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「ふー、終わった終わった」
店に来ていた人のチケット交換がようやく終わった。
大体の人は薪を持ってきてくれて、家で野菜を育ててる人やお店をやってる人がその他の物を交換しにくるようだった。
「よかったー、みんながみんな料理を持ってきたら大変だったよ」
「そんなに貰ってもな」
ライリーさんが苦笑いする。
「本当に、そんなにいっぺんに食べたら太っちゃうよね」
私の言葉にライリーさんが真顔で固まった。
「え、持ってきたら全部食べる気だったのか?さっき交換したのだって2、3日分にはなるんじゃないかと思うが」
「だって食べた事ない料理だよ!それに作ってきてくれたのに…もったいない。ちゃんと全部その日のうちに食べてあげないとね」
料理は先にお母さんのところに運んで置いたので、今日の昼ごはんが今から楽しみだ。
「ライリーさんも食べてってよ。それとはい、これ」
私はライリーさんにチケットを渡した。
「俺は交換できるものは持ってきてないぞ」
ライリーさんがいらないとチケットを受け取るのを拒否した。
「手伝って貰ったんだから正当な賃金だよ、またよろしくね」
「だから俺は領主様から言われてるからいいのに」
「でもちゃんと働いた分もらっとかないとおじいちゃんに嫌われるよ」
「な、なんだって!?なら頂こう!」
ライリーさんが慌ててチケットを受け取った。
私は満足して頷くとこの場をライリーさんに任せることにした。
「また人が来たら交換よろしくね。私は銭湯の準備に戻るから、さっきみたいに生物とかは貰いすぎに注意してね。わかんなかったらお母さんに聞いて」
「わかった」
ライリーさんには護衛兼店番を頼むことにした。
その間に私は銭湯の準備を整える。
裏の貯蔵庫に行き在庫をチェックしてため息をついた。
コーヒー牛乳とフルーツ牛乳があと少しで終わってしまう。
しばらくは家にあるコーヒーを使ってコーヒー牛乳を作る予定だ。
フルーツもこの世界で調達して作っていくことにした。
しかしもうこの味と同じものは飲めないだろう…私が物心ついた頃から慣れ親しんだ味だった。
私はちょっと考えてこっそりと四本だけ持ち出した。
これだけは最後家族で飲もうと家の冷蔵庫に隠しておくことにした。
あとはタオルや足ふきマットなどセットして準備完了。
家に向かうとちょうど昼時になっていた。
「おつかれ、マキおじいちゃんとお父さんにご飯持って行ってくれる」
「うん」
お母さんがお盆にご飯とお茶を用意して渡してきた。
おじいちゃん達は火の番があるのでボイラー室で食べる、昼飯はいつもそこに持っていくのだ。
「今日はおかずが豪華よ」
「たくさん貰ったもんねー」
「いつもちゃんと作ってるでしょー」
お母さんの文句を聞きつつ私はボイラー室に向かった。
「おじいちゃん、お父さんご飯だよ」
ボイラー室にあるテーブルにお盆を乗せる。
「ありがとうよ」
おじいちゃんが手を上げてお礼を言うとお父さんがすぐに食べ始めた。
お父さんが先に食べて終わったらおじいちゃんが食べる。
二人で同時に目を離すことはしないのだ。
私はお父さんに付き合って向かいに座った。
「おかずどう?」
「ん?ああ美味いぞ、初めて食べる味だな」
「今日チケット交換で貰ったご飯だよ、こっちの料理も美味しそうだね。それに果物も貰ったよ、夜にフルーツ牛乳試してみようよ」
「そうだな」
「しかしコーヒーが無いのは痛いな…」
「そうだね、うちにまだコーヒーがあるからいいけどどのくらい持つかな?」
「ひと月は持たせたいな…」
「無理ならさ、ミルクティーとかでもいいと思うんだよね。抹茶ミルクとか色々試してみようよ」
「そうだな…」
私もお父さんも心の中ではコーヒー牛乳には勝てないと思っていたが、それを手に入れられないのだから仕方がない。
「いいじゃねぇか、それよりもたくさんの人に風呂に入ってもらえる方がわしはいい」
おじいちゃんがボソッと呟いた。
「そうだね…うん!そうだよ。うちはコーヒー牛乳屋さんじゃないもん。銭湯なんだからね」
おじいちゃんの言葉にお父さんと笑いあった。
店に来ていた人のチケット交換がようやく終わった。
大体の人は薪を持ってきてくれて、家で野菜を育ててる人やお店をやってる人がその他の物を交換しにくるようだった。
「よかったー、みんながみんな料理を持ってきたら大変だったよ」
「そんなに貰ってもな」
ライリーさんが苦笑いする。
「本当に、そんなにいっぺんに食べたら太っちゃうよね」
私の言葉にライリーさんが真顔で固まった。
「え、持ってきたら全部食べる気だったのか?さっき交換したのだって2、3日分にはなるんじゃないかと思うが」
「だって食べた事ない料理だよ!それに作ってきてくれたのに…もったいない。ちゃんと全部その日のうちに食べてあげないとね」
料理は先にお母さんのところに運んで置いたので、今日の昼ごはんが今から楽しみだ。
「ライリーさんも食べてってよ。それとはい、これ」
私はライリーさんにチケットを渡した。
「俺は交換できるものは持ってきてないぞ」
ライリーさんがいらないとチケットを受け取るのを拒否した。
「手伝って貰ったんだから正当な賃金だよ、またよろしくね」
「だから俺は領主様から言われてるからいいのに」
「でもちゃんと働いた分もらっとかないとおじいちゃんに嫌われるよ」
「な、なんだって!?なら頂こう!」
ライリーさんが慌ててチケットを受け取った。
私は満足して頷くとこの場をライリーさんに任せることにした。
「また人が来たら交換よろしくね。私は銭湯の準備に戻るから、さっきみたいに生物とかは貰いすぎに注意してね。わかんなかったらお母さんに聞いて」
「わかった」
ライリーさんには護衛兼店番を頼むことにした。
その間に私は銭湯の準備を整える。
裏の貯蔵庫に行き在庫をチェックしてため息をついた。
コーヒー牛乳とフルーツ牛乳があと少しで終わってしまう。
しばらくは家にあるコーヒーを使ってコーヒー牛乳を作る予定だ。
フルーツもこの世界で調達して作っていくことにした。
しかしもうこの味と同じものは飲めないだろう…私が物心ついた頃から慣れ親しんだ味だった。
私はちょっと考えてこっそりと四本だけ持ち出した。
これだけは最後家族で飲もうと家の冷蔵庫に隠しておくことにした。
あとはタオルや足ふきマットなどセットして準備完了。
家に向かうとちょうど昼時になっていた。
「おつかれ、マキおじいちゃんとお父さんにご飯持って行ってくれる」
「うん」
お母さんがお盆にご飯とお茶を用意して渡してきた。
おじいちゃん達は火の番があるのでボイラー室で食べる、昼飯はいつもそこに持っていくのだ。
「今日はおかずが豪華よ」
「たくさん貰ったもんねー」
「いつもちゃんと作ってるでしょー」
お母さんの文句を聞きつつ私はボイラー室に向かった。
「おじいちゃん、お父さんご飯だよ」
ボイラー室にあるテーブルにお盆を乗せる。
「ありがとうよ」
おじいちゃんが手を上げてお礼を言うとお父さんがすぐに食べ始めた。
お父さんが先に食べて終わったらおじいちゃんが食べる。
二人で同時に目を離すことはしないのだ。
私はお父さんに付き合って向かいに座った。
「おかずどう?」
「ん?ああ美味いぞ、初めて食べる味だな」
「今日チケット交換で貰ったご飯だよ、こっちの料理も美味しそうだね。それに果物も貰ったよ、夜にフルーツ牛乳試してみようよ」
「そうだな」
「しかしコーヒーが無いのは痛いな…」
「そうだね、うちにまだコーヒーがあるからいいけどどのくらい持つかな?」
「ひと月は持たせたいな…」
「無理ならさ、ミルクティーとかでもいいと思うんだよね。抹茶ミルクとか色々試してみようよ」
「そうだな…」
私もお父さんも心の中ではコーヒー牛乳には勝てないと思っていたが、それを手に入れられないのだから仕方がない。
「いいじゃねぇか、それよりもたくさんの人に風呂に入ってもらえる方がわしはいい」
おじいちゃんがボソッと呟いた。
「そうだね…うん!そうだよ。うちはコーヒー牛乳屋さんじゃないもん。銭湯なんだからね」
おじいちゃんの言葉にお父さんと笑いあった。
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