かが内側から“侵入”している」

ガルドは剣呑な視線を神殿の奥に向けた。

「……この森の奥、結界の核に当たる“神殿”がある。そこが狙われている」

「神殿? 何があるんだ?」

アレクの問いに、ガルドは言った。

「精霊の封印だ。あそこを壊されたら、この森そのものが“異界の門”と化す」

アレクは息を呑んだ。

「じゃあ、これって……始まりに過ぎないってことか」
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