ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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6巻

6-2

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 ◆


「ミヅキ、飲み物くれー!」

 十週を走り終えたベイカーさんが、汗を拭きながら私の所にレモネードを貰いに来た。ベイカーさんが気にしていた黄色い飲み物は、レモンとはちみつで作ったレモネードだったのだ。

「ちょっとベイカーさん、速すぎない? もっとゆっくり走りなよ!」

 文句を言いながらもレモネードを渡すと、ベイカーさんはグイッと飲み干す。

「ぷはぁー! やっぱり美味い!」
「昨日味見で散々飲んだじゃん」
「いや、運動した後はまた格別だ!」
【シルバもコハクもレモネードを飲む?】
【俺はミヅキの水がいい】

 シルバの答えにコハクも頷く。二人はいち早く戻ってきたので、先にお水をだしてあげていた。
 シルバ達にはレモンは酸っぱすぎたかな?
 走り終わった面々があちこちではぁはぁと息を整えていると、隊長達が集まってきた。

「ミヅキー俺にもくれ、おっ! 麦茶むぎちゃがある」

 アラン隊長に麦茶むぎちゃを渡すと、これまたあっという間に飲み干す。

「アラン隊長……何その色の水、腐ってません?」

 麦茶むぎちゃの色に皆が怪訝けげんな顔をしている。

「ミヅキさんが用意するものに変なものなどないでしょ」

 カイト隊長が迷わずに麦茶むぎちゃのコップを掴むと一口飲んだ。

「美味しい」

 味にびっくりした後は、残りもごくごくと飲んでいる。その様子を見て、他の部隊兵の皆も飲みたそうにゴクッと唾を飲んだ。

「よかったら皆さんもどうぞ。こっちの茶色いのが麦茶むぎちゃで、こっちがレモネードです。レモンを搾ってはちみつで甘くしてありますよ」
「そっちも飲もう!」

 アラン隊長がレモネードにも手を出した。

「うっま! なんだこれ!」

 他の隊長もどれどれとレモネードにも手を伸ばす。

「爽やかで甘くて美味しいわぁ~!」

 ミシェル隊長が上品に口に手を当てて驚いている。

「コジローさんも飲んでね~」

 遠慮して後ろにいたコジローさんに笑顔でレモネードを渡す。

「これからまだ練習あるから飲みすぎないようにねー、特にアラン隊長」

 ジロッと見ると、アラン隊長が三杯目のコップに手を伸ばそうとしていた。

「まだまだ用意してあるから、また後でね」

 注意されたアラン隊長は、渋々手を戻した。

「さぁお前ら次だ、次! 今度は……新しい訓練の鬼ごっこだ!」
「「「鬼ごっこ?」」」

 部隊兵達が練習メニューを聞いて戸惑っている。

「今更、子供の遊びっすか?」
「鬼ごっこなんて軽いよな」

 部隊兵達が楽勝、楽勝と笑っている。

「ちなみに鬼はこちらのミヅキの従魔のシルバとコハク、ベイカーとコジローさんがやる」
『へっ?』

 先ほどまで笑っていた部兵隊達が表情を変えた。

「彼らに鬼ごっこの陣地の線の外に投げ出されたら終わりだ。最後まで残ってた五名に、ミヅキから特別なご褒美があるそうだぞ!」
「ちょっと、隊長! フェンリルが鬼なんですか?」
「ああ、でも鬼ごっこなんて楽勝なんだろ?」

 アラン隊長がニヤッと笑ういながら練習場に大きく長方形の線を書く。

「この線の中にさっさと入れ! 出されたら速やかに端に避けろよ」

 皆がゾロゾロと線の中に入ると、鬼になったシルバ達から距離をとる。

「思ったより広いな、これなら逃げ切れるか?」

 部隊兵達が少し安堵しているところにアラン隊長が声をかけた。

「ちなみに隊長達は見学と審判だ! じゃ行くぞ! よーい……はじめ!」

 アラン隊長の合図にシルバ達が一斉に線の中に入る。

「やばい!」

 シルバはあっという間に部隊兵達の後ろに回り込み、足を取ると前足でポイッと横に払った。兵士さんはすごい勢いで線の外に投げ出された。

「グッハ!」
【あれ? コレでも力が強すぎたか】

 脇腹を痛そうに押さえている兵士にアラン隊長が近づく。そして、ちょんちょんと脇をつついて確認する。

「骨は折れてはいないようだな、なら問題なし」

 その言葉に部隊兵達は冷や汗が流れた。私は慌ててシルバに声をかけた。

【シルバ、もうちょっと力加減してあげて!】
【わかった! わかった!】

 シルバは頷くと次の兵士に狙いを定めて駆け出した。
 トントントン。
 一瞬で兵士達を続けざまに外に出していく。

「全然動きが見えねぇ!」

 シルバの周りだけでなく、違う所でも声があがる。

「この人、動きがアラン隊長そっくりだ!」

 兵士達が、ベイカーさんに首根っこを掴まれてポイッポイッと外に投げ出されている。

「やばい、後ろを取られるな!」
「前も後ろも逃げ場がねえよ!」
「うわぁ、今度はなんだ!」

 今度はコジローさんに足を引っ掛けられて、服を掴まれポーイと外に投げ出される兵士が見えた。

「足音が全然しないぞ、気をつけろ!」
「それならあの狐だ! それなら俺達でも……」

 一見おとなしそうに見えるコハクを眺め、安全そうだと逃げ惑う兵士達が集まってきた。

「まて! すばしっこいしあの速さで体当たりしてくるぞ!」

 パニックになる兵士達。どうやら彼らはどこに逃げても外に出る運命だったようだ。

「おいおい、ちゃんと頭使って逃げろよー」

 アラン隊長が情けないと外から檄を飛ばす。
 シルバ達の活躍で、線の中にいつ部兵隊達の人数はあっという間に半数以下になる。そうするとスペースが出来て、逃げるのも少し楽になっているようだ。

「副隊長達は皆残ってますね」

 カイト隊長が感心しながら様子をうかがっている。

「まぁ、早々に捕まってたらメンツが立たないからな」
「でも……私でもアレには掴まちゃうわ~」

 ミシェル隊長がシルバを見ている。隊長達も頷いているから、やっぱりシルバはすごいみたいだ。

「あれでも全然実力を出してないから恐ろしい」

 ガッツ隊長はシルバと戦ったことがあるだけにしみじみと頷いている。

「怖いわねぇ~」
「あっ、そろそろ二十名くらいになったな!」

 アラン隊長が残っている人数を数えだす。線の中には各部隊の副隊長と部隊兵が数十人残っていた。

「ここからが本番だな!」

 隊長達がニヤッと笑った。
 シルバは一人の兵士に狙いを付けると「シュン!」と一瞬で間合いを取る。すると兵士がそれに反応して横に飛び退いた。

【コハク、今だ!】

 狙い通りに横に飛んできた兵士にコハクがポンッと体当たりすると、バランスを崩して兵士が外に出てしまった。

「何やってんだ、オリバー!」

 タナカ隊長がやられた兵士を叱咤する。

「いや~、無理だろ、避けただけでも褒めて欲しいわ!」

 オリバーさんが体の土を払うと待機場所に戻ってきた。

「無理じゃねぇ!」

 タナカ隊長は自分の部隊兵がみんなやられてしまいイライラしているみたいだ。

「じゃ、タナカ隊長も相手してみて下さいよ!」

 オリバーさんがご機嫌ななめのタナカ隊長を軽くあしらう。

「それいいな、タナカお前も参加して来い」

 アラン隊長がいい考えだと手を叩く。

「ああ、やってやろうじゃんか!」

 アラン隊長がシルバ達に声をかけると、タナカ隊長は線の中に入っていった。

【あいつ、さっきミヅキに舐めた口を利いたやつだな】

 シルバがタナカ隊長を見ると周りの空気がピリッとした。それに気がついてベイカーさんがシルバに声をかける。

「おいシルバ、気持ちはわかるが本気は出すなよ」

 シルバがわかってるとばかりにふんと鼻息を出すと、先にコハクが動いた。先程までとは比べ物にならない速さでタナカ隊長に向かって突進するが、サッと避けられる。

「やるなぁ」
【ほぉ……】

 ベイカーさんもシルバもタナカ隊長の動きに少し警戒をする。

「生意気なやつだが、さすがに隊長になるだけのことはあるな」

 ベイカーさんが声をかけると「ふん、当たり前だ!」とタナカ隊長がバカにするなと睨みつけた。

【じゃあ俺が行こう】

 シルバがザッと前に出るとタナカ隊長がジリッと警戒して後ずさりした。タナカ隊長はシルバの行動を見逃すものかと食い入るように見つめていたが……何の前触れもなく目の前にいたシルバは一瞬で姿を消した。

「なっ!」

 タナカ隊長は声を出そうとしていたが、同時に右脇にシルバが突進する。その瞬間にタナカ隊長は意識を手放してしまった。私はやりすぎたシルバの前に立ってお説教をする。

【シルバ! やりすぎないでって言ったでしょ!】
【で、でもあいつ、ミヅキのことを睨んでいたから……】

 シルバのシュンとした姿を見てため息をつく。

「おっ、目が覚めたか?」

 アラン隊長の声に、シルバへのお説教を止めてタナカ隊長の様子を見に行くことにした。

「俺、やられたのか……?」
「ああ、瞬殺だったな!」

 アラン隊長が容赦なく笑う。

「くっそっ!」

 悔しそうにしているタナカ隊長の側に行き声をかけた。

「タナカ隊長、大丈夫?」

 タナカ隊長は「ああ」とぶっきらぼうに答えてくる。

「隊長、いい加減にしろ!」

 ゴン! とオリバーさんがタナカ隊長の頭に拳骨げんこつをくらわせた。

「な、何すんだ!」

 タナカ隊長が頭を押さえながらオリバーさんを睨んだ。

「ミヅキちゃんに嫉妬するのもいい加減にしろ!」

 嫉妬? どういうことだろう。

「ち、違う!」

 皆が見つめるとタナカ隊長が慌てて首を振る。

「他の隊長達がミヅキちゃんのことを構うもんだから、嫉妬してるんですよ!」

 あっ……なるほどね。

「なかなか他の隊長達みたいに立ち回れないから焦ってるところに、隊長達が凄い凄いと褒めるもんだから」
「そうだったのか、タナカ。それは悪かったな」

 オリバーさんの言葉を受けて、ガッツ隊長がタナカ隊長の頭を子供をあやすように撫でた。タナカ隊長はその手を振り払うと、顔を赤くして怒っている。

「違う、そんなんじゃねぇよ触るな!」

 なんか、いじけてる子供みたい。私は思わず「ぷっ」と笑った。

「このガキぃー!」

 私に手を出そうとしたタナカ隊長は、またオリバーさんに頭を叩かれた。

「お前! 仮にも俺は上司だぞ!」
「今のは幼なじみとしてだ! お前怪我した脇腹はどうなんだ?」

 そう言われてタナカ隊長は右脇を触るが、痛みも何もないことを不思議そうにしている。

「確かに気を失う前に激痛が襲ったはずだ」

 そう言って首を捻っている。

「ミヅキちゃんが手当てしてくれたんだぞ。何か言うことはないのか!」
「お前が治してくれたのか?」
「だって、うちのシルバが力入れすぎちゃったみたいで……逆にごめんなさい」

 私が頭を下げると周りの隊長がジトッとした目線をタナカ隊長に送っている。

「あっいや、あれは練習での事故だ。気にすんな」

 そうは言っても怪我をさせてしまい申し訳なく思っていると……
「ああもう! 大丈夫だ、治してくれて感謝してる」と、躍起になったのか大声で答えた。

「タナカ隊長、これよかったら」

 私がレモネードを差し出すとタナカ隊長は受け取ってくれた。
 そして、投げやりになったのかゴクゴクと勢いよく飲みだした。

「なんだこれ、すっげぇ美味い!」
「だろ?」

 何故かアラン隊長がドヤ顔をする。

「それに何だか力が戻ってくるような気がする」

 ギクッ! 私の作った食べ物の秘密に気がつかれたかと表情が固まるが、タナカ隊長はそれ以上何も言わずにレモネードを飲み切った。

「ご馳走様、美味かったよ」
「どういたしまして」

 私はニッコリと笑顔を返した。

「さぁタナカ隊長も大丈夫そうだから練習を続けるぞー」

 アラン隊長が声をかけると、先程の残ったメンバーで鬼ごっこを再開した。


 ◆


「はい、そこまで! 残ってるのは副隊長の四人とシオンだな」
「やった……!」

 シオンさんが肩で息をしながらガッツポーズをする。

「じゃあご褒美はミヅキからだ!」

 そう言われて私は五人の元に向かった。

「おめでとうございます。コレ、今私達が造ってるリバーシです」
「えっ、リバーシ! 今全然手に入らないやつですよね!」

 周りの部隊兵達もリバーシを見たいのか、五人の元に詰め寄ってくる。みんなの思った以上の反応に、そんなに人気なんだと驚いてしまう。
 五人にリバーシを渡していくと負けた兵士達が羨ましそうに見つめていた。

「いいなぁ」
「シオン、後でやらせてくれよ!」
「次もなんかご褒美があるのかな?」

 他の部隊兵達がご褒美にソワソワしだした。

「ほら、次の訓練行くぞ!」
『はい!』

 部隊兵の返事がいつもより大きいことにさすがのアラン隊長も呆れていた。その後は素振りをすることになったのだけど、各部隊いつもより気合いの入った素振りをしていたみたいだ。

「九百九十八~、九百九十九~、千! 終了~」

 アラン隊長の掛け声と共に皆が剣を置く。

「や、やばい……腕が」
「マジでやりすぎた」

 部隊兵達がドカッと地面に座り込む。

「ほら、休んでる暇はないぞ! 次はドッジボールだ!」
『ドッジボール?』

 部隊兵達は聞いたことのない訓練方法に顔を見合わせた。

「では、ドッジボールのルールの説明をします」

 この競技を提案した私が皆の前に出て説明する。

「皆さんには、前もって十二人のチームに分かれてもらってますよね。ドッジボールは、チーム対抗ボール当てゲームです」
「ボール当て?」
「はい、正式なルールは私もよくわからないからオリジナルルールね。まずは、あちらのコートをご覧下さい」

 そう言って皆が素振りをしている間に引いたコートの線を見せる。

「長方形の真ん中に線が引いてあると思うんだけど、その線を境に二つのチームが長方形の中に入ります! それで、線の中から出ないように気を付けながらボールを相手チームに当てます。当てられた人は外野がいやといってこの長方形の枠の外に出ます」

 線の中を走りながら身振り手振りで説明する。

「コートの中の相手を全員当てたチームが勝利。細かいルールは隊長達が実践しながら説明していきます。隊長、副隊長、お願いします」

 前もってルールを詳しく教えておいた隊長達がコートに立った。

「まずは、ボール権かコート権を決めます。代表者がじゃんけんをして下さい」

 アラン隊長とセシルさんがじゃんけんをするとアラン隊長が勝った。

「じゃ、俺達がボールな」
「コートはこっちでいいです」

 二人はサッと決めた。

「そしたらチーム内で外野がいやを決めます。外野がいや内野ないやが少なくなったら復活することが出来るので、その際は大声で復活! とみんながわかるように叫んで下さい」

 隊長達が内野ないや外野がいやに分かれるとアラン隊長がボールを持つ。

「じゃ、軽くやって下さいね、アラン隊長お願いします!」

 アラン隊長が軽く? 凄い球を投げてセシルさんに当てる。


「体のどこかにボールが当たればアウトです。当たった人は外野がいやに行って下さい」

 セシルさんが外野がいやへと走った。

「ちなみに、一度地面に付いたボールに当たったり、顔に当たった場合はセーフとなります。後はボールをキャッチ出来ればもちろんセーフです!」

 今度はアラン隊長がワンバウンドでボールを投げてベイカーさんに当てる。

「これはセーフです」

 ベイカーさんがボールを投げてガッツ隊長の肩に当てる。

「これはアウト! そして……」

 外に出たガッツ隊長がお返しとばかりにベイカーさんに当てた。

外野がいやに出ても、敵チームの誰かを当てることが出来れば内野ないやに復活出来ます」

 ガッツ隊長が内野ないやに戻る。その後も軽い投げ合いをしながらその都度説明を加えて、あっという間にアラン隊長が一人となった。

「復活!」

 するとカイト隊長が声を出し内野ないやに戻った。

内野ないやがゼロになったら負けなので、外野がいやは見極めて内野ないやに戻って下さいね。今は簡易で説明したので本番は外野がいやが二人、内野ないやが十人で始めて下さい」

 私の説明に皆がポカーンとしてしまった。あれ?

「皆わかった? それとも……」

 説明が悪かったかと顔を曇らせる。

「あっいや、わかったんだけど……凄いな、これミヅキちゃんが考えたのか?」
「あっ……えっとどこかで聞いた遊びです」

 私が答えに戸惑っているとアラン隊長が声をあげてくれた。

「はい、はい、はい。説明は終わりだ、お前らわかっただろ、準備しろー」

 一度コートに分かれて軽く練習をすることになった。

「五コート作ってあるので各部隊に分かれて練習してみて下さい。隊長と副隊長は審判とルール説明をお願いします!」

 私は全体が見渡せる高い台に上がって周りを見る。
 部隊兵達が投げ合ってボールの感触を確認していた。
 さすがに皆ボールの速度が違う、当たったら痛そうだ。
 しかも初めてだろうに、皆上手にボールを受け止めている。元の身体能力が違うのかな。

「大丈夫そうかな」

 練習の様子を見てアラン隊長に合図を送ると、アラン隊長が一度みんなを集めた。

「よし、じゃクジを引いて対戦相手を決めるぞ。代表者前に!」

 私が作っておいたクジを各チームの代表が引いていく。

「紙に書いてある数字が同じ相手と戦います。《一》が書いてあるチームは一番のコートに行って下さい」

 各自クジの数字のコートに分かれた。

「じゃ、これより第一回ドッジボール大会を始めます!」

 私の声を合図に隊長達がボールを各チームに渡していった。


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