1 / 1
喪眠
しおりを挟む
僕の身体のボクは、真っ黒な色素が重なり合っているだけの代用品。赤黒い爪が張り付いている手の平を頬に揺すりながら、ボクに訴えかける。円柱型の足首から、薄膜が縫い付けられている血走った眼を一生懸命に開こうとしながら、貴方は僕を見つめている つもり。僕の真っ赤な繊維の片手は、ボクの首を締めようとしてる。僕は左目を彼女の居る方向に向けるも、右目は正面を向いている。欠けてゆく旧身の頭骨は、脳裏に染みついた縫い目を黒い箱に込めて放出している。その箱は形を保つことなく、いつかの傷跡に形を変えて、僕の黒い原液の中に染みてゆく。その原液も良質な黒い床に染み、僕の血液と絡み合っている。いよいよ僕の首が圧迫してきたので、ボクの手首を代り飛ばした。手首は肉片と血しぶきを撒き散らしながら僕なのか疑わしいボくに還る。「僕去ね」「愛なんか要らない」「僕去ね」「僕死ね」「去ね」「痕残さず」「去ね」そう連呼しながら、僕はボクの首に絵の具を塗りたくりながら、蒼白とした手首と手でボクの首を締め付ける。「そう。それでいいんだよ。勘違いせずに去ねば」その言葉が赤黒い肉塊が張り詰める頭の中に届いたのか、眠る前の記憶がもげていた脳裏の細い肉糸を通って頭によぎる。僕とボクとの億劫な会話。ボクの楽しそうな笑顔。今ではもう数えきれないほどの穴が真っ青な木々に埋めつけられている様にしか見えない笑顔。夢見て勘違いしてた。繰り返して良いって。「あ」一瞬の喪失。鉄塔が揺れる。僕が居なくなって右目の彼女が居る でも今となってはその喪失し欠けてるのが自分。うん ~ お休み僕。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる