非ビトの林檎

高槻薪

文字の大きさ
1 / 1

褪檎

しおりを挟む
「真っ赤だなぁ」薄暗くなってゆく視界の中で暗いまま聞こえてきたその声はぽつりぽつりと無くなってゆく、体の数少ない機能が微かに受け取った。ポツリ ポツリと消えてゆく。あ、冷たい。動かない。見えない。暗い。「あぁぁ…痛い…」痛覚。痛さを感じられる事。ああ、こんなに幸せで良いのかしら。林檎の樹が体から生えている。沢山の真赤な林檎が顔や足、体中に吹き出してくる。「シャバジュバしちゃあた」そう言った僕の頭に何かが突き刺さる。ブシュシュシュともの凄い勢いで林檎の樹が僕の頭から噴出している「ときめくなぁ」あぁそうか~僕が園なのか。どうせなら「林檎が欲しかった」「じゃあ、これはどう?」下から貫かれた。胸から骸の棘が小刻みに震えながら、僕の身体を圧迫している。「ぁぁァ~綺麗だなぁぁ」縫い付けられている膜が開いていく。ドボドボと僕から骸の塔が伸びている。「ぁ。ァああ」僕は声の主も分からぬまま、階段を一生懸命に上がってゆく。一段一段ドボドボと音を響かせながら。「あ要らずzu本屋行きたい」もう誰が声を出してるのか分からない。真っ赤だな あれ以外の声も僕だったのかぁ。バキバキと肋骨が深淵に落ちてゆく。もう痛さも感じなくなっていたから微笑んだ。つかの間辺りは静かになり、真っ黒な花畑に出た。眼下には白い子供の死体が並んでいる場所に出た。「あう、白林檎入りの頭骨」もう何も感じないので狂うことにした。「ふふ褪せる林檎」真っ白な林檎の樹。綺麗だったから身体を引きづりながら近付いていくと非ビトだった。「あ、」あぁ右目の彼女…僕を舐めてる。ぁぁそっか。僕、林檎になれたんだぁ。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...