15 / 16
二章
肉は美味い
しおりを挟む夜になって、サンも帰ってくると、行きつけだという焼肉屋に連れてきてもらった。
3人の行きつけなんて、どんな高級店だ?と思ったけど、こじんまりとした焼肉店で、チカ達は気の良さそうな店主と楽しそうに話してた。
ダイとサンが肉を焼く。
「俺やるよ」と言っても、「いいから」と俺の皿にどんどん肉が置かれていく。
冷めらたらせっかくのお肉が…、トングは諦めて箸を持つ。美味しそうな肉を口に運ぶと、俺は目を見開いた。
「美味いだろ?」
と、隣のチカが笑う。
俺は、首を何度も縦に振った。美味しい。
「肉が溶けた!」
あまりの感動に声が上がる。そんな俺を見て、3人が嬉しそうに笑った。俺の皿にまた肉が置かれる。
「トワは冬祭りって知ってる?」
「冬祭り?地元でやってる大きな祭りだよね」
「そう、明日から始まるんだけど、トワ行く?」
「いっいきたい!」
サンの言葉に食い気味で答える。
冬祭り。行ってみたかったんだ。一緒に行ってくれる人もいないし、1人で行く勇気もなかったから、毎年あの屋敷の部屋で花火の音を聞いてた。
「俺、祭りに行くのはじめてだ」
「トウワ嬉しそうだね」
「嬉しいよ!はじめてのお祭りだよ!」
前のめりでダイに答えると、横にいたチカが「落ち着け落ち着け」と俺の背中を撫でた。
「チカも一緒に行くよね!?ダイもサンも!」
「あぁ、4人で行こうな」
「やった!!」
「ただ、俺ら冬祭りの準備手伝ってたからさ、少し挨拶しないといけない人達がいるんだけど、大丈夫?」
ダイに心配そうに伺われたが、二つ返事で「大丈夫!」と答えた。
るんるんな気持ちで焼肉屋を出る。
店主のおじさんに本当に美味しかったと感動を伝えると、「またいつでも食べに来い」と言ってくれた。
今まで食べたどのお肉よりも美味しくて、もともと小食気味だったのだが、いつもより沢山食べることができた。
お会計はいつも通りチカが払ってくれて、申し訳ない気持ちがあるけど、悲しいことに俺には金がない。
いつか必ず恩返しすることを誓って、今日も「ごちそうさまです」と頭を下げる。
「美味しかったか?」
「すっっごく、美味しかったです」
「なら良い。また来ような」
チカが満足気に笑う。この日から、月に3回ほど、焼肉に連れてってくれるようになった。
134
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる