四季の姫巫女(完結)

襟川竜

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第四幕 愉比拿蛇

第十一話

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本来、霊体には物理攻撃は効かない。
だが誠士郎が使ったのは友の一人、俊介特製の代物だ。
今回の作戦に参加できない代わりにと、俊介が特殊な方法を用いて霊力を込めた弾丸を撃ち出す拳銃を作り上げた。
霊力がなくても扱え、霊体にしか効果が無い為、誤って人に当たっても影響はない(影響は無くても多少の痛みはある、というのは俊介の心の内にのみ収められた)。
だが、今沸き出しているような低級の霊魂を浄化させる程度の威力しかない。
弾数も限られており、対霊体用の武器と言うよりは、護身用とでも言うべきだろうか。
なんにしても霊具を使う事ができない誠士郎にはありがたい。
病弱ではあるものの、友人達に負けないようにと人知れず修行はしてきた。
いずれ啼々鏡家の当主となるのだから、自分の身くらいは自分で守れるようになりたいと思っての事だった。
自ら先陣を切る事はほとんどないとはいえ、いつどのような事態が起こるかわからない。
せめて友人達の足手まといにならないくらいには動けるようになりたいと、無理のない範囲で護身術の基本『防御の型』を中心にして身につけた。
おかげで誠士郎は自身に結界を張らずとも応戦できている。
しかし、状況は悪くなる一方。
おびただしい霊魂によって徐々に分断されていく。
まずは気絶していることりを助ける為に近寄ろうとするが、蛇の胴体と思しき半透明な何かが行く手を遮る。
視界からことり達の姿が消えたことにより、彼女達に掛けられた結界も消滅したようだ。
行く手を遮る胴体の向こうから美園達の悲鳴が聞こえた。
慌てふためく二人を弥生が叱咤激励する。
「美園、月子、早く結界を!」
「わ、わかったわ」
「そのままことりの側にいて」
「弥生はどうするの?」
「ことりが目を覚ますまでこいつらを払うわ。二重結界ならしばらく保もつでしょ」
弥生の言葉に二人は頷くとことりの側に駆け寄り、三人を包む結界を張る。
「弥生、そっちは大丈夫かい?」
「なんとかね。ことりが起きたらすぐ避難するわ。お兄様は里を」
「わかった。無理はしないように」
「わかってるわ」
姿は見えずとも妹が不適に笑ったような気がして誠士郎はその場を離れる。
向かった先は充実の元だ。
大量の霊魂達を浄化するなど、自分達だけでは到底不可能。
それよりも先に里にいる一般人を避難させなければならない。
霊具を使えない彼等には霊魂と戦う術はない。
ここにいる当主達でさえあまりの数の多さに圧倒されているのだ。
きっとすでにパニックが起きているに違いない。
「充実様、緊急事態です、七伏解放の…くっ」
充実に駆け寄ろうとした誠士郎を霊魂の大群が襲う。
誠士郎の持つ拳銃を警戒してか、霊魂達は狙いを絞らせない為に不規則に動く。
霊魂達にもこの場の脅威が誰なのかがわかるらしい。
パニックを起こしている当主達よりも誠士郎や弥生、充実、虎次郎への攻撃を重視しているようだ。
虎次郎は充実の指示で他の当主達を守っている。
他の啼々蔭達も加わり、何とか当主達は避難を開始する。
充実は刀状の霊具で応戦しているが、やはりこの数では話にならない。
自分達が優勢だと感じたのか、霊魂達が一斉に上空へと昇っていく。
そして一瞬ぴたりと停止すると、一斉に降下を始めた。
雨のように霊魂達が勢いよく降りかかる。
まるで誠士郎達を押し潰そうとしているかのようだ。
さすがにマズいと感じ、誠士郎は全員を包む結界を張ろうとした。
「秋風に舞え!」
誠士郎よりも一足早く、高らかに声が響く。
どこからともなくたくさんの紅葉こうようした銀杏いちょう紅葉もみじの葉が風に乗って運ばれてきた。
旋風つむじかぜに乗った紅葉は霊魂達を包み、次々に浄化していく。
何とも綺麗で、神秘的な光景だった。
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