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案の定ユウリは興奮と部屋の探索で疲れてすぐに眠りについてしまった。
私とウィリアムはまだ眠るには少し早いので2人でソファーに座りお酒を嗜む事にした。
するとウィリアムがお酒の力もあったのか話しかけてくる。
「今日、パンケーキを食べた。あれは君が作ったそうだな」
アルバートに口止めしたが無駄だったようだ。
「お口に合いませんでしたか?」
嫌味でも言うのかと思ったがどうやら違うようだ。
「いや、美味しかった」
意外な言葉に驚いた。
「それは良かったです。また公爵家の嫁がそんな事をするなと言われるかと」
「そんな事は...ない」
そう言いながらも少し思ったのか言葉を切る。
「いや、前の私ならそういったかもしれない、でも、その良ければまた食べたいと...思った」
ウィリアムは顔を手で隠すが間から頬が赤らむのが見える。
ユウリが変わっていっているように彼も変わっていっているのだろう。
それなら昼間の事を彼に話してもいいのかもしれないと思った。
私は立ち上がりウィリアムの横に座り彼を見た。
「またいつでも作ります。私はあなたの妻なんですから、ユウリを大切にするようにあなたも大切に思っています」
そう言って大きな手の甲に自分の手を添えた。
ウィリアムはびっくりしながらも、私の顔をみて軽く微笑んだ。
ずっと無表情で感情をあまり出さないウィリアムの笑顔を初めて見た気がした。
「ありがとう」
そう言って私の手を掴み指先に口づけをする。
それには今度は私の方がびっくりしてしまった。
外国なら当たり前の行動かもしれないが私には少し刺激が強かった。
そんな動揺する私にウィリアムはニヤリと笑う。
「最近の君に行動には驚かされてばかりいたが、そういう顔もするんだな」
なぜか嬉しそうに笑い私の髪を掴みまた口付けをする。
なんか体が近くなりいい雰囲気に思わず後ずさる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ウィリアムは面白くなさそうに少しいじけた顔を私に向けてくる。
「そ、そのユウリがいますから」
起きたらと思うと気が気ではない、それに今夜はもっと大事な話をしたかった。
私は息を飲み込みウィリアムに近づくと手を掴んで甲を見つめる。
すると右手の甲にユウリと同じようなたたかれた痕がある事を確認した。
「やっぱり」
私はウィリアムの手の甲の傷跡を優しく撫でる。
「この傷は?」
私がウィリアムの目を見つめるとバツが悪そうに手を引いた。
「なんでもない、子供の頃の傷だ」
ウィリアムの顔がまた無表情になってしまった。
「これはユリベール夫人にやられたのですか?」
家庭教師の名前を出すとウィリアムは何故かとばかりに目を見開く。
「アルバートから聞いたのか!」
私はゆっくりと首を横に振る。
「いえ、今日ユウリにも同じ痕がありました。まさかと思ってユリベール夫人の事を聞いたらあなたの家庭教師でもあったと聞き嫌な予感がしたのです...こんな予感が外れて欲しかったけど...」
ウィリアムはユウリが自分と同じ事をされたと悲しい顔をする。
「これはちゃんとできない私とユウリが悪いんだ」
ウィリアムは辛そうに手を握りしめている。その手は微かに震えているように見えた。
幼少期よりそれが当たり前だったのだ。なかなか否定できるものでもないのかもしれない。
「ユリベール夫人の事は私に任せてもらえませんか?」
私のお願いにウィリアムは視線を背けたまま、ゆっくりと頷いた。
次の日私はユウリの勉強の時間、隣の部屋で待機していた。
ユウリに言うと態度でバレてしまいそうだったので秘密にしてアルバートとアンと共に扉の前に立っている。
私はユウリに何かあったらと思うとじっとしておれず、扉に耳をくっつけて集中して中の音を拾っていた。
「こんな事もわからないのですか! これだから甘やかされてる子は!」
バシッ!
「やっぱり...」
何か叩かれる音に私は扉を勢いよく開いた!
「キャッ!」
するとユリベール夫人はいきなり現れた私達に驚いて声をあげる。
そして私を見るとハッとして手に持っていた物を後ろに隠した。
私はツカツカと近づくとユリベール夫人の前に仁王立ちして手を差し出す。
「今隠したものを出しなさい」
「お、奥様これはなんでもありま...」
「出しなさい」
有無を言わせず睨みつける。
夫人は恐る恐る手に持っていたしなる指し棒のようなものを出した。
「今ユウリをこれで叩いたわね」
「違います! こ、これはしつけです、ユウリ様が言うことを聞かないから...」
夫人がちらっとユウリに目を向けるとユウリは申し訳なさそうに顔を下げた。
「ユウリが何をしたんですか?」
一応内容を聞いてやると説明させる。
「ユウリ様は単語の文字のスペルを間違えました。前にも教えたのに...また」
本当に出来ない子だと呆れるように言うとユウリがさらに小さくなる。
「ちぐはぐな...」
「は、はい?」
夫人は私の言葉に困惑する。
「ちぐはぐな、はい書いてください」
夫人にペンと紙を渡すと、夫人は少し考えながら書き出した。
「つぎ、一時的。異常。有害な、ほら書いて」
わざと難しいスペルの言葉を言うと夫人が書いた紙を見つめる。
「ここ、スペル違いますよね?」
「あっ、ですがこれはユウリ様とは比べ物にならないくらい難しい言葉で...」
「間違えたのですから躾けしなくちゃ」
私は問答無用で夫人の右手の甲に思いっきり、持っていた棒を振り下ろした。
バチンッ!
と乾いた音が部屋に響くと夫人の悲鳴がした。
「きゃあ!」
手の甲を押さえてうずくまっている。
「ひ、酷い! これは暴力です!」
夫人が涙を浮かべながらこちらを睨みつける。
「あなたはこれと同じ事を私の息子にしたのよ...しかもこの子はまだ4歳よ。文字を書けるだけで凄いことなの...わかる?」
どうやら私はこの時かなり切れていたようで後からアンに聞いたら瞳孔が開いてすごく怖かったと言っていた。
そんな私の表情に夫人は青ざめ、視線を逸らす。
「あなたを解雇します。今日までの給与をあげて屋敷から追い出してください」
私は棒を真っ二つに折るとゴミ箱に投げ捨て、夫人に背を向けた。
「ユウリの手を手当てして、もし傷が残ったりでもしたら...」
夫人を再び睨みつけると夫人はわなわなと震えながら立ち上がり、部屋を飛び出して行く。
方向を見るに、ウィリアムの部屋に向かったかもしれない。
「ユウリ、後でお話聞かせてね」
私はユウリに優しく声をかけると夫人の後を追いかけた。
私とウィリアムはまだ眠るには少し早いので2人でソファーに座りお酒を嗜む事にした。
するとウィリアムがお酒の力もあったのか話しかけてくる。
「今日、パンケーキを食べた。あれは君が作ったそうだな」
アルバートに口止めしたが無駄だったようだ。
「お口に合いませんでしたか?」
嫌味でも言うのかと思ったがどうやら違うようだ。
「いや、美味しかった」
意外な言葉に驚いた。
「それは良かったです。また公爵家の嫁がそんな事をするなと言われるかと」
「そんな事は...ない」
そう言いながらも少し思ったのか言葉を切る。
「いや、前の私ならそういったかもしれない、でも、その良ければまた食べたいと...思った」
ウィリアムは顔を手で隠すが間から頬が赤らむのが見える。
ユウリが変わっていっているように彼も変わっていっているのだろう。
それなら昼間の事を彼に話してもいいのかもしれないと思った。
私は立ち上がりウィリアムの横に座り彼を見た。
「またいつでも作ります。私はあなたの妻なんですから、ユウリを大切にするようにあなたも大切に思っています」
そう言って大きな手の甲に自分の手を添えた。
ウィリアムはびっくりしながらも、私の顔をみて軽く微笑んだ。
ずっと無表情で感情をあまり出さないウィリアムの笑顔を初めて見た気がした。
「ありがとう」
そう言って私の手を掴み指先に口づけをする。
それには今度は私の方がびっくりしてしまった。
外国なら当たり前の行動かもしれないが私には少し刺激が強かった。
そんな動揺する私にウィリアムはニヤリと笑う。
「最近の君に行動には驚かされてばかりいたが、そういう顔もするんだな」
なぜか嬉しそうに笑い私の髪を掴みまた口付けをする。
なんか体が近くなりいい雰囲気に思わず後ずさる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ウィリアムは面白くなさそうに少しいじけた顔を私に向けてくる。
「そ、そのユウリがいますから」
起きたらと思うと気が気ではない、それに今夜はもっと大事な話をしたかった。
私は息を飲み込みウィリアムに近づくと手を掴んで甲を見つめる。
すると右手の甲にユウリと同じようなたたかれた痕がある事を確認した。
「やっぱり」
私はウィリアムの手の甲の傷跡を優しく撫でる。
「この傷は?」
私がウィリアムの目を見つめるとバツが悪そうに手を引いた。
「なんでもない、子供の頃の傷だ」
ウィリアムの顔がまた無表情になってしまった。
「これはユリベール夫人にやられたのですか?」
家庭教師の名前を出すとウィリアムは何故かとばかりに目を見開く。
「アルバートから聞いたのか!」
私はゆっくりと首を横に振る。
「いえ、今日ユウリにも同じ痕がありました。まさかと思ってユリベール夫人の事を聞いたらあなたの家庭教師でもあったと聞き嫌な予感がしたのです...こんな予感が外れて欲しかったけど...」
ウィリアムはユウリが自分と同じ事をされたと悲しい顔をする。
「これはちゃんとできない私とユウリが悪いんだ」
ウィリアムは辛そうに手を握りしめている。その手は微かに震えているように見えた。
幼少期よりそれが当たり前だったのだ。なかなか否定できるものでもないのかもしれない。
「ユリベール夫人の事は私に任せてもらえませんか?」
私のお願いにウィリアムは視線を背けたまま、ゆっくりと頷いた。
次の日私はユウリの勉強の時間、隣の部屋で待機していた。
ユウリに言うと態度でバレてしまいそうだったので秘密にしてアルバートとアンと共に扉の前に立っている。
私はユウリに何かあったらと思うとじっとしておれず、扉に耳をくっつけて集中して中の音を拾っていた。
「こんな事もわからないのですか! これだから甘やかされてる子は!」
バシッ!
「やっぱり...」
何か叩かれる音に私は扉を勢いよく開いた!
「キャッ!」
するとユリベール夫人はいきなり現れた私達に驚いて声をあげる。
そして私を見るとハッとして手に持っていた物を後ろに隠した。
私はツカツカと近づくとユリベール夫人の前に仁王立ちして手を差し出す。
「今隠したものを出しなさい」
「お、奥様これはなんでもありま...」
「出しなさい」
有無を言わせず睨みつける。
夫人は恐る恐る手に持っていたしなる指し棒のようなものを出した。
「今ユウリをこれで叩いたわね」
「違います! こ、これはしつけです、ユウリ様が言うことを聞かないから...」
夫人がちらっとユウリに目を向けるとユウリは申し訳なさそうに顔を下げた。
「ユウリが何をしたんですか?」
一応内容を聞いてやると説明させる。
「ユウリ様は単語の文字のスペルを間違えました。前にも教えたのに...また」
本当に出来ない子だと呆れるように言うとユウリがさらに小さくなる。
「ちぐはぐな...」
「は、はい?」
夫人は私の言葉に困惑する。
「ちぐはぐな、はい書いてください」
夫人にペンと紙を渡すと、夫人は少し考えながら書き出した。
「つぎ、一時的。異常。有害な、ほら書いて」
わざと難しいスペルの言葉を言うと夫人が書いた紙を見つめる。
「ここ、スペル違いますよね?」
「あっ、ですがこれはユウリ様とは比べ物にならないくらい難しい言葉で...」
「間違えたのですから躾けしなくちゃ」
私は問答無用で夫人の右手の甲に思いっきり、持っていた棒を振り下ろした。
バチンッ!
と乾いた音が部屋に響くと夫人の悲鳴がした。
「きゃあ!」
手の甲を押さえてうずくまっている。
「ひ、酷い! これは暴力です!」
夫人が涙を浮かべながらこちらを睨みつける。
「あなたはこれと同じ事を私の息子にしたのよ...しかもこの子はまだ4歳よ。文字を書けるだけで凄いことなの...わかる?」
どうやら私はこの時かなり切れていたようで後からアンに聞いたら瞳孔が開いてすごく怖かったと言っていた。
そんな私の表情に夫人は青ざめ、視線を逸らす。
「あなたを解雇します。今日までの給与をあげて屋敷から追い出してください」
私は棒を真っ二つに折るとゴミ箱に投げ捨て、夫人に背を向けた。
「ユウリの手を手当てして、もし傷が残ったりでもしたら...」
夫人を再び睨みつけると夫人はわなわなと震えながら立ち上がり、部屋を飛び出して行く。
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