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プロローグ
しおりを挟む■ プロローグ
むかしむかし偉大な錬金術師は、とても偉大な物質を造り出した。
それは卑金属を金属へと変え、
あらゆる魔術を授け、
不老不死の力を与えるだろう。
その物質の名は────
少女はただひたすらに暗い森の中を走っていた。
わずかな月明かりにしか照らされていない道とも言えない道をひたすらに走り続けた。
止まってしまえば、奴らに捕まってしまう。そんなのはごめんだ。けれど、走れども走れども、奴らの追ってくる気配が消えることはない。
「……っ、どこまで……っ、ついてくるのよ……!!」
そう吐き捨てるように言い放つと、少女は急ブレーキを掛け、腰に差していた剣を抜いた。
戦うことを目的としないような装飾が施された剣だ。刀身部分はまるで包丁のような形をしており、鍔の部分から蔦のような金の曲線が何本も絡み付いている。
柄の先には蒼く丸い宝石が埋め込まれていて、そこからさらに小さく短い鎖で、小さな赤い鉱石のようなものがぶら下げられていた。
少女はすう、と一度深呼吸をし、刀身に手を当てながら精神を集中させる。すると、赤い鉱石がポウ、と光を帯び始めた。
『……炎よ、我が呼び声に応えよ』
鉱石に帯びた光は、鎖を伝い、次第に剣そのものが赤く染まっていく。
『貴方が燃やすのは木々ではない。貴方が焦がすのは大地ではない』
少女が言葉を発するたび、剣の輝きはどんどん強くなっていった。
『貴方が消し炭にするのは、我の道を阻むもの!』
轟々とした音を立てて、少女を中心に囲う壁のように何本もの火の柱が立ち上る。
『行きなさい! 《ファイアウォール》!!』
彼女の呪文を合図に、火の柱達はそれぞれ違う方向へと向かっていった。
火の柱達は、木も、大地も燃やさずひたすら直進していく。途中何か「ギッ」という金切り声のようなものが聞こえた。感覚を研ぎ澄ます。方角は──
それを少しの間だけ見届けると、声がした方と反対方向へ少女はまた走り始めた。
(今のでどれくらい足止めできるかしら……? 下手すると居場所がバレたわね……)
この森に入ってから二日、少女は走り続けていた。ろくに食事も睡眠もとっておらず、体はもう限界に近い。
(地図によると、もうすぐ町があるはず……。夜明けまでには近くまで行かないと……)
もう、先程のような魔術を使う気力も残っていない。今奴らに見つかれば一貫の終わりだ。
少女はへこたれそうな体に鞭を打ちながら、ひたすら走り続けた。
森の黒い木々は次第にまばらになっていき、空が白み始めていた。
夜明けはもう、近かった。
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