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第一章 暗殺者に手を

1.ハッピーエンド主義

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 ハッピーエンド以外受け付けなくなったのは何時からだっただろうか。

 母が病気で亡くなった頃だろうか、それとも父が交通事故で亡くなった頃だろうか。いや、親戚をたらい回しにされた頃だったかもしれない。

 切っ掛けは分からないが、何時しかハッピーエンド以外受け付けなくなってしまった。現実は当然で物語でもハッピーエンド以外無理だった。

 だから、道路に飛び出した小さな子を庇って車に轢かれたのは当然の帰結だったかもしれない。薄れゆく意識の中、父と同じ死亡理由だなと笑ったのは我ながら自分らしいと思った。

 これで自分のしょうもない人生は終わり。

 そう思った。

 しかし、何の因果か不明だが異世界に転生していた。王国の少し田舎にある侯爵家嫡男、レオ・ヴァルフルトとして転生していたのだ。

 初めは混乱した。
 だが、月日が経つにつれて転生したことを受け入れて新たな人生を楽しもうと考えた。

 そして今世では手の届く限り不幸を打ち砕こう。

 だって自分はハッピーエンド主義者なのだから。
 
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