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第3話(これは無理です、苦痛です)
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「おはようございます、今日もよろしくお願いします」
「おう、おはよう、リリアーナ」
リリアーナが定刻より大分早く出勤してきた。そんな気がしていた俺も早めに出勤していたので挨拶を返す。
「ああ、あと、リリアーナとして扱うでいいか?」
「あっ、うん……いい、いいです」
何故か握りこぶしを作りながらそう答えてきた。俺は深く考えるのをやめた。
「じゃあ、今日は工房を工程別に案内してくか」
「はい」
リリアーナは、今回白衣を着用している。昨日、帰り際に配給したモノだ。翌日にはちゃんと着て時間前に指定場所に来るなんて、日本人だなと感心してしまう。
「時間的にも、まずはアントリからだな」
「アントリ?」
「アンダートリートメント。語源はチートと王国だよ」
「ああ、下処理ですか。いつの時代も横文字は人気ですね」
身もふたもない突っ込みが心に響く。しかし、その業務内容は地味で大変で重要な薬事局の心臓部になる。おそらくリリアーナもしばらくはここで洗礼を受けることになるだろう。職員ならだれもが通る道だ。
「来週は、ここに缶詰めだろうから頑張れ」
「缶詰めって、噂では聞いてましたが、ほんとうなんですか?」
薬事局も、春の大棚卸しを終え、在庫処分に入る。つまり、大量の薬を作ることになる。地獄が待っているのだ。そして、新人は一番ハードな下処理行きが決まっている。
「まあ、頑張れ。応援してる」
「うわぁ、他人事ですね。まったく心がこもってない」
「だれもが通る道だからな、これを乗り越して、初めて薬事局の職員が名乗れるってもんさ」
「繁忙期……サビ残……」
黒いオーラがリリアーナから漏れてきた。
「大丈夫だ、基本定時だし、緊急時ぐらいだぞ。理不尽なヤツは」
「そう言って、緊急時が日常になって、通常運転とか言い出すんですね、わかります」
怒りゲージが静かに振り切れ始めている。臨時チャーター便ネタはやめておこう。
「残念だが、ここはブラックじゃない。定時で返すさ、返せんなら残業代と特別手当はぶんどってくるぞ」
「はうっ、イェーガさんに、一生ついていきます! どこぞのトンずら上司とは格が違います」
キラキラした眼でこちらを見るリリアーナ。安心しろ、緊急時は疫病の流行や戦争や大災害の発生時だけだ。
そうこう話していると、下処理の作業場に着いた。
「ルムウ、トロワ、いるかー?」
手ごろな……もとい、案内に役立ちそうな職員を呼ぶ。出勤しているのは、出勤ボードで確認済みだ。
「ほーい、あっ、イェーガさんじゃないですか、どうかしたんすか?」
「おう、ラムウ、新人の案内だ。そっちは、検品はすんだのか?」
「終わってますよ、今日で蔵出しが終わるんで、作業が捗りそうですよ」
ラムウはアントリでは大分古株になってきた職員だ。主に倉庫の在庫管理を任されている。
「呼びましたか? ああ、イェーガさん、お疲れ様です。それと……新しい職員さん?」
だぼだぼ白衣に眼鏡、おかっぱの女性が姿を現した。本人曰く、「あざとい」ファッションらしい。メガネは伊達だ。俺には判断がつかないので、コメントは控えている。よくある勇者の故郷を勘違いあるあるだ。
「ちょうど、良かった。二人とも、新人のリリアーナだ。昨日はこっちまでこれなかったから、あいさつ回りだ」
「よろしくお願いします。新人薬師のリリアーナです」
午前中は、ここでリリアーナに選別と加工前の下処理の基礎を学んでもらうことになった。リリアーナは物覚えも要領もいいのですぐに仕事を覚えた。予想通り、アントリの欲しいと強請られたが、うちのエース候補なので、丁重にお断りさせていただいた。
「おう、おはよう、リリアーナ」
リリアーナが定刻より大分早く出勤してきた。そんな気がしていた俺も早めに出勤していたので挨拶を返す。
「ああ、あと、リリアーナとして扱うでいいか?」
「あっ、うん……いい、いいです」
何故か握りこぶしを作りながらそう答えてきた。俺は深く考えるのをやめた。
「じゃあ、今日は工房を工程別に案内してくか」
「はい」
リリアーナは、今回白衣を着用している。昨日、帰り際に配給したモノだ。翌日にはちゃんと着て時間前に指定場所に来るなんて、日本人だなと感心してしまう。
「時間的にも、まずはアントリからだな」
「アントリ?」
「アンダートリートメント。語源はチートと王国だよ」
「ああ、下処理ですか。いつの時代も横文字は人気ですね」
身もふたもない突っ込みが心に響く。しかし、その業務内容は地味で大変で重要な薬事局の心臓部になる。おそらくリリアーナもしばらくはここで洗礼を受けることになるだろう。職員ならだれもが通る道だ。
「来週は、ここに缶詰めだろうから頑張れ」
「缶詰めって、噂では聞いてましたが、ほんとうなんですか?」
薬事局も、春の大棚卸しを終え、在庫処分に入る。つまり、大量の薬を作ることになる。地獄が待っているのだ。そして、新人は一番ハードな下処理行きが決まっている。
「まあ、頑張れ。応援してる」
「うわぁ、他人事ですね。まったく心がこもってない」
「だれもが通る道だからな、これを乗り越して、初めて薬事局の職員が名乗れるってもんさ」
「繁忙期……サビ残……」
黒いオーラがリリアーナから漏れてきた。
「大丈夫だ、基本定時だし、緊急時ぐらいだぞ。理不尽なヤツは」
「そう言って、緊急時が日常になって、通常運転とか言い出すんですね、わかります」
怒りゲージが静かに振り切れ始めている。臨時チャーター便ネタはやめておこう。
「残念だが、ここはブラックじゃない。定時で返すさ、返せんなら残業代と特別手当はぶんどってくるぞ」
「はうっ、イェーガさんに、一生ついていきます! どこぞのトンずら上司とは格が違います」
キラキラした眼でこちらを見るリリアーナ。安心しろ、緊急時は疫病の流行や戦争や大災害の発生時だけだ。
そうこう話していると、下処理の作業場に着いた。
「ルムウ、トロワ、いるかー?」
手ごろな……もとい、案内に役立ちそうな職員を呼ぶ。出勤しているのは、出勤ボードで確認済みだ。
「ほーい、あっ、イェーガさんじゃないですか、どうかしたんすか?」
「おう、ラムウ、新人の案内だ。そっちは、検品はすんだのか?」
「終わってますよ、今日で蔵出しが終わるんで、作業が捗りそうですよ」
ラムウはアントリでは大分古株になってきた職員だ。主に倉庫の在庫管理を任されている。
「呼びましたか? ああ、イェーガさん、お疲れ様です。それと……新しい職員さん?」
だぼだぼ白衣に眼鏡、おかっぱの女性が姿を現した。本人曰く、「あざとい」ファッションらしい。メガネは伊達だ。俺には判断がつかないので、コメントは控えている。よくある勇者の故郷を勘違いあるあるだ。
「ちょうど、良かった。二人とも、新人のリリアーナだ。昨日はこっちまでこれなかったから、あいさつ回りだ」
「よろしくお願いします。新人薬師のリリアーナです」
午前中は、ここでリリアーナに選別と加工前の下処理の基礎を学んでもらうことになった。リリアーナは物覚えも要領もいいのですぐに仕事を覚えた。予想通り、アントリの欲しいと強請られたが、うちのエース候補なので、丁重にお断りさせていただいた。
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