5 / 15
第二章 怪しい洞窟にはご注意を
その1 魂捕縛(ソウル・カトゥラ)の洞窟
しおりを挟む
俺達は今、例の洞窟の前にいる。雨の原因を突き止めないといけないし、ターキーさんが中にいるかもしれないし、アルカディアさんも助けないといけない。
アルカディアさんはターキーさんを探す為に、先に洞窟の中に入っている。ソウルなんとかって言う、入ったら出られなくなる術がかかっている以上、迂闊に中に入る訳にはいかない。だから俺とシャーナ、ムーリトは外で待っている状態だ。
余談だけれど、暴風雨はいまだに続いている。だからムーリトは俺達を包み込む結界を張ってくれた。大きなシャボン玉の中に入っていると思ってくれればいい。暴風雨の中じゃ傘をさしても意味がないし、濡れたまま動きまわっては風邪を引いてしまう。体調は万全じゃないと、咄嗟の対応ができなくなっちゃうからね。
程なくして洞窟の奥かが誰かが来た。アルカディアさんだ。
洞窟の暗闇の中でも、アルカディアさんの髪はほとんど溶け込んでいない。髪の白さが浮きあがっているように見えて、ちょっとだけ不気味だ。
アルカディアさんは「明りの術」を小石に掛け、松明代わりにしている。その後ろにはもう一人、濃いめの青い髪の青年がいた。この人がターキーさんだろうか。
「ターキーさん。ここにいたんですね」
ムーリトが青年の名前を呼んだ。
「あ、ムーリトちゃん……うわっ」
ターキーさんがムーリトを見てこちらに駆け寄ってくる。だけど洞窟の出口で見えない壁にぶつかって尻餅をついてしまった。
「だから先程申し上げたではありませんか」
「うう…そうだった」
アルカディアさんがやれやれといった感じで肩を竦める。ターキーさんは立ち上がると恥ずかしそうにしながら頭をかいた。
「アルカディアさん、中の様子はどうでした?」
「奥までは行きませんでしたから、詳しい事はまだ判分かりません」
俺の質問にアルカディアさんは首を振って答えた。
「ただ、中には結構な数の水棲魔物がいます」
「いどぅ・あくあ?」
「水に属する魔物の総称よ」
俺の質問にシャーナが教えてくれた。
「カエル人間がたくさんいるんだよ。10とか20ならまだしも、50ぐらいはいると思うぞ」
ターキーさんがぶるりと体を震わせる。カエル人間って何なんだよ。
俺は思わずカエルのマスクを被った人間を想像してしまった。…なんか、気持ち悪そう。ムーリトも眉をしかめている。
「水棲魔物が洞窟の中で、一体何をしているのかしら」
「そこまでは分かりません」
シャーナの質問にアルカディアさんは首を横に振って答える。シャーナの顔色は全然変わらない。相変わらず図太い神経の持ち主だ。
「とりあえず、水棲魔物をどうにかしない限り、ここからは出られないでしょうね」
「そうですね。でも、アルカディアさんお一人では…」
シャーナはそこで言葉を濁した。
確かにアルカディアさん一人で50匹近い魔物を倒すのは大変だ。魔物の強さがどれくらいなのかはわからないけど、無謀だって事ぐらいはわかる。
それにアルカディアさんの武器は弓矢だ。狙いを定めたり、弓を引き絞ったりしている間、魔物が大人しくしてくれているとは限らない。普通は大人しくなんてしていないだろう。
カエル人間かぁ…。なんか気持ち悪そうだけど、ちょっと見てみたいかも。
不謹慎だとは思ったけれど、俺は好奇心に駆られてしまう。
「俺も一緒に行きます」
「え?」
「アルカディアさん一人じゃ、絶対に大変だと思います。一人より二人っていうじゃないですか。俺、時間稼ぎくらいの役には立ちますよ」
「ソルト君が行くのなら、もちろん私も行きます」
「よろしいのですか?最悪の場合、ここから出られなくなってしまうのですよ?」
「大丈夫、きっと何とかなります!」
俺がウインクをしたら、アルカディアさんは「でも…」と口では渋るものの、ほっとしたような表情を浮かべた。やっぱり一人じゃ不安だったんだろうな。
「あ…えと…」
俺達を交互に見てから、ムーリトはおずおずと手を挙げた。
「わ、私も…」
「ムーリト、無理しなくていいんだよ?」
「で、でも…これは、町の問題でもあるし…。わ、私だって…その…あんまり役に立たないけど……というか、役立たずだけど…で、でも…何か出来る事があると…その…お、思う…から…」
「ムーリトさんも来てくださるというなら、とても心強いです」
にこり、とアルカディアさんは微笑みかけた。
ムーリトって気が弱いだけかと思っていたけど、ちゃんと芯が通っているみたいだ。
「よし!それじゃあ、さっさと問題を解決させて、リニアの町に平和を取り戻そう!」
「ええ」「はい」「う、うん」
俺達三人は、覚悟を決めて洞窟へと足を踏み入れた。
アルカディアさんはターキーさんを探す為に、先に洞窟の中に入っている。ソウルなんとかって言う、入ったら出られなくなる術がかかっている以上、迂闊に中に入る訳にはいかない。だから俺とシャーナ、ムーリトは外で待っている状態だ。
余談だけれど、暴風雨はいまだに続いている。だからムーリトは俺達を包み込む結界を張ってくれた。大きなシャボン玉の中に入っていると思ってくれればいい。暴風雨の中じゃ傘をさしても意味がないし、濡れたまま動きまわっては風邪を引いてしまう。体調は万全じゃないと、咄嗟の対応ができなくなっちゃうからね。
程なくして洞窟の奥かが誰かが来た。アルカディアさんだ。
洞窟の暗闇の中でも、アルカディアさんの髪はほとんど溶け込んでいない。髪の白さが浮きあがっているように見えて、ちょっとだけ不気味だ。
アルカディアさんは「明りの術」を小石に掛け、松明代わりにしている。その後ろにはもう一人、濃いめの青い髪の青年がいた。この人がターキーさんだろうか。
「ターキーさん。ここにいたんですね」
ムーリトが青年の名前を呼んだ。
「あ、ムーリトちゃん……うわっ」
ターキーさんがムーリトを見てこちらに駆け寄ってくる。だけど洞窟の出口で見えない壁にぶつかって尻餅をついてしまった。
「だから先程申し上げたではありませんか」
「うう…そうだった」
アルカディアさんがやれやれといった感じで肩を竦める。ターキーさんは立ち上がると恥ずかしそうにしながら頭をかいた。
「アルカディアさん、中の様子はどうでした?」
「奥までは行きませんでしたから、詳しい事はまだ判分かりません」
俺の質問にアルカディアさんは首を振って答えた。
「ただ、中には結構な数の水棲魔物がいます」
「いどぅ・あくあ?」
「水に属する魔物の総称よ」
俺の質問にシャーナが教えてくれた。
「カエル人間がたくさんいるんだよ。10とか20ならまだしも、50ぐらいはいると思うぞ」
ターキーさんがぶるりと体を震わせる。カエル人間って何なんだよ。
俺は思わずカエルのマスクを被った人間を想像してしまった。…なんか、気持ち悪そう。ムーリトも眉をしかめている。
「水棲魔物が洞窟の中で、一体何をしているのかしら」
「そこまでは分かりません」
シャーナの質問にアルカディアさんは首を横に振って答える。シャーナの顔色は全然変わらない。相変わらず図太い神経の持ち主だ。
「とりあえず、水棲魔物をどうにかしない限り、ここからは出られないでしょうね」
「そうですね。でも、アルカディアさんお一人では…」
シャーナはそこで言葉を濁した。
確かにアルカディアさん一人で50匹近い魔物を倒すのは大変だ。魔物の強さがどれくらいなのかはわからないけど、無謀だって事ぐらいはわかる。
それにアルカディアさんの武器は弓矢だ。狙いを定めたり、弓を引き絞ったりしている間、魔物が大人しくしてくれているとは限らない。普通は大人しくなんてしていないだろう。
カエル人間かぁ…。なんか気持ち悪そうだけど、ちょっと見てみたいかも。
不謹慎だとは思ったけれど、俺は好奇心に駆られてしまう。
「俺も一緒に行きます」
「え?」
「アルカディアさん一人じゃ、絶対に大変だと思います。一人より二人っていうじゃないですか。俺、時間稼ぎくらいの役には立ちますよ」
「ソルト君が行くのなら、もちろん私も行きます」
「よろしいのですか?最悪の場合、ここから出られなくなってしまうのですよ?」
「大丈夫、きっと何とかなります!」
俺がウインクをしたら、アルカディアさんは「でも…」と口では渋るものの、ほっとしたような表情を浮かべた。やっぱり一人じゃ不安だったんだろうな。
「あ…えと…」
俺達を交互に見てから、ムーリトはおずおずと手を挙げた。
「わ、私も…」
「ムーリト、無理しなくていいんだよ?」
「で、でも…これは、町の問題でもあるし…。わ、私だって…その…あんまり役に立たないけど……というか、役立たずだけど…で、でも…何か出来る事があると…その…お、思う…から…」
「ムーリトさんも来てくださるというなら、とても心強いです」
にこり、とアルカディアさんは微笑みかけた。
ムーリトって気が弱いだけかと思っていたけど、ちゃんと芯が通っているみたいだ。
「よし!それじゃあ、さっさと問題を解決させて、リニアの町に平和を取り戻そう!」
「ええ」「はい」「う、うん」
俺達三人は、覚悟を決めて洞窟へと足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる