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大切なもの

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 ぼくが助けた二人は、あの後すぐに目を覚ました。最初は、不思議そうにしていたけれど、ぼくが助けてこの避難所に運んだことを話すと、疑いの眼差しを向けられた。

 それはそうか、同じ年位なのに、あの重たい瓦礫をどけて、子供二人抱えて歩くなんて、普通に考えて無理だろう。ぼくが聞いてもあり得ないって思う。

 悔しいけど、世のなかなんてそんなもんだよねって落ち込んでいたら、弟の方にぽんぽんって慰められた。

 そうそう、2人は想像通り姉弟であっていた。

 そして先日の件で、2人の両親は亡くなっていることが判明した。

 だから、ぼくが2人を守ることに決めた。ぼくが助けたのだから無理やり言い込めた。



 この世界には魔法というものがあった。なのでまず土魔法と誤魔化して、「神力」でこじんまりとした家を建てた。やはり、何もないところで寝るのは、今のこの環境だと不安でストレスが溜まる。

 でも失敗した。

 それを見た周りの人に同じものを頼まれたけれど、プレハブのような簡易盤にしてもらった。というのも、その方が数が作れるので、沢山の人が建物の中で生活できるようになる。

 それに余り目立ちたくない。目立つということは、悪い奴ら等に目を付けられということ。

 これで住むところは出来たので、次に生活する上で必要となる食べ物とお金だ。


 あの巨大生物は『土竜』という魔物で、戦っていた人たちは『冒険者』であることを知った。それを聞いたぼくは、『冒険者』になることにした。


 避難所に出来た仮設の『冒険者ギルド』で登録していると、

 「ついでに、おれもよろしく!」

 と凪が現れた。

 当然ぼくは驚いた。あの扉をくぐった時から、もう二度と会えないと思っていた。

 凪は、右手の人差し指を口にあてたので、話は後でってことだろう。

 手続きが済むと連れだって歩く。

 人のいない丘に来ると、凪がくるりと振り向く。

 「白雪様から頼まれた」

 「えっ???」

 「お前、この世界で生きるつもりだろ」

 「・・・・・」

 「白雪様はおっしゃってた。彼女は、お前の魂の相手だって。だから惹かれあうのは自然で当たり前のことだって」

 あの時の自分の行動の理由が分かり、ぼくは嬉しいと同時に涙が出た。

 「大丈夫。おれは何時もお前と一緒さ」

 凪は言った。ぼくは自分が思う以上に白雪様を大切に想っていることに気が付いた。

 一度でいい、白雪様のことを「おかあさん」と呼んでみたかった・・・。

 白雪様は、何時もぼくを守ってくれていた。今度は、ぼくが白雪様のために何かしたかったけれど、もうそれは叶わないだろう・・・。
 

 

 
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