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12.哀れなオークと帰宅②
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「もっと強い奴と戦いてェな……はぁ」
荒々しい口調が顔を出す。転生してからは出来るだけ丁寧な口調にしていたが、久々の実戦で無意識に戻ってしまったみたいだ。
こんな口調を五歳児がしていると思うと奇妙で笑える。普段はもう完璧だが、命を懸けた戦闘だとそうはいかない。治すのは……無理そうだった。
「クレイズ様ー。二体も殺すなんて凄いですねー」
「まあ凄いのかもしれないが……単調過ぎてつまらないな。というか……フリルは意外と時間がかかったな」
少し離れた場所にはフリルが殺したオークが倒れている。指が何本も欠けていて、全身がズタズタで血塗れだ。ただ殺すだけなら、あそこまでの惨状にはならないのだが……。
「いやー……オーク憎しの気持ちで戦っていたら、余計に斬り過ぎて時間をかけてしまったんですよー」
「やっぱりか……もうお前はフワフワ侍女じゃないな。血塗れ侍女だ」
「えっ、酷いですよクレイズ様ー。そんな物騒な名前は止めてくださいー」
頬を膨らませて可愛らしく抗議してくる。が、フリルの服には返り血がいくつも付いており、腰に差している細めの剣によって逆に狂気的に見えた。夜の森にこんな女性がいたら、恐怖を覚えることは必至である。
「クレイズーっ! 凄かっ――――ぶふぅっ」
いつもの如く兄が抱き着こうと走って来たので寸前で躱す。兄は真後ろにある樹にぶつかった。何とも間抜けな事だ。
「いててて……酷いじゃないかクレイズっ!」
「すみません。つい反射的に避けてしまいました。あまりにも……兄様の顔が気持ち悪かったので」
「気持ち悪い……!?」
俺の淡白な言葉に兄は衝撃を受けたようで仰け反った。大袈裟すぎると俺は思うのだが、兄にとっては違うのだろうか。兄やフリルといった変態の思うことは良く分からないものだ。
「……でもクレイズはまだ五歳なのにオークを二体も倒すのは凄いよ。しかも、魔術じゃなくて剣でなんてさ」
「……ありがとうございます」
……兄の情緒が良く分からない。気持ち悪い事をしたと思ったら、次は理想的な兄の言動をする。もちろん俺も一人の人間なので褒められて嬉しいのだが……なんか複雑な気分だった。
「あっ、照れた! クレイズが照れた!」
「ちっ」
さっきまでの気持ちを返せ。やっぱり兄は変態で面倒だ。ひっきりなしに兄が俺の頭を撫でているのがウザい。鳩尾に拳でも入れてやろうか。
「おっと、これ以上やったらクレイズに嫌われそうだから止めよっと。よし……張り切って次に行こう!」
どうやら兄は俺の沸点も理解しているらしい。人が変わったかのように、だらしないものから真剣なものへ表情を切り替え、一人で歩いて行った。
なんとも掴みどころがない兄だ。
***
あの後、ゴブリンとオークのはぐれに遭遇して、それぞれを俺とフリルと兄の三人で殺した。
得られたものは、俺はもう八級の魔物では物足りないということと、フリルが想像以上に強かったことと、兄が本当に天才だったということだ。
今まではフリルと手合わせをしていたが、対魔術師の訓練として兄と手合わせをするのもいいかもしれない。変態なのは置いといて、兄が魔術の天才なのは明らかなのだ。使わない手はなかった。
「――という感じでした」
「本当……凄いわねローウェンとクレイズは」
夕食の場にて、俺が今日の出来事を話すと母は感心したように呟く。話の節々で兄が俺を自慢げに語っているのが邪魔だったが、母と父は優しげな顔をして静かに聞いていた。流石は俺が尊敬する両親である。兄の奇行を意に介していない。
父と母が特に反応したのは俺の事についてだった。やはり、剣を使った戦闘は珍しいので、興味が引かれたのだろう。
父に褒められた。母にも褒められた。ついでに兄にも褒められた。良い事であり嬉しい事でもある。
ただ……俺は不満だった。体の中に燻っている何かが渦巻いていた。
……物足りない。
もっと強い相手と戦いたい。生死の狭間を彷徨うような攻防を繰り広げたい。目の前の戦闘に没頭してそれ以外に意識が向かないような……血が滾る戦闘をしたい。
自分の実力も、戦闘経験も。
俺は全てが不満だった。
剣に魅せられ、剣に狂い、剣に捧げる。
まだまだ俺の道は長い。
まだ……俺は乾いていた。
荒々しい口調が顔を出す。転生してからは出来るだけ丁寧な口調にしていたが、久々の実戦で無意識に戻ってしまったみたいだ。
こんな口調を五歳児がしていると思うと奇妙で笑える。普段はもう完璧だが、命を懸けた戦闘だとそうはいかない。治すのは……無理そうだった。
「クレイズ様ー。二体も殺すなんて凄いですねー」
「まあ凄いのかもしれないが……単調過ぎてつまらないな。というか……フリルは意外と時間がかかったな」
少し離れた場所にはフリルが殺したオークが倒れている。指が何本も欠けていて、全身がズタズタで血塗れだ。ただ殺すだけなら、あそこまでの惨状にはならないのだが……。
「いやー……オーク憎しの気持ちで戦っていたら、余計に斬り過ぎて時間をかけてしまったんですよー」
「やっぱりか……もうお前はフワフワ侍女じゃないな。血塗れ侍女だ」
「えっ、酷いですよクレイズ様ー。そんな物騒な名前は止めてくださいー」
頬を膨らませて可愛らしく抗議してくる。が、フリルの服には返り血がいくつも付いており、腰に差している細めの剣によって逆に狂気的に見えた。夜の森にこんな女性がいたら、恐怖を覚えることは必至である。
「クレイズーっ! 凄かっ――――ぶふぅっ」
いつもの如く兄が抱き着こうと走って来たので寸前で躱す。兄は真後ろにある樹にぶつかった。何とも間抜けな事だ。
「いててて……酷いじゃないかクレイズっ!」
「すみません。つい反射的に避けてしまいました。あまりにも……兄様の顔が気持ち悪かったので」
「気持ち悪い……!?」
俺の淡白な言葉に兄は衝撃を受けたようで仰け反った。大袈裟すぎると俺は思うのだが、兄にとっては違うのだろうか。兄やフリルといった変態の思うことは良く分からないものだ。
「……でもクレイズはまだ五歳なのにオークを二体も倒すのは凄いよ。しかも、魔術じゃなくて剣でなんてさ」
「……ありがとうございます」
……兄の情緒が良く分からない。気持ち悪い事をしたと思ったら、次は理想的な兄の言動をする。もちろん俺も一人の人間なので褒められて嬉しいのだが……なんか複雑な気分だった。
「あっ、照れた! クレイズが照れた!」
「ちっ」
さっきまでの気持ちを返せ。やっぱり兄は変態で面倒だ。ひっきりなしに兄が俺の頭を撫でているのがウザい。鳩尾に拳でも入れてやろうか。
「おっと、これ以上やったらクレイズに嫌われそうだから止めよっと。よし……張り切って次に行こう!」
どうやら兄は俺の沸点も理解しているらしい。人が変わったかのように、だらしないものから真剣なものへ表情を切り替え、一人で歩いて行った。
なんとも掴みどころがない兄だ。
***
あの後、ゴブリンとオークのはぐれに遭遇して、それぞれを俺とフリルと兄の三人で殺した。
得られたものは、俺はもう八級の魔物では物足りないということと、フリルが想像以上に強かったことと、兄が本当に天才だったということだ。
今まではフリルと手合わせをしていたが、対魔術師の訓練として兄と手合わせをするのもいいかもしれない。変態なのは置いといて、兄が魔術の天才なのは明らかなのだ。使わない手はなかった。
「――という感じでした」
「本当……凄いわねローウェンとクレイズは」
夕食の場にて、俺が今日の出来事を話すと母は感心したように呟く。話の節々で兄が俺を自慢げに語っているのが邪魔だったが、母と父は優しげな顔をして静かに聞いていた。流石は俺が尊敬する両親である。兄の奇行を意に介していない。
父と母が特に反応したのは俺の事についてだった。やはり、剣を使った戦闘は珍しいので、興味が引かれたのだろう。
父に褒められた。母にも褒められた。ついでに兄にも褒められた。良い事であり嬉しい事でもある。
ただ……俺は不満だった。体の中に燻っている何かが渦巻いていた。
……物足りない。
もっと強い相手と戦いたい。生死の狭間を彷徨うような攻防を繰り広げたい。目の前の戦闘に没頭してそれ以外に意識が向かないような……血が滾る戦闘をしたい。
自分の実力も、戦闘経験も。
俺は全てが不満だった。
剣に魅せられ、剣に狂い、剣に捧げる。
まだまだ俺の道は長い。
まだ……俺は乾いていた。
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