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宮廷編
乗馬
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『おはようございます、アネット様』
アメリさんが帝国語で挨拶をする。最近は二人だけの時は出来る限り帝国語だけ使うのが決まりになっている。帝国語でなんて言うか分からないときは、王国語を使ってしまうけど。
いつかランベルトにいきなり流暢な帝国語で喋りだしてあっと言わせるのが私の今の目標。その時のランベルトの驚きを思うとワクワクする。
最近はランベルトは平日は宮廷で仕事をして、週末に離宮に『帰って来る。』
じゃあ私とアメリさんは平日は何をしてるかと言うと帝国語の勉強と乗馬のレッスン。馬に乗れるようになったらランベルトと狩りに行くって約束。
もう狩猟シーズンだし、さっさと乗馬を覚えなきゃね。初めて馬に乗った時はランベルトの後ろに乗せて貰ったんだよ。きゃー、恥ずかし。
皇帝陛下も今年はこの離宮を使わず私達に貸してくれたから、冬になるまではここにいられる。それまでにはモンスでの調査も終わってるはず。そしたら私がランベルトに惚れたので、ヨハン様との結婚を拒否したって話が公爵様に届く。それで非嫡出子でも皇帝陛下の子供のランベルトと私は結婚する。
アメリさんは相変わらず皇帝家が公爵家を吸収するためにランベルトを私と結婚させようとしてると言うけど、それでも良いじゃん。政略結婚なんて元々そんなもの。それがいやならそもそも私を帝国になんか送り込まなきゃ良かったんだよ。
公爵様がもし気に入らなきゃ私が替え玉だって暴露すれば良いしね。それまでは皇帝陛下とヨハン様、ランベルト以外に対してはちゃんとマリー様の替え玉役を果たしてる。
そりゃランベルトが皇帝陛下に言われてやってるのは分かってる。でも皇帝陛下の息子なのに10歳まで市井で暮らしたランベルトと孤児で養子として育った私って境遇が似てるでしょ。何処か相通ずる所があるんだよね。他の貴族社会の人には分からないんだよ。領土だの家系だのより大切なものがあるって事が。
ランベルトが帰ってくるのは夕方。
『明日は遠乗りをされるのですか?』
『まず、どれ位上達したか確認してからですね』
『お二人だけではないですよね』
『多分警護が付くと思います』
ノックの音が聞こえた。
「ランベルト様がお帰りです。お食事の準備が整っております」
私とアメリさんが帝国語で会話して、ここの人とは王国語話すなんて変なの。あべこべ。
「直ぐ行くよ」
「アネット様、ここの使用人には貴族として振る舞って下さいませ」
「えー、だって皆知ってるじゃん」
「あまりくだけた口調ばかり話してると、宮廷に戻る時困りますよ」
「うーん、そうだね。そうだ今日はランベルトとお貴族様ごっこをしよう」
「お貴族様ごっこですか?」
「今日だけは貴族風の喋り方をするんだよ」
「それなら今直ぐそうして下さいませんか?」
「うーん、分かりました。そうしてみます」
「そうして下さいませ」
アメリさんを伴って食堂に向かう。
「おかえりなさいませ」
「あれ?どうしたの、その言葉遣い」
「あまりくだけた言い方ばかりしてると、宮廷に戻る時困るだろうとアメリが申しますので今晩は丁寧な言葉をつかってみようかと」
「うーん、宮廷にもどる時か、でも宮廷じゃ王国語を話す人はあまりいないんだよね」
「あ、そうか。じゃ、いいや」
「駄目ですよ、アネット様」
「アメリも余計な事言うよね。それよりそろそろ帝国語を覚えた方が良いんじゃない?」
「良いの?」
「何が?」
「だって話してる事全部私に分かっちゃうと困らない?」
「君には隠し事なんてしないよ」
「男の人はみんなそういう都合のいい事を言うって前に村の奥さん達が言ってたよ」
「僕は違うよ」
「嘘おっしゃい」
「酷いな」
そんな軽口を話して食事が済んだ。
翌日は晴天。朝食を済ませてから庭で乗馬の上達を披露した。ランベルトに合格を貰って、午後から遠乗り。
私とランベルトと男性の警護が3人付いた。街道に出るまで森の中の道を駈歩で走る。木立を抜けて少しで街道まで来た。
「こっちが宮殿だっけ?」
左側を指して聞いた。
「そうだよ。左側に行くと宮殿まで2帝国マイルほどかな?」
「こっちは?」
「右に向かうと地元の村まで半帝国マイルほどさ。今日はこっちに行こう」
少し登り気味の道を速歩で行く。たまに街道を歩く人がちょっとびっくりしたように私の顔を見る。何々?
村に到着して一休み。馬に水を飲ませて休んでいると村人がおっかなびっくりに見ている。彼らの言葉を聞いて気が付いた。アメリさんが教えてくれた帝国語ってお貴族言葉じゃん。
ランベルトに聞いた。
「あの人たち何言ってるの?」
「馬に乗ってる女の人が珍しいらしいね。君の格好も」
私が着ているのはモンスからの荷物に入ってた狩猟用の服。他にも化粧道具だのなんだの馬車一台分の荷物が離宮に運び込まれてる。モンスから来た時の二台目の荷馬車の荷物がそのまま来てるわけ。
「そう言えば、この道ってモンスから来た時通った所だよね」
「そう。ここから峠を越えてずっと行くとアウクスブルグだ」
いつかこの道を通って里帰りする日が来るかな?きっと来るよね。
アメリさんが帝国語で挨拶をする。最近は二人だけの時は出来る限り帝国語だけ使うのが決まりになっている。帝国語でなんて言うか分からないときは、王国語を使ってしまうけど。
いつかランベルトにいきなり流暢な帝国語で喋りだしてあっと言わせるのが私の今の目標。その時のランベルトの驚きを思うとワクワクする。
最近はランベルトは平日は宮廷で仕事をして、週末に離宮に『帰って来る。』
じゃあ私とアメリさんは平日は何をしてるかと言うと帝国語の勉強と乗馬のレッスン。馬に乗れるようになったらランベルトと狩りに行くって約束。
もう狩猟シーズンだし、さっさと乗馬を覚えなきゃね。初めて馬に乗った時はランベルトの後ろに乗せて貰ったんだよ。きゃー、恥ずかし。
皇帝陛下も今年はこの離宮を使わず私達に貸してくれたから、冬になるまではここにいられる。それまでにはモンスでの調査も終わってるはず。そしたら私がランベルトに惚れたので、ヨハン様との結婚を拒否したって話が公爵様に届く。それで非嫡出子でも皇帝陛下の子供のランベルトと私は結婚する。
アメリさんは相変わらず皇帝家が公爵家を吸収するためにランベルトを私と結婚させようとしてると言うけど、それでも良いじゃん。政略結婚なんて元々そんなもの。それがいやならそもそも私を帝国になんか送り込まなきゃ良かったんだよ。
公爵様がもし気に入らなきゃ私が替え玉だって暴露すれば良いしね。それまでは皇帝陛下とヨハン様、ランベルト以外に対してはちゃんとマリー様の替え玉役を果たしてる。
そりゃランベルトが皇帝陛下に言われてやってるのは分かってる。でも皇帝陛下の息子なのに10歳まで市井で暮らしたランベルトと孤児で養子として育った私って境遇が似てるでしょ。何処か相通ずる所があるんだよね。他の貴族社会の人には分からないんだよ。領土だの家系だのより大切なものがあるって事が。
ランベルトが帰ってくるのは夕方。
『明日は遠乗りをされるのですか?』
『まず、どれ位上達したか確認してからですね』
『お二人だけではないですよね』
『多分警護が付くと思います』
ノックの音が聞こえた。
「ランベルト様がお帰りです。お食事の準備が整っております」
私とアメリさんが帝国語で会話して、ここの人とは王国語話すなんて変なの。あべこべ。
「直ぐ行くよ」
「アネット様、ここの使用人には貴族として振る舞って下さいませ」
「えー、だって皆知ってるじゃん」
「あまりくだけた口調ばかり話してると、宮廷に戻る時困りますよ」
「うーん、そうだね。そうだ今日はランベルトとお貴族様ごっこをしよう」
「お貴族様ごっこですか?」
「今日だけは貴族風の喋り方をするんだよ」
「それなら今直ぐそうして下さいませんか?」
「うーん、分かりました。そうしてみます」
「そうして下さいませ」
アメリさんを伴って食堂に向かう。
「おかえりなさいませ」
「あれ?どうしたの、その言葉遣い」
「あまりくだけた言い方ばかりしてると、宮廷に戻る時困るだろうとアメリが申しますので今晩は丁寧な言葉をつかってみようかと」
「うーん、宮廷にもどる時か、でも宮廷じゃ王国語を話す人はあまりいないんだよね」
「あ、そうか。じゃ、いいや」
「駄目ですよ、アネット様」
「アメリも余計な事言うよね。それよりそろそろ帝国語を覚えた方が良いんじゃない?」
「良いの?」
「何が?」
「だって話してる事全部私に分かっちゃうと困らない?」
「君には隠し事なんてしないよ」
「男の人はみんなそういう都合のいい事を言うって前に村の奥さん達が言ってたよ」
「僕は違うよ」
「嘘おっしゃい」
「酷いな」
そんな軽口を話して食事が済んだ。
翌日は晴天。朝食を済ませてから庭で乗馬の上達を披露した。ランベルトに合格を貰って、午後から遠乗り。
私とランベルトと男性の警護が3人付いた。街道に出るまで森の中の道を駈歩で走る。木立を抜けて少しで街道まで来た。
「こっちが宮殿だっけ?」
左側を指して聞いた。
「そうだよ。左側に行くと宮殿まで2帝国マイルほどかな?」
「こっちは?」
「右に向かうと地元の村まで半帝国マイルほどさ。今日はこっちに行こう」
少し登り気味の道を速歩で行く。たまに街道を歩く人がちょっとびっくりしたように私の顔を見る。何々?
村に到着して一休み。馬に水を飲ませて休んでいると村人がおっかなびっくりに見ている。彼らの言葉を聞いて気が付いた。アメリさんが教えてくれた帝国語ってお貴族言葉じゃん。
ランベルトに聞いた。
「あの人たち何言ってるの?」
「馬に乗ってる女の人が珍しいらしいね。君の格好も」
私が着ているのはモンスからの荷物に入ってた狩猟用の服。他にも化粧道具だのなんだの馬車一台分の荷物が離宮に運び込まれてる。モンスから来た時の二台目の荷馬車の荷物がそのまま来てるわけ。
「そう言えば、この道ってモンスから来た時通った所だよね」
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いつかこの道を通って里帰りする日が来るかな?きっと来るよね。
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