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第3章 魔王退治に魔王が同行するってどういう事?
その3
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「つまり、今起きている厄災はゼロさんが意図的に起こしているわけではなく…」
「自然現象みたいなものじゃのぅ」
「なんか、教えられた話と全然違うんですけど…。というか、ゼロさんの話が本当なら手の打ちようがないんじゃないですか?」
「まあ待て、話は最後まで聞くのじゃ」
そう言ってゼロさんは話を続けた。
魔獣達が世界樹から受け取った種は、世界樹と同じように不幸のエネルギーを吸収して成長した。
しかし、小さな種に吸収できる量は限られている。
限界以上に取り込めば、世界樹と同じように枯れてしまうのは想像に難くない。
そこで魔獣達は不幸のエネルギーを一箇所に集める事にした。
彼等が世界樹から授かったのは、想像力で奇跡を起こす力ーー魔法だったのだ。
世界樹が失われ、絶望に支配されていた世界に彼等が魔法で作り出したのは、厄災の塊である魔王だった。
「絶望しているところに魔王なんて生み出したんですか!?追い討ち掛けてどうするんですか!」
「だから、話は最後まで聞けと言っておろうが」
「あ、すみません…」
「えーっと、どこまで話したのかのぅ」
魔獣達は各国に「魔王を浄化すれば厄災は終わる」と伝え、子供の顔程の大きさの卵を託した。
こんな世の中でも誰かの為に行動できる。
そんな純粋な心の持ち主だけが卵の力を使えると。
絶望の中に現れた一筋の光に、種族達は争いを止め、魔王を倒す勇者を探した。
卵は国の数だけある。
各国から集められた勇者達は力を合わせ、ついに魔王を浄化する事に成功した。
世界には平和が戻り、荒れた大地にも緑が戻った。
魔獣達は「不幸のエネルギーが溜まれば、いずれまた魔王は復活する」と告げ、争いの無い世を作れと言った。
各種族達はその言葉に頷いた。
しかし、平和に慣れると再び争いは起きた。
徐々に溜まった不幸のエネルギーで魔王は復活し、魔獣達から受け取った浄化の卵を手にした勇者が魔王を倒す。
このやり取りは、およそ200年周期で繰り返されている。
「なるほど。つまり、ゼロさんは不幸のエネルギーの集合体、というわけなんですね」
「それなんじゃがの…」
ゼロさんは眉をしかめて腕を組む。
今の説明を聞く限りそうだと思ったんだけど、違うのかしら?
「儂はの、不幸のエネルギーの集合体ではなく、魔獣なんじゃ」
「え?魔獣って浄化する側ですよね?」
「うむ。15年前に復活したとはいえ、3000年も封印されていたせいか、記憶がほぼ失われておってな。何故自分が魔王になっておるのかわからんのじゃ」
「ええ!?」
「そこでヤヤコくんに聞きたい。今の儂の説明と、ヤヤコくんが聞いた話に違いはなかったかの?」
「違い、ですか?そうですね…。魔王が厄災をばら撒いた、魔獣が魔王に付いている、復活したから厄災が…あれ?」
「どうした?」
「確認してみないとわかりませんが、3000年間、もしかしたら魔王は現れていないのかもしれません」
「どういう事じゃ?」
「ゼロさんがいうには、200年毎に魔王は現れていたんですよね」
「うむ。種の成長と蓄積具合にもよるが、間違いない」
「私は復活した魔王が厄災をばら撒いた、と聞きました。もしゼロさんが封印されていた間にも他の魔王が現れていたのなら、わざわざ異世界から勇者を召喚しなくても、浄化の卵を使えばいいだけのはずです」
「そう言われればそうじゃの。できるかもわからん勇者召喚なんぞより勝機がある」
「理由はわかりませんが、3000年間厄災は起きず、その為に対抗手段も失われてしまったのではないでしょうか」
「成程。いやはや助かった。何が起きておるのかサッパリでな」
「配下の魔獣達には聞かなかったんですか?」
「目が覚めた時に『魔王様、永き封印より解き放たれたばかりで記憶も混乱しておりましょう。貴方様の補佐は私めにお任せを』なんて言われての。頭が働いてきた時にはもう、聞くに聞けん雰囲気でな」
「魔王が遠慮してどうするんですか」
「だって…なあ」
そう言ってゼロさんは頬を掻きながら苦笑した。
「自然現象みたいなものじゃのぅ」
「なんか、教えられた話と全然違うんですけど…。というか、ゼロさんの話が本当なら手の打ちようがないんじゃないですか?」
「まあ待て、話は最後まで聞くのじゃ」
そう言ってゼロさんは話を続けた。
魔獣達が世界樹から受け取った種は、世界樹と同じように不幸のエネルギーを吸収して成長した。
しかし、小さな種に吸収できる量は限られている。
限界以上に取り込めば、世界樹と同じように枯れてしまうのは想像に難くない。
そこで魔獣達は不幸のエネルギーを一箇所に集める事にした。
彼等が世界樹から授かったのは、想像力で奇跡を起こす力ーー魔法だったのだ。
世界樹が失われ、絶望に支配されていた世界に彼等が魔法で作り出したのは、厄災の塊である魔王だった。
「絶望しているところに魔王なんて生み出したんですか!?追い討ち掛けてどうするんですか!」
「だから、話は最後まで聞けと言っておろうが」
「あ、すみません…」
「えーっと、どこまで話したのかのぅ」
魔獣達は各国に「魔王を浄化すれば厄災は終わる」と伝え、子供の顔程の大きさの卵を託した。
こんな世の中でも誰かの為に行動できる。
そんな純粋な心の持ち主だけが卵の力を使えると。
絶望の中に現れた一筋の光に、種族達は争いを止め、魔王を倒す勇者を探した。
卵は国の数だけある。
各国から集められた勇者達は力を合わせ、ついに魔王を浄化する事に成功した。
世界には平和が戻り、荒れた大地にも緑が戻った。
魔獣達は「不幸のエネルギーが溜まれば、いずれまた魔王は復活する」と告げ、争いの無い世を作れと言った。
各種族達はその言葉に頷いた。
しかし、平和に慣れると再び争いは起きた。
徐々に溜まった不幸のエネルギーで魔王は復活し、魔獣達から受け取った浄化の卵を手にした勇者が魔王を倒す。
このやり取りは、およそ200年周期で繰り返されている。
「なるほど。つまり、ゼロさんは不幸のエネルギーの集合体、というわけなんですね」
「それなんじゃがの…」
ゼロさんは眉をしかめて腕を組む。
今の説明を聞く限りそうだと思ったんだけど、違うのかしら?
「儂はの、不幸のエネルギーの集合体ではなく、魔獣なんじゃ」
「え?魔獣って浄化する側ですよね?」
「うむ。15年前に復活したとはいえ、3000年も封印されていたせいか、記憶がほぼ失われておってな。何故自分が魔王になっておるのかわからんのじゃ」
「ええ!?」
「そこでヤヤコくんに聞きたい。今の儂の説明と、ヤヤコくんが聞いた話に違いはなかったかの?」
「違い、ですか?そうですね…。魔王が厄災をばら撒いた、魔獣が魔王に付いている、復活したから厄災が…あれ?」
「どうした?」
「確認してみないとわかりませんが、3000年間、もしかしたら魔王は現れていないのかもしれません」
「どういう事じゃ?」
「ゼロさんがいうには、200年毎に魔王は現れていたんですよね」
「うむ。種の成長と蓄積具合にもよるが、間違いない」
「私は復活した魔王が厄災をばら撒いた、と聞きました。もしゼロさんが封印されていた間にも他の魔王が現れていたのなら、わざわざ異世界から勇者を召喚しなくても、浄化の卵を使えばいいだけのはずです」
「そう言われればそうじゃの。できるかもわからん勇者召喚なんぞより勝機がある」
「理由はわかりませんが、3000年間厄災は起きず、その為に対抗手段も失われてしまったのではないでしょうか」
「成程。いやはや助かった。何が起きておるのかサッパリでな」
「配下の魔獣達には聞かなかったんですか?」
「目が覚めた時に『魔王様、永き封印より解き放たれたばかりで記憶も混乱しておりましょう。貴方様の補佐は私めにお任せを』なんて言われての。頭が働いてきた時にはもう、聞くに聞けん雰囲気でな」
「魔王が遠慮してどうするんですか」
「だって…なあ」
そう言ってゼロさんは頬を掻きながら苦笑した。
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