【完結】二人の王子~あなたの事は私が幸せにしてみせます。

三園 七詩

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ルフナ様

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勘違いするな…この方はグレイ様の婚約者…この笑顔は俺ではなくグレイ王子に向けられたものだ…

俺は胸を押さえるとぐいっと残りのお茶を馬鹿な考え事飲み干した。

「ありがとう…もうお茶も飲めたし今日はこの辺で…」

忙しいから帰るようにと暗に促す。

「まだ…居ては駄目ですか?」

ルフナ様はぎゅっと俺の服の端を掴んで寂しそうにつぶやく…

それは本人に言ってくれ…サッと視線を逸らしてその手をそっと離す。

「また明日来ればいいよ。何時でも待ってるから」

「絶対ですよ!」

ルフナ様は念を押すと名残惜しそうに渋々と帰っていった。

「ふー…」

ルフナ様をようやく帰すとソファーにドサッと座り込む。

「君も外でいいよ」

護衛の兵士に声をかけて部屋に一人にしてもらう。

いつもの書類を見てる方が何倍も楽だ…まぁもう会うことは無いだろう。

俺はニルギル様とグレイ様が帰ってくるのを自分の部屋にこもって待っていた。

程なくして隠し部屋から王子が戻ってきた。

ニルギル様もいるようで部屋から出てくるように言われる。

「ルフナ様はどうでしたか?」

何事もなく帰った事を伝えてまた明日にでも来る様子だと言うと…

「へーあの女、急にどうしたんだろう?まぁそれなら明日は私が相手してやってもいいだろう」

話を聞いていた王子はニヤニヤと笑う…

ムカッ!

俺はぐっと拳を握りしめ、自分の行動に驚く…

今まではこの王子のする事になんの怒りの感情も無かった…しかしルフナ様に対する態度だけは許せなかった。

しかし俺にできることなどないと、その拳をそっと解いた。

「では明日はずっとこの部屋にいてくださいね。簡単な書類を用意しますので少し目を通して貰います」

ニルギル様の言葉に王子はあからさまに嫌そうな顔をすると

「それはこいつが部屋で暇してるんだからそっちに渡してくれ!私はそんなのやらないぞ!」

ギャーギャーと喚く王子に頭を下げて、どうでもいいと俺は部屋にこもった。



次の日ルフナ様が王子の部屋をまた訪ねた。

俺はどうしても気になり覗き穴から部屋の様子を伺った…

「王子様!」

ルフナ様は部屋に入るなり王子に笑顔を向けた。

やっぱり…

その顔を見て俺は穴からそっと離れた。

しばらく話し声が聞こえるが何を話しているのかはわからない…聞きたくも無かった…

耳を塞ぎじっとしていると急に部屋が静かになった。

塞いでいた手を退かして見るが聞こえるのは王子とニルギル様の声だけ…

俺はまた伺うよに穴を除くと、そこには不機嫌そうな王子と困惑するニルギル様しか居なかった。

そうして王子とニルギル様は何か言い争うと王子は不機嫌に音を出して部屋を出ていった…ニルギル様が頭を振っていると…こちらに向かってきた。

トントン

扉をノックされた。

俺は渋々部屋から出ると…

「なんでしょう?」

「王子と交代です…」

「えっ?でも今日はルフナ様が来たのでは?」

いつもはしない問いかけをしてしまった。

「ルフナ様は来たのですが…王子を見るなり不機嫌になり…」

「えっ?」

「やっぱり今日はいいですと言ってお帰りになられました」

「な、なぜ?」

昨日はあんなにニコニコと楽しそうだったのに…

「王子ももうルフナ様のお相手は嫌だと…次からはあなたがルフナ様の相手をして下さい」

「し、しかし同じように帰られるのでは?」

「それでもいいです…とりあえずルフナ様の機嫌をこれ以上悪くならないように務めるて下さい」

こうして俺にもうひとつ厄介な仕事が増えた…
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