四季の姫巫女2

襟川竜

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第一幕 旅立ち

第二話

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次の日、わたしは宿祢と共に朝一でいすゞの里を後にした。
帝のいる都へは約一ヶ月かかる。
なんでそんなにかかるのかというと、わたしの住んでいるいすゞの里は『都ノ厦 とのいえ』という島にあるの。
都があるのは阿薙火国でも特に権力や財力をもつ、富裕層と呼ばれる人達が多く住んでいる『神薙 かんなぎ』という名の一番大きな島。
神薙に行くにはまず港から船で『篠崎 しのざき』へと向かう。
そこからさらに乗り換えて『阿倭羅 あわら』か『火埜 ひや』を経由しなければならない。
梅がようやく咲き始めたこの時期、都に着くころにはきっと桜が満開になってるに違いないわ。
阿倭羅にはたくさんの桜の名所があるみたいだし、行く時は火埜を経由して、帰りにのんびり桜を見ながらっていうのもありだよね。
どっちにしようかなぁ。
でもその前に、まずは篠崎にある『村友茶屋 むらともちゃや』に行かなくちゃいけない。
秋ちゃんに『そこの店主に渡して』って荷物を預かったの。
人里での無用な混乱を無くすために羽は妖術で消してあるので、風呂敷包みを背負った宿祢は、どこからどう見ても山伏 やまぶし
その横を歩くわたしは、どう見えてるのかな?
やっぱり山伏?それともお遍路さんとかって呼ばれる巡礼者?
姫巫女になる為に修行しているんだし、修験者とか?
思いつく限りの候補を上げてみたけれど、結局のところわからない。
まあ、別にいいよね。

港がある町へは歩いて半日ほど。
なにせいすゞの里はかなりの山奥だから。
町に着いたら船のチケットを買って船旅開始。
出航までに時間があるならお団子とか食べたいなぁ。
なんて、町に着いたら何をしようかと宿祢と一緒に考えながら歩く。
三時間くらい歩いては少し休憩し、また歩く。
お昼は秋ちゃんと結依ちゃんが作ってくれたおにぎりがあるんだよね。
早く食べたいなぁ。
弥生ちゃんと虎君と泰時様に「道中食べて」って金平糖の詰め合わせももらったんだよ。
疲れたら二人で一粒ずつ食べて元気をつけてるの。
すごく甘くて美味しいんだよ。
帝に会うのはやっぱり緊張するけれど、せっかくの旅だもの。
楽しまなくちゃ損だよね。
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