ブラック+ブラック=ホワイト

邪外道

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結瑠は「そういえば」と言って、俺に尋ねてきた。
「今日は用事はあるの?」
「ああ、ない」
「そっか。じゃあ、一緒に帰れるね」
俺はうなずいた。こういうところは可愛いやつだなと思う。
結瑠と付き合い始めてしばらくが経つけど、未だに慣れないことがたくさんある。たとえば今みたいな何気ない会話でドキッとしてしまうこともあるし、つい目を逸らしてしまうこともある。
ただ、恋人らしいことをしたかというと、あまりそういったことはない。キスどころか手も繋いでいない。結瑠はいつも家まで迎えに来るし、いつも一緒に帰っているから当然だ。もちろん俺も、今のままで満足しているわけではない。でもやっぱり踏み出す勇気はない。
そんなことをぼんやりと考えていると、横から「あー」という呻き声が聞こえてきた。見ると、机に突っ伏した結瑠がこちらを見ていた。「もう……我慢できない……」
「……は?」
結瑠はむくりと体を起こし、こちらを見た。その目は据わっていて、なんだか不気味だ。まるで獲物を見つけた猛獣のような眼光を放っている。
「せ、瀬畑くん!」
「な、なんだ?」
いきなり大声で名前を呼ばれたので、ビクッと反応してしまう。すると結瑠は立ち上がり、こちらに向かって歩いてきた。そして俺の膝の上にすとんと腰を下ろした。いわゆる対面座位のような体勢になる。
「え、ちょ、何してるんだ!?」
動揺する俺を見て、結瑠はくすくすと笑った。
「ふふ、驚いた?」
「驚くに決まってるだろ!」
そう言って軽く肩を押すと、結瑠は不満げな顔をした。
「もう……瀬畑くんのいじわる……」
「いや、意味わかんねえよ」
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