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6.賊

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突然の出来事に会場はパニックになる!

ほとんどの者は方々に逃げ出し出入り口の扉から飛び出していた。

逃げ惑う人の波で駆けつけた兵士達は思うように前に進めない。

レイン王子とラーラを守るのはクラウディアだけだった。

「クソアマ!どけ!」

チャートは掴んでいた令嬢を扉にいた兵士に投げつけるとレイン達の元に向かう!

剣を取り出すとクラウディアの隣に並んだ。

「チャート様は右側の男達を頼みます、私は左を…」

「大丈夫なのか…」

チャートは男達を見ながらクラウディアに聞くと

「今はレイン王子とラーラ様の安全を…私は大丈夫です」

そう言うとクラウディアは男達目掛けて飛び出した。

「くっ!もう知らん!」

チャートはレインを狙っていた男目掛けて剣を振り上げた!!


チャートは難なく男達を倒すとクラウディアの様子を確認する!

彼女は剣を振り下ろし、男達を足蹴にしていた。自分と同じ様に賊を倒していたのだ…

「クラウディア!素敵!」

ラーラがクラウディアに駆け寄ると、クラウディアは笑って男達を捕らえにきた兵士に剣を渡していた。

「レイン!大丈夫か?」

チャートは先ずレインに駆け寄ると

「ああ、彼女に助けられた」

レインは何ともないと頷くと楽しそうに話しているラーラとクラウディアを見つめる。

「彼女…何者だ?」

「ラーラに少し聞いた方がいいようだな」

チャートは兵士達に男達の拘束を頼むとレインとラーラを部屋へと送る事にした。

「あなたも…」

その際にクラウディアも一緒に連れていった。

レイン王子の部屋につくと

「すまなかった…」

チャートはレインとラーラに謝罪した。

「なんだ?急に」

レインがチャートの行為に顔をしかめると

「レインの護衛なのにあの場を離れてしまった…お前達を危険な目に…」

クラウディアがいなければ…そう思うとチャートはゾッとする。

「いえ…あれは私があの令嬢達をけしかけたので…こちらこそ申し訳ございません…お仕事の邪魔をしてしまいした…」

クラウディアがチャートに謝った。

「いや!二人とも俺達を助けてくれたじゃないか?何を謝る事がある」

レインが言うと、ラーラもそうだと頷く。

「ええ、二人共本当に強くて素敵だったわ。クラウディアありがとう」

ラーラはクラウディアの手を取ると嬉しそうに笑いかける。

その笑顔にクラウディアは張り詰めていた顔をふっと緩めた。

「それにしてもクラウディア嬢は本当に強いんだな…もしかして俺より強いかもな」

レインが笑うと

「いえ…殿方には力では敵いません」

「力では…という事はそれ以外では?」

チャートがクラウディアの言葉に反応すると

「それは私の口からはなんとも…」

ふっと口の端をあげて笑った。


ラーラとクラウディアを各々の部屋へとおくり、レインとチャートは再び王子の部屋に戻ってくると

「あのクラウディアって令嬢面白いな」

レインがチャートに話しかける。

「そうか…あの最後の顔を見たか?あれは自分の方が強いって思ってる顔だ」

チャートはムッとしてレインに怒鳴ると

「何を怒ってる、彼女には助けられたんだろ?」

「そうだが…彼女が言った様にあの令嬢共をけしかけなければこんな事には…」

「その前にクラウディア嬢を使って令嬢達をまこうとしたのはお前だろ?」

「くっ…」

チャートは悔しそうにしながらも言い返せなかった。
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