タイム・ラブ

KMT

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第二章「安心する日常」

第14話「初登校」

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「なぁ、金曜日のプチクラ山で爆発音が聞こえたって知ってるか?」
「え?」

時刻は午前11時41分。満と裕介、広樹、綾葉、美咲の五人は、学校の食堂で早めの昼食を食べていた。今日は始業式で授業はいつもより早めに終わった。満は弁当を持ってきておらず、食堂も寄る予定はなく家に帰るつもりだったのだが、裕介達に話があると連れていかれ、今に至る。

「ほら、あの日俺達プチクラ山に行ったろ?写生の宿題しに行って。んで、俺達が帰った後、なんか知らねぇけど何かが爆発する音が聞こえたんだとよ。プチクラ山の入り口付近に住んでる人達の中で噂になってるらしいぜ」
「ふーん。私は聞こえなかったけどね。美咲は?」
「私も聞いてない...」
「俺も聞いてねぇなぁ。山から出て30分後にはもう家にいて漫画読んでたし」

三人は爆発音に関しては知らないらしい。

「まぁ、俺も聞いたわけじゃねぇんだけどな...」

裕介も三人と一緒のタイミングで帰ったため、その爆発音は聞いているはずがない。しかし、あの時四人とは一緒には帰らず、一人だけあの場に残り、今も目をそらして会話に入ろうとしない男がいた。

「そうだ!おい、満!お前あの時一人でプチクラ山に残っただろ?なんか知らねぇか?」
「え?」

満には爆発音に関して核心的な心当たりがあった。それで話に入ろうとしなかったのだ。そう、その爆発音こそ、神野家のタイムマシンが爆発した音に違いない。あの時、満はその場に居合わせていたのだ。爆風から真紀を庇うという離れ業まで決めた。だが未来人やタイムマシンのことについては口に出すのは厳禁。うまくごまかさなければ。

「えっと...僕も写生の下書きだけ終えたらとっとと帰ったけど、爆発音なんて聞こえなかったよ?だから僕にはよくわからないなぁ~」
「ん~?ほんとか~?怪しいなぁ~」

満に顔をスレスレに近づけて睨み付ける裕介。満の顔には冷や汗が垂れる。

「ほ、ほんとだよ...。もし本当に爆発音が鳴ってたとしても、多分僕が帰った後だよ...」
「ん~~~~~?」

近づけた顔を離さない裕介。だが、本気で疑っているわけではない。いつものおふざけだ。

...おそらく。

「こーら!裕介、純粋無垢な満君を疑ってるわけ~?」
「いじめ、カッコ悪い」
「違ぇよ!まぁ、ただの噂たろうけどよ...」

女子チームのフォローもあり、なんとかうまく話を流すことができた。もう完全に怪しまれてはいない。だが、タイムマシンの爆発音は確かに強烈だった。こうやって他の過去の人間にまで聞こえていた。満以外の人間に見つからなかったのは本当に奇跡としか言いようがない。

“これは、まだコソコソとしてなくちゃいけないな...真紀達は...”

裕介達は想像もしないだろう。まさか満が爆発音の秘密を握っている未来人を自宅にかくまっているとは。自分も他の人に知られないように、真紀達の存在をしっかりと隠さなくては。満は心の中で思った。

「ん?満、どうした?」
「いや、なんでもないよ」



   * * * * * * *



裕介君達と別れ、僕は一人で下校路を歩いて帰る。30分程で家に着く。

ガチャッ

「ただいま~」

玄関のドアを開けると、風呂場の方から足音が聞こえてきた。

ダダダダダ

「咲有里さん!あ、満君お帰りなさい。それより咲有里さん!次は何をすれば!?」

愛さんだ。さっきまで風呂場の掃除をしていたらしい。両手にスポンジと洗剤を持っている。それにしてもなんかノリノリだな...。

「掃除はちょっとお休みして、お昼ご飯にしましょうか」
「わーい!」

あ、そういえば学校の食堂で食べてきたこと言ってないや...。まぁいいか。お腹いっぱいだけど我慢して食べよう。

「あら?そういえばアレイさんは...」
「あ~、パパはどっかで食べてきてもらうからいいよ。私達だけで食べましょ!それより咲有里さん、何作るの~?」
「そうね~」

真紀がとっても楽しそうにしている。コソコソして生きていくとはいったものの、そんなに苦しいものではないのかもしれない。すでに真紀達、未来人はこの日常に当たり前のように溶け込んでいる。身構える必要はないか。



お父さんが亡くなっても、この家は不思議と変わらず賑やかだ。





お昼ご飯のミートボールスープを頬張りながら女性陣はダベる。

「いいですよね~。咲有里さんは私より料理が得意で。すごい才能ですよ」
「そんな~」
「ほんとだよ。ママの料理すっこぐまずいんd ぶふぉあっ!」

愛さんの拳がまたもや真紀の腹にめり込む。食べた物が口から出てこないか心配だ。

「料理はうまい下手じゃないですよ~」

その光景を見なかったかのようにスルーし、話の続きをするお母さんもお母さんだ。

「さ、さ...すが...。い...いこと...言いま...すね...」

真紀、お腹を押さえながら無理してしゃべらなくてもいいんだよ。

「それに...咲有里さんは他にも立派なモノをお持ちじゃないですか...。主に胸のあたりに」

愛さん、胸のあたりって...答え言っちゃってるよ。女の人ってやっぱりそこ気にするのかな?

「えっ.../// えっと...大きくてもいいことないですよ?肩凝りますし...」

頬を赤らめるお母さん。近所の住人と話してると毎回そのことを指摘されるんだよね。それなのにまだ慣れていないらしい。

「おまけに美人とくるわ。あ~もう...。同じ歳でこの差は一体何なのよ~」
「はぁ...」

お母さんは反応に困っている。そりゃそうだろう。でも...

「愛さんも美人だと思いますけど...」
「え?」
「あっ...」

まずい。思ったことがつい口に出てしまった。急に口を開いたと思えばこんなことを言ってしまうなんて、絶対変に思われるよ...。

「あ、ありがとう...満君」
「いえ...」

心の中で必死に謝罪する。変なこと言ってしまってすみません、愛さん。

「...」

何やら視線を感じる。





だいぶお腹の調子が戻ってきた。それよりも、どうしたのかしら?満君。確かにママはブサイクってわけじゃないけど、急に美人だなんて...。もしかしたらママのこと好きなの!?ダメよ。ママにはパパがいるんだから!



って...まさかね。そんなことないよね。



ん?なんで私さっきから焦ってるのかしら?

「そうだ真紀ちゃん。真紀ちゃんはどこの学校に通ってるの?」
「え?」

唐突に咲有里さんが質問をしてきた。しかも学校ですって!?私、この時代の学校なんて通ってないわよ!?

「えっと、その...」

ママと満君も何と言えばいいのか困っている。そういえば、私達が未来人だって知ってるのは満君だけで、咲有里さんは知らないんだった。あぁ、面倒くさい。

「あ、引っ越してきたってことは、別の学校に行くことになるのかな?どこに通うの?」

確かに、いつまでも家にいたら不自然よね。私は未来人だけど、見た目は完全にこの時代の普通の高校生と変わりないのだから、普通なら学校に通わなくてはいけない。どうしよう...なんてごまかせば...。

「え、えっと、満君と同じところです!」
「はっ!?」
「えっ!?」

ママと満君が驚愕する。そりゃそうでしょうね。

「今は手続きの最中なので今日は行かなかったんですけど、手続きが終わったら満君と同じ高校に通う予定です!」
「ちょっと真紀...」

ママが止めに入るべきかどうか迷っている。自分でも自分が何を言っているのかわからない。でもなんとかごまかさなくては。

「あらそうなの~?よかったわね~満♪」
「え?あ、そ、そうだね~」

私は目線で「ごめんね♪」というメッセージを送信する。ほんとにごめんね。





真紀は目線で「ごめんね♪」というメッセージを僕に送信してきた。いや、メッセージの送り先を間違えてるよ。僕じゃなくて、君のお母さんだよ。隣で髪を逆立てて君を睨み付けている君のお母さんだよ。



「真紀...あんたねぇ...」
「すみません...」

愛さんとアレイさんが寝室として利用している物置部屋で僕は愛さんと真紀の三人で密談している。

「もっと他にごまかし方があったでしょう...なんであんな嘘つくのよ...」
「でも、これ以上怪しまれないためにはやっぱり学校に行かないと...」
「はぁ...満君」
「はい?」
「サポート、お願いできる?」



時間は巡って翌日。朝ご飯を終えた僕と真紀は通学の準備に取りかかる。とはいえ、真紀は教科書も制服も持っていないため、何も用意することはないのだが。僕は制服に着替え、教科書を学校鞄に入れて部屋を出る。

「それじゃあ、お母さん。行ってきます」
「あら、真紀ちゃんも行くの?」
「は、はい。意外と手続きが早く終わって...。もう今日から行くんです!」
「そうなの。満、真紀ちゃんに色々教えてあげてね」
「あ、うん...」

つい昨日まで手続きの最中と言い、曖昧にしていたのが今日いきなり終わったと告げ、あからさまに怪しいのだが、全く怪しまないお母さん。騙されやすくて本当に心配になる。

「満君、真紀のこと、よろしくね...」
「はい...」

よろしく、というのは学校の面で色々サポートをしてくれということもあるが、真紀が暴走しないように見張っててくれという意味でもある。

「あれ?そういえば真紀ちゃん制服...」
「それじゃあ行ってきまぁぁぁぁす!!」

真紀が大きな声でお母さんを遮る。珍しくお母さんが怪しい点に気がつくが、とにかく出発だ。

ガチャッ

「真紀、大丈夫かしら...」
「まぁ、満君もいるし。それに、やっぱり学校に行かないと怪しまれるからね...」

アレイさんは朝ご飯の片付けに戻る咲有里さんを眺めながら言う。





「いや~、危ない危ない。それで?満君の学校はどこ?」
「とりあえず、僕に着いてきて」

僕は真紀を連れて人通りの少ない通学路を歩く。いつもとは違う道を。普段は裕介君達と一緒に登校するけど、真紀と一緒にいるところを見たら怪しまれる。なので、いつもとは別の道を行き、見つからないように進む。

「真紀の方はどうするの?手続きなんて言ってたけど、本当はそんなのしてないんでしょ?」
「まぁこれがあるから、大丈夫よ♪」

真紀はメモリーキューブを見せびらかす。全く便利なことだ。

そうこうする内に、学校へ着く。周りの生徒達は案の定、見知らぬ女の子が堂々と正門から学校の敷地内へ入るので、その光景に見入っている。その隣には僕。みんなが見つめているのは真紀のはずだが、僕は恥ずかしくなる。

「すごく見られてる...」
「いや~、人気者になった気分ね♪」
「もう、能天気なんだから...」

さてと、まずは真紀の制服を用意しなくては。制服さえ着ればまず怪しまれることはない。だが、もちろん僕は女子の制服なんて持っているはずがない。だがあそこに行けばおそらく...。



「暇だな...。でも、暇なのはいいことか。怪我をした生徒がいないってことだし」

保健室で独り言を呟く養護教諭の奥野智子(おくの さとこ)先生。本来は怪我をした生徒の介抱をする場である保健室だが、大半は授業をサボる生徒達の溜まり場になっている。サボるのは良くないが...。その保健室の開いた入り口から顔を覗かせる僕と真紀。保健室の奥にある衣服の入った棚を睨み付ける。

「んで。あの棚の中にあるのね?制服」
「うん。おそらく」

前に体育の授業で長距離走があり、裕介君達と走っていた時、うっかり転んで膝を擦りむいてしまい、保健室のお世話になったことがあった。奥野先生に消毒をしてもらっている最中にふと棚の方を見ると、カッターシャツの入った棚が開いていた。あれは男女共通で着ている夏服だ。奥野先生に聞いてみると、生徒が汚してしまった時などのための代えの制服ということらしい。ということは上だけでなく、男子用のズボンや女子用のスカートなども予備が用意されているかもしれない。

「とにかく、奥野先生にその代えの制服を貸してもらって...」
「でもさ、私の制服だよ?つまり女子の制服だよ?男子の満君が女子の制服の代えを用意してって頼むのは変に思われない?」
「確かに...」
「まぁ、女装用とか言えばいいか!満君、女装似合いそうだし♪」
「えっ?もう...///」

こんな時まで冗談はやめてほしい。だが、僕が頼みに行けないのも事実。しかし、だからと言って真紀が頼みに行くのも心配だ。「あなた誰?ここの学校の生徒じゃないわよね?」と言われかねない。奥野先生は養護教諭だから、生徒達との交流もかなり深い。もしかしたら生徒達の顔や名前を覚えているかもしれない。

「どうしよう...」
「私に任せて!」

そう言って真紀は、抜き足差し足忍び足で保健室に侵入した。

「ちょっと!真紀...」

いきなりでびっくりしたが、気づかれてはいないようだ。奥野先生は窓から外の景色を見ており、後ろの真紀の様子は見えてはいない。あと4メートルで棚に手が届く。

「ん?あなた!誰!?」

突然奥野先生が振り向いた。真紀は見つかった。

「あなた、ここの学校の生徒じゃないわよね?」

案の定、生徒の顔はほとんど把握しており、校外者であることまでバレた。

「えっと...怪しい者ではないですよ。えいっ!」

シュッ
真紀は奥野先生の頭上にメモリーキューブを投げつけた。メモリーキューブは黄色い光を放って奥野先生を包む。

「な、なにこれ!?はっ!」

奥野先生は光に包まれながら呆然と立ちすくむ。

「今よ!」

僕と真紀は棚に向かって走る。僕は「カッターシャツ 」と書かれた紙が貼ってある棚を開け、カッターシャツと、その上に着るベストを取り出す。「女子用リボン」と書かれた棚からも、女子が制服に身に付けているリボンを取り出す。真紀は「スカート 夏用」と書かれた棚から夏用の薄生地のスカートを引っ張り出す。必要なものをすべて揃え、僕らは保健室から退散する。メモリーキューブは真紀の手元へ戻っていき、僕らは入り口の扉をピシャッと閉め、沈黙の中へ奥野先生を置き去りにする。

「...はっ!私は...何を...」

奥野先生は僕らを見たという記憶を失っていた。



「じゃあ、着替え終わるまで待っててね」
「うん」
「覗かないでよね?」
「覗かないよ!わざわざ女子トイレに入って覗くやつなんていないよ!」
「冗談よ♪」

そう言って真紀は女子トイレに入っていった。これから保健室の棚から強奪した制服に着替えるのだ。それにしても、今のが冗談なら覗いていいということになるのだが...。

いや、覗く気など全くもって無い。僕は変態じゃない。だが、女子トイレの近くでず~っとたたずむ僕を、道行く生徒達は怪しげな目でみてくる。違うんです。覗くつもりなんて無いんです。着替えてる友達を待ってるんです。

周囲の視線に絶えながら真紀の着替えを待つこと20分(女の子は着替えにすごく時間がかかるのだ)。真紀が出てきた。

「じゃ~ん♪似合ってる?」

僕の通っている学校の女子制服を身に付けた真紀。純白のカッターシャツの上にクリーム色のスクールベストとピンク色のリボン、紺色のプリーツスカートを履き、完全にこの学校の生徒に変身した。正直、すごく可愛い。

「あ、うん。似合ってるよ」
「ふふ♪ありがと」
「だいぶ着替えに時間がかかったみたいだけど?」
「未来の学校の制服とは違う感じだったからね~。どう着ればいいか戸惑っちゃって...」

なるほど。それも時間がかかった理由か。着方を教えてあげられたらいいのだが、生憎自分は男子なので女子の制服の着方などわからない。未来の学校の制服か...一度見てみたいな。

「それにしてもこの学校のスカート、かなり短いわね。これじゃあ風でも吹いたら見えちゃうわね~♪」

真紀は短いスカートの端をつまんでひらひらさせる。わざと下着を見えやすくしてくる。またこれか。

「もう!やめてよ...///」

一体いつから真紀はからかい好きになってしまったのだろうか。何度も僕の理性を揺さぶってくる。調子狂うなぁ...。

「ほら、行くよ」
「は~い♪」



またもや教室の入り口から中を覗く僕ら。制服を着ているとはいえ、クラスメイトのみんなにとっては見ず知らずの子だ。いきなり入れるわけにはいかない。

「遅いな~満」
「もうすぐ朝のホームルーム始まるのに...。満君が遅刻って珍しいわね」

裕介君達だ。もう登校しているらしい。どうやって入ろう...。そして、真紀のことどうやって説明したら...。

「みんな席につきな~。朝のホームルーム始めるよ~」

担任の石井流歌(いしい るか)先生だ。気がつかないうちにもう教壇の前に立っていた。まずい、もう席につかないと。でも真紀をどうしよう...。

「もう一回使うわね。とりあえずこの教室の人達を...」

シュッ
真紀は再びメモリーキューブを投げつけた。この教室にいる人達をいっぺんに洗脳しようというのだ。

「なんだ?」
「なにこれ?」
「ん?」
「お?」

バァーーーン
黄色い光は瞬く間に裕介君を、綾葉ちゃんを、美咲ちゃんを、広樹君を、石井先生を、教室の中にいるみんなを飲み込んだ。

「ああ...」

僕は凄まじい光景をただ呆然と眺める。

メモリーキューブの光が収まった。それと同時にみんなが正気を取り戻す。

「ん?おや、君は例の転校生か。教室に来たくなるのはわかるが、まずは職員室に来てくれるかい。クラスのみんなにネタバレになってしまう」
「は~い」

石井先生が真紀のことを転校生と呼んだ。どうやら教室のみんなには、自分は転校生だという記憶を刷り込んだらしい。このメモリーキューブというのはつくづく便利だなぁ...。



「みんなに朗報だよ。こちら、隣街から引っ越してきた転校生だ。ほら、自己紹介して」
「は~い」

石井先生の隣に立っている真紀はチョークを手に取り、自分の名前を黒板に書いた。

神野真紀

「これがチョークね。初めて見たけど案外使うのは簡単ね」
「ん?何か言ったかい?」
「いえ、なんでも!」

何かこそこそと話している。またわざとボロを出さないか心配になる。真紀は書いた名前を指差す。

「これが私の名前です!なんて読むでしょうか?」

ここでもやるのか。確か、僕と初めて会った時もやったな。初対面の人の前では毎回やると言っていたが、本当なのか。

ザワ...ザワ...

やっぱり。クラスメイトのみんながざわつき始めた。いきなりこんなことしたらびっくりしちゃうよね。

「かみのまき!」

綾葉ちゃんが大きな声で答えた。

「残念!『じんのまき』でした!」
「あちゃ~」

早くも意気投合する二人。やっぱり女の子だ。すぐ仲良くなる。

「というわけで、神野真紀です。みんなよろしくね!」



真紀の制服姿が目に焼き付く。真紀が未来人だということを完全に忘れてしまいそうだ。この時の僕は気づいていたのかもしれない。僕と真紀との境界線が確実に薄れて始めていることに...。



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