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第一章 暗殺者に手を
14.予想外の接敵
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≪身体強化≫によって向上した身体能力と、足場として使用する≪盾≫によってレオとカエデは屋敷の屋根へ辿り着いていた。
「侵入経路は大丈夫そう?」
「ああ、確認済みだ」
「了解。じゃあ合図を送るよ」
全ての用意が整ったのでレオは真上に向かって≪魔弾≫を発射した。
光量と大きさに魔力を込めた≪魔弾≫は一直線に天を駆けあがる。
その瞬間、屋敷の敷地の入り口付近、つまり例の無駄に豪華な銅像や噴水がある場所に一筋の雷が落ちた。
ゲルラリオの仕業である。
レオがその方向を目を凝らして見ると、祖父ゲルラリオが獰猛に笑っているのが確認できた。
「おーぞろぞろと出てきた」
騒ぎに気が付いた屋敷に常駐している騎士がぞろぞろと広場に姿を現す。
何かをゲルラリオ叫んでいるが、当のゲルラリオは全く取り合う様子はない。遂にしびれを切らした騎士が侵入者を排除しようと飛び掛かった。
が、ゲルラリオから飛び出した雷が襲い掛かっていく騎士を蹂躙する。
剣を抜くことなく、雷の魔法だけで騎士たちを下していった。
この結果は、ゲルラリオが強いという要因も勿論あるが、それよりこの屋敷の騎士たちが弱すぎる。
一か月ほど前から本格的に鍛錬を始めたレオであっても余裕で勝てそうだ。
「あの騎士たち弱くない?」
あまりの弱さに思わずレオは呟く。
「だから言っただろう。屋敷を守っている騎士は男爵のお気に入りだけだ」
「あー…だから必然的に弱い騎士が多くなるのね」
「そうだ。反対に真面目である程度の実力を持った騎士は、街の警備や街の外の治安維持に駆り出されている」
自分に都合の良い騎士は傍に置き、都合の悪い騎士は外へ追い払う。
そうしていった結果が、目の前の惨状なのだろう。
戦闘開始されて僅か一分。
戦場である広場に立っているのはゲルラリオただ一人であった。
「ん?」
ぞくり。
レオは反射的にカエデを押し倒して転がった。
瞬間、頭上を一筋の剣閃が走る。
「んーー?外したかー…僕の腕が狂ったのかなぁ」
暗闇から聞こえてくるのんびりとした声。
レオはすぐに立ち上がってカエデを後ろに隠し、胸の前に限界まで魔力をつぎ込んだ小さな≪盾≫を発動。
「シ――ッ!」
同時に、暗闇から淡く光る剣が一直線に走り、≪盾≫に衝突した。
「くっ…!」
運がよかった。
奇跡だった。
後少しでも強度が低かったら、後少しでも場所がずれていたら、レオは体に穴を空けていただろう。
しかし、全てのタイミングが重なって、電撃のように放たれた突きは≪盾≫にひびを入れる結果に終わった。
「わーびっくり…これも防ぐのかぁ」
淡く光る剣を手にゆっくり歩いてくる男。レオは目の前の男から発せられる圧によって額に冷や汗が溜る。
「カエデ、先に行って」
「なにを――っ!」
「行って」
何時もの余裕のある声と違い、淡々と振り返らずに言うレオ。
カエデは何か言おうとしたが、この状況で何を言うのだと自分に怒りを覚えた。
「武運を祈る」
ただ一言だけ言い残し、カエデは屋根から姿を消した。
「あー…行っちゃった…でもまぁ僕の仕事は侵入者の排除だし…別にいいよね」
ぶつぶつと一人喋る男。
「じゃあ…早く死んでね」
ゆらりと男が剣を動かした瞬間、
「悪いけど死んだら説教されるから無理だよ」
男の体に淡く光る糸が絡みついた。
「侵入経路は大丈夫そう?」
「ああ、確認済みだ」
「了解。じゃあ合図を送るよ」
全ての用意が整ったのでレオは真上に向かって≪魔弾≫を発射した。
光量と大きさに魔力を込めた≪魔弾≫は一直線に天を駆けあがる。
その瞬間、屋敷の敷地の入り口付近、つまり例の無駄に豪華な銅像や噴水がある場所に一筋の雷が落ちた。
ゲルラリオの仕業である。
レオがその方向を目を凝らして見ると、祖父ゲルラリオが獰猛に笑っているのが確認できた。
「おーぞろぞろと出てきた」
騒ぎに気が付いた屋敷に常駐している騎士がぞろぞろと広場に姿を現す。
何かをゲルラリオ叫んでいるが、当のゲルラリオは全く取り合う様子はない。遂にしびれを切らした騎士が侵入者を排除しようと飛び掛かった。
が、ゲルラリオから飛び出した雷が襲い掛かっていく騎士を蹂躙する。
剣を抜くことなく、雷の魔法だけで騎士たちを下していった。
この結果は、ゲルラリオが強いという要因も勿論あるが、それよりこの屋敷の騎士たちが弱すぎる。
一か月ほど前から本格的に鍛錬を始めたレオであっても余裕で勝てそうだ。
「あの騎士たち弱くない?」
あまりの弱さに思わずレオは呟く。
「だから言っただろう。屋敷を守っている騎士は男爵のお気に入りだけだ」
「あー…だから必然的に弱い騎士が多くなるのね」
「そうだ。反対に真面目である程度の実力を持った騎士は、街の警備や街の外の治安維持に駆り出されている」
自分に都合の良い騎士は傍に置き、都合の悪い騎士は外へ追い払う。
そうしていった結果が、目の前の惨状なのだろう。
戦闘開始されて僅か一分。
戦場である広場に立っているのはゲルラリオただ一人であった。
「ん?」
ぞくり。
レオは反射的にカエデを押し倒して転がった。
瞬間、頭上を一筋の剣閃が走る。
「んーー?外したかー…僕の腕が狂ったのかなぁ」
暗闇から聞こえてくるのんびりとした声。
レオはすぐに立ち上がってカエデを後ろに隠し、胸の前に限界まで魔力をつぎ込んだ小さな≪盾≫を発動。
「シ――ッ!」
同時に、暗闇から淡く光る剣が一直線に走り、≪盾≫に衝突した。
「くっ…!」
運がよかった。
奇跡だった。
後少しでも強度が低かったら、後少しでも場所がずれていたら、レオは体に穴を空けていただろう。
しかし、全てのタイミングが重なって、電撃のように放たれた突きは≪盾≫にひびを入れる結果に終わった。
「わーびっくり…これも防ぐのかぁ」
淡く光る剣を手にゆっくり歩いてくる男。レオは目の前の男から発せられる圧によって額に冷や汗が溜る。
「カエデ、先に行って」
「なにを――っ!」
「行って」
何時もの余裕のある声と違い、淡々と振り返らずに言うレオ。
カエデは何か言おうとしたが、この状況で何を言うのだと自分に怒りを覚えた。
「武運を祈る」
ただ一言だけ言い残し、カエデは屋根から姿を消した。
「あー…行っちゃった…でもまぁ僕の仕事は侵入者の排除だし…別にいいよね」
ぶつぶつと一人喋る男。
「じゃあ…早く死んでね」
ゆらりと男が剣を動かした瞬間、
「悪いけど死んだら説教されるから無理だよ」
男の体に淡く光る糸が絡みついた。
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