魔力食いの令嬢は魔力過多の公爵に執着される

三園 七詩

文字の大きさ
7 / 23

7

しおりを挟む
俺は涙を流す彼女に何も出来ずにいる。

魔力量の多い俺が触れれば彼女が魔力酔いをしてしまう。

少し離れ俺はただ様子を見ていた。

エリオ先生はまだかと扉を見つめていると彼女が目を覚ましてしまった。

「うん、ここは?」

頭を押さえて起き上がると周りをキョロキョロと見回し俺と目が合った。

彼女は一瞬固まるがハッとして声をかけてきた。

「オニキス様!  大丈夫ですか?」

俺の名前を呼び心配してくる。

「なぜ名前を?」

俺を知っているのかと眉を顰めた。
すると彼女は慌ててベッドから降りた。

「あっ……」

寝ていたからかよろめいて足に力が入らないようでベッドにしがみついている。

「す、すみません。力が……」

彼女が謝るので俺はため息をついた。

「そのままでいい」

「ありがとうございます。わたくし伯爵家の長女フィオナと申します。オニキス様が倒れた際にエリオ先生を呼んでくるように言われたので……」

名前を知っている理由を説明する。

俺は少し安堵した。元々知っていた訳ではないようだ。

「君のおかげでエリオ男爵が駆けつけてくれ助かった。礼を言う」

「そんな、大丈夫です。それよりも体は大丈夫ですか?  気持ち悪いとかだるいとか」

彼女は俺を見て心配というより不安そうにしていた。

「大丈夫だ」

先程まで魔力量に苦しんでいたが今は本当に驚くほど体調がいい。
こんなのは先生に初めて魔力量を抑える魔道具を貰った時以来だった。

「良かった」

俺の平気そうな姿に彼女は本当にホッとしていた。

お互いが黙り少し間が空いてしまう。
何か話そうかと口を開こうとした時、扉がノックされた。

「オニキス、彼女は大丈夫?」

エリオ先生が戻ってきてホッとする。

「先生!」

彼女もそれは同じようで先生を見て笑みを浮かべた。

俺といた時は強ばった表情をしていたが先生を見た瞬間溢れんばかりの笑みを浮かべる。

「フィオナ、久しぶりだと言うのに悪かったね。今日はこれから屋敷に送るからゆっくり休みなさい。また後日説明するよ」

先生がそういうと彼女は素直に頷いた。

「ではオニキス様失礼致します」

彼女は俺に挨拶をすると先生と部屋を出ていった。





私は先生に連れられて王宮を後にした。

先生が会場の方に説明してくれたようで私は早めに家へと帰ることができた。

馬車に乗る時先生が声をかけてきた。

「家まで送れなくてごめんね、気をつけて帰るんだよ」

「馬車に乗ってるだけですから大丈夫です」

先生に笑みを向ける。

「彼女を無事に送ってくれ」

先生が御者に声をかけると馬車は動き出した。

馬車の揺れに私はまたうとうととまぶたが重くなってきた。







フィオナが乗る馬車を私は見えなくなるまで見送った。

本当なら屋敷まで送ってやりたいが、王宮での務めがあるのでここを離れるわけにもいかない。

それにオニキスの事も心配だったのでとりあえず部屋へと戻った。

彼は椅子に腰掛けて休んでいた。
しかし私が来るなり立ち上がりそばに来ると疑問を投げかけた。

「先生、私の魔力暴走はなぜ止まったんですか?  それに彼女はなぜ気を失っていたのですか?あのまま帰らせて大丈夫なんですか!」

「待って待って」

私はオニキスを落ち着かせる。

「とりあえず魔力量を見るから座って楽にして」

そう言うと素直に椅子に腰掛けた。

私はオニキスの魔力量を見てニヤリと笑う。
ずっとオニキスの器を壊す勢いで溢れていた魔力量が器に対して正常になっていたのだ。

「うん、魔力量が減ってる」

私の言葉にオニキスは椅子を倒して立ち上がった。

「なぜ…あっもしかして新しい魔道具ですか!」

オニキスの期待する顔に私は首を振った。

「いいや、フィオナのおかげだよ」

そう言うとオニキスは嫌そうな渋い顔をする。

「あの令嬢が?」

オニキスの女嫌いは知っていたがこれほどまでとはと苦笑する。

「彼女の秘密を他言しないと誓えるかい?」

私が真剣な顔をするとオニキスは黙って頷き席に座った。

「フィオナはこの国に唯一存在する魔力を吸う事のできる人なんだ」

「魔力を吸う?」

オニキスは信じられないという顔をする。

それもそのはずだろう。この国の歴史的に見てもそんな人は存在した事がない。

「だからあの時君の溢れ出していた魔力をフィオナに吸って貰ったんだ」

オニキスにそう言うと信じられない顔で自分の手を見つめている。

信じられなくとも自分の今の魔力量がフィオナのことを肯定しているだろう。

そしてハッとした。

「彼女は大丈夫なんですか!」

彼の心配は私の心配でもあった。

「わからない、先程見た感じだと大丈夫そうに見えたがあんなに魔力を吸ったんだ、明日すぐに彼女の様子を見に行ってくる」

そう言ってオニキスから視線を逸らす。

「先生?」

オニキスの不安そうな顔に私は頭を下げた。

「フィオナの力の事は何もわかってないんだ。そんな状態で君を助けるために彼女の魔力を吸わせた。彼女に何があったとしても責任は私にある」

彼は何も言わずに私の下げた頭を見続けていた。

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

妖精隠し

恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。 4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。 彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

7歳の侯爵夫人

凛江
恋愛
ある日7歳の公爵令嬢コンスタンスが目覚めると、世界は全く変わっていたー。 自分は現在19歳の侯爵夫人で、23歳の夫がいるというのだ。 どうやら彼女は事故に遭って12年分の記憶を失っているらしい。 目覚める前日、たしかに自分は王太子と婚約したはずだった。 王太子妃になるはずだった自分が何故侯爵夫人になっているのかー? 見知らぬ夫に戸惑う妻(中身は幼女)と、突然幼女になってしまった妻に戸惑う夫。 23歳の夫と7歳の妻の奇妙な関係が始まるー。

一緒に召喚された私のお母さんは異世界で「女」になりました。

白滝春菊
恋愛
少女が異世界に母親同伴で召喚されて聖女になった。 聖女にされた少女は異世界の騎士に片思いをしたが、彼に母親の守りを頼んで浄化の旅を終えると母親と騎士の仲は進展していて…… 母親視点でその後の話を追加しました。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【完】ある日、俺様公爵令息からの婚約破棄を受け入れたら、私にだけ冷たかった皇太子殿下が激甘に!?  今更復縁要請&好きだと言ってももう遅い!

黒塔真実
恋愛
【2月18日(夕方から)〜なろうに転載する間(「なろう版」一部違い有り)5話以降をいったん公開中止にします。転載完了後、また再公開いたします】伯爵令嬢エリスは憂鬱な日々を過ごしていた。いつも「婚約破棄」を盾に自分の言うことを聞かせようとする婚約者の俺様公爵令息。その親友のなぜか彼女にだけ異様に冷たい態度の皇太子殿下。二人の男性の存在に悩まされていたのだ。 そうして帝立学院で最終学年を迎え、卒業&結婚を意識してきた秋のある日。エリスはとうとう我慢の限界を迎え、婚約者に反抗。勢いで婚約破棄を受け入れてしまう。すると、皇太子殿下が言葉だけでは駄目だと正式な手続きを進めだす。そして無事に婚約破棄が成立したあと、急に手の平返ししてエリスに接近してきて……。※完結後に感想欄を解放しました。※

処理中です...