【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩

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「良かった、痕跡には残らなそう」

私は眠るユウリの小さなぷくぷくした手を触り怪我の具合を確認する。

日が経ちすっかり傷は癒えて痕は無くなっていた。

気持ちよさそうに眠るユウリのサラサラした髪を撫でていると横で寝転がって見ていたウィリアムが急に起き上がった。

なんだろうと彼を見ると真剣な顔をして私を見つめてくる。

「プルメリア……改めて謝罪させてくれ。すまなかった」

ウィリアムは急に私に向かって頭を垂れる。

「い、いきなりなんですか?」

ウィリアムが謝る姿など記憶の限り見た事がなかった。
それも厳しい両親の教えだったのだろう、弱い姿や泣きごとなど言語道断と教えられてきたようだ。

「ここ最近の君の行動言動をみて私も変わらないといけないのではと思うようになった」

「え」

思いがけない変化にびっくりした。

優里亜の話だと夫婦仲は冷めきっていて修復する事はなかったと聞いていたからだ。

ウィリアムは私の手を取ると少し近づいてきた。

「私は両親からこのように触れられたり、一緒になにかするなどした事がなかった。それが当たり前と思いユウリに同じように接するのも普通だと思っていた」

私はウィリアムの言葉を黙って聞いていた。

「しかし君達と寝たり、食事をしたり一緒に本を読んだり...私の事で怒ってくれたり、初めての経験だった。そして嬉しかった、子供の頃にして欲しかった事だと思い出した」

ウィリアムが恥ずかしそうに苦笑した後、寂しそうな顔をした。

「息子に私と同じような思いをして欲しくない」

ウィリアムの言葉に私は泣きそうになった。

「そう言ってくれるのをずっと待ってた、私達でユウリを幸せにしてあげましょう」

ウィリアムに握られていた手を握り返した。

前世では夫婦で一緒に乗り越えられなかった。元夫は私と優里亜を捨てた。彼も同じ男かと思ったがこうして変わろうとしてくれる。
それだけで少し救われた気がした。

「それで、その私は何をすればいいだろうか?」

変わりたいと思っているがどう接していいかわからないのだろう。
そりゃそうだ、自分だって教えられて来なかったのだから。

ウィリアムを見るといつもはしっかりしているから忘れていたがまだ20代くらいだろう。

前世では学生ぐらいの歳だと思うとまだ彼も子供に見えた。

ここは年上(精神年齢)の一児の母だった私が一肌脱ぎますか!

私が腕まくりをすると、似つかわしくない行動に目を見開き驚いているが構うことはない。

「私達の初めての子なんだから一緒に父親、母親になっていきましょ。間違ってもいいのよ、それを反省して次に生かせれば、今回の事だって私にも責任があるわ、ずっとユウリを一人にしてたのは私だもの」

ウィリアムは真剣に私の話を聞いてくれている。

いけないことだけど前の夫と比べてしまう。
調子のいいことばっかり言って上手く誤魔化し努力や大変なことが大嫌いな人だった。

私も世話を焼きすぎてしまったのもいけなかったのだろう。

でもこうやってウィリアムは一緒に歩もうとしてくれる。
それだけでもすごく嬉しいし、好ましいと思ってしまう。

「最初はよく話しかけるようにしてみて、それでよく褒めるの。駄目な事をしたら叱るのも大事よ、でもその後に必ず抱きしめてあげて。怒る事で終わらせないで最後には必ず愛してるって事を伝えてあげて」

ウィリアムは寝ているユウリの頭を私と同じように撫でてみた。

「こんなに、大きくなったんだな」

きっと最後に抱いたのはまだ赤子の時ぐらいなんだろう。

「そうだ!  今度3人でピクニックに行かない?一緒に遊べばグッと気持ちが近くなるわ」

ウィリアムは少し悩んだ後わかったと頷いた。

「すまないが今夜は少し仕事をしてから休む、君は先に寝ていてくれ」

ウィリアムはそう言うと立ち上がった。

そして部屋を出ようと扉の方を見たあと何か忘れたのかこちらに来る。

「どうしたの?」

何か用かと顔を上げると頭を軽く持たれ自分の方に優しく引き寄せる。

その行動にキスされる!?

そう思い思わず目をつぶった。

するとおでこに微かに温かさを感じ唇が触れるのが分かった。

「おやすみ...愛してる」

ウィリアムははにかむように笑い部屋を出ていった。

「確かに最後に愛してるって伝えてって言ったけど...」

まさか私にもするとは思わなかった。

私は熱さを感じるおでこを押さえながらベッドに倒れると、ユウリを起こさないように注意しながら悶絶していた。
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