早咲きの向日葵と遅れた夏休み

どてかぼちゃ

文字の大きさ
15 / 38
第二章 その町の名はアオジョリーナ・ジョリ―村

安らぎと平穏

しおりを挟む
 
 「三河さんお早うございまちゅ」

 「相変わらずリバーライダーはかわいいなぁ。でへへへ」

 僕達がこの世界へ来て既に……? 正直に言えばハッキリ分からない。一応まだ一ヶ月も経っていないはずだが、別の場所へ行ったりすれば時間経過がズレるから本当の所よく分からないのだ。浦島太郎的な?

 「あ、これブーの卵でちゅ。新鮮なうちにどうぞめちあがれ」

 「ありがとー! 本当にかーわーいーなー!」

 「それでは三河様。今日もいい日でありまちゅように」

 驚くべきは彼等の成長速度。僕やモッチーは来た時と何も変わらないでいたが、ここの住人は違う。異常なのだ。ほぼ野生動物だったのに、今では全員言語を操るどころか各々が様々な労働に従事しているのだ。となれば必然的に法整備が求められる。

 僕としてもこれ以上、この村の発展や統治には関わりたくないのが正直なところ。だから青ジョリを矢面に立たせ、この世界にいるうち、或は生きている間だけ彼のバックアップをする事にした。コレはモッチーも同意見で、僕達の痕跡が薄らぐように、町の名前も〝アオジョリーナ・ジョリ―村〟と命名。どれほど発展しようとも初心忘れるべからずと最後に〝村〟を付けた。

 あと、この町名が駄洒落だと知るのは僕とモッチーだけ。他に気付く者がいるならば、そいつも間違いなく僕達と同じ世界からやってきた異世界人であろう。

 「だけど当初からいる住人達は僕やモッチーを神ぐらいに崇めてくるんだよなー。マジやめてほしい」

 『……それは仕方がないのでは? この村の礎を築いたのは旦那様なのだし』

 「いや、ヤキがいなかったらそれも無理だったじゃん? ってことは、ヤキが一番の偉いさまじゃないの?」

 『……またまたぁー、御謙遜を。そんな控えめな旦那様も素敵ですね』

 いや、心底そう思ってるけど? ヤキがいなければ速攻彼等の餌となってたんじゃない? それにどうやらこの世界……いや、この村の住人はヤキを捉えることが出来ないらしい。僕の後ろに得体のしれない者が控えてるぐらいにしか分からないようなのだ。乗り移られたヤツらは映像として脳に直接焼き付けられているそうだが、それも例のボロ皮バージョンのみ。ヤキとしても見せる意思がないそうで、これが彼女の存在自体を曖昧にさせている。今のところ、その方が都合いいのも確か。そのお陰で僕は魔法が使えると噂され、現時点を以てしても歯向かう者の一人として出現してないのだから。

 「あ、こんなところにいた。勝手にアタシたちの近くからいなくなるなよ」

 「ドーラよ、お前はもうちょっと言葉遣いを丁寧にしろや」

 それと、一つだけ従順な彼等に言いたいことがあるとすれば、このドーラとミラカー達吸血鬼のことか? 当初二人だけで生活させようと住居まで宛がったのに、何を思ったのか姉のドーラが〝お前を守るためには一時とて離れられないから一緒に生活する〟などとフザケタことをぬかしたのだ。この時他の住人がそれを後押ししたので結局一緒に生活をするハメに。僕はこの村にとって崇拝の対象だから何かあってはいけないと、四六時中警護が必要だから最強種である吸血鬼の二人に守ってもらえるなんて、これ以上のSPはいないのだと。いや、この人達ミニバンにビビって隠れてたじゃん? そもそもヤキがいるし。正直イラネー。

 「別にいいじゃん。それよりも一緒に暮らしてるんだから一度ぐらい手を出せよな? 自信なくなっちゃうだろ?」
 
 「お前フザケンナよ? 超絶お断りだ! 興奮して首筋でも噛まれたら堪ったもんでもないからな!」

 本当はヤキが怖いだけだったりして。嫉妬に狂って何をしでかすか想像もつかないし。

 「チェッ! まぁ、一緒に生活するだけでも楽しいから別にいいけどよ」

 それにしても平和だなぁ。いつの間にか住人達も増えたし。それでもこの世界的にこの村はどうなんだろうか? 発展しすぎなのか、それとも全然田舎レベルなのか? なにせ比べる場所がないし。

 そもそも住人たちにしたって増えるのが早すぎと違う? 知らないうちに各種族とも100匹……違うな? 100人か。その人数を遥かに超えてるし。ユー達はプラナリアみたいに分裂でもするんか? まったく、幾ら気持ちいいからと言っても子作り行為は程々にな!

 「おー、三河殿。ご機嫌如何でっかな?」

 「あ、なんだよ青ジョリ。モッチーから変な言葉を教えられてからに。何が三河殿だよ?」

 そして問題はコイツ。今やモッチーの傀儡と化しているのだ。張り子の村長故、ヤツの言いなり。憎たらしいことに、言いつけ通り行動すれば全て上手く事が運ぶようなのだ。伊達に僕の居ない間、村を目まぐるしく変化させてないや。

 「モッチーはどうした青ジョリ?」

 「へぇ、〝総大将モッチーさま〟ならば……」

 「あぁ? ちょっと待って。青ジョリはモッチーのこと〝総大将〟って呼んでるの?」

 「へぇ、そう呼んでくれと言われたんでさぁ」

 チーン! いいこと思いついちゃった。

 「ダメだよ青ジョリ、それ聞き間違いだと思うよ? たぶんモッチーはこう言ったはず、〝ソーローデショーモッチーさま〟って呼べと」

 『……プククク。だ、旦那様もお人が悪い』

 「今から青ジョリは大至急この言葉を町全体に広げて! いや、その権力を使って御布令をだすんだ! さぁムーブムーブムーブ!」

 「へ、へぇ! だったら早速行ってきまさぁ!」

 この後モッチーが〝ソーローデショーモッチーさま〟を略して〝早漏様〟と呼ばれるのは然程時間を要しなかった。ナイスッ!

 「ところでさ、ミラカーは全然口をきかないけど、もしかして言葉忘れたとか?」

 「……ちがわい」

 お、喋ったぞ? 結構可愛い声してるな。それとやっぱり言葉遣いは酷そうだ。

 「妹はアレ以来ビビってんだよ主人に」

 「あー、アレ(ヤキ)ね。別に悪いことしなければ出現しないから平気だってば」

 「だとよミラカー。お前も一応理に従って主人を守れよな」

 「う……ん、わかってる」

 元々口数が少ない子みたい。その気になれば簡単に僕をぶっ殺せるくせに。冷静に考えるとマジこっわ!
 
 そんなとき、アイツが僕の前へと現れた。

 「おーい三河くーん!」

 「あ、ソーローデショーモッチーだ」

 「ななななななななな何ですかその呼び方は!? や、止めて下さいよね! ぼぼぼぼぼ僕は決して早漏なんかじゃありませんからっ!」


 『……ォェ』

 「あぁ? なんかお前ムカっとするな? このソーローデショーモッチーをブッコロしていいか主人よ?」

 「ソーローブッコロス……」

 恐るべしモッチーのバッシブスキル。常に発動されている為、影響受ける人物をまったく選ばない。だけどどうもそれは特に女性限定って感がある。僕もキモいのは同意だけど、別に嫌いではないし、寧ろこの状況では心強く思っている。青ジョリやこの町における動物達でも一様にヤツを認めている。それは知識であったり、或は体術や技術、そして何よりも大人の遊びを教えているからのようなのだ。……そりゃ女さんから嫌われますわ。

 「え? なんですか君らまで!? あんまり憎たらしこと言ってると抱き着きますよ? いいんですか!」

 「……申し訳なかった。それだけは勘弁してくれソーローデショーモッチー」

 「ゆるしてソーロー……」

 「あぁ? なんだか余計な言葉がくっついてるけど、まぁ今日は大目に見ましょ。……まったく、最初から素直にそう頭を下げればいいものを! 次そんな態度をとったら僕の使ったコップを洗わないでそのまま使用させますからね!」

 「!」

 そーゆーとこだよモッチー? 女性だけではなく、そんなの誰が聞いても引くし。それにしても凄いな? 最強種と言われている吸血鬼を言葉のみでねじ伏せるなんて。ここまでくればモッチーのキモさも捨てたものではないな。


 こうして毎日が平穏に過ぎて行くアオジョリーナ・ジョリ―村。住人達は手に職をつける喜びを知ったり、モッチーに教えられた恋愛をしたり、或は僕達が伝授した娯楽に勤しんだりしてある意味成熟期を迎えたのだった。
 
 ヤツ等が来るまでは……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!

鏑木 うりこ
ファンタジー
 幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。 勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた! 「家庭菜園だけかよーー!」  元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?  大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...