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一年目 ~移民の歌~
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とても、美人だ。
歓迎会で出会ったその女性は、僕が今まで出会った女性の中でも特にお美しい方だった。くっきりとした二重瞼とぱっちりした目、筋の通った小ぶりな鼻がなんとも可憐だ。
僕の不安は全くもって意味のない、いや、意味のなさすぎる不安だった。同時に戸田や小山さんもまっとうなことを言える人なんだと知れて安心した。
「はじめまして。高木マキです」
自己紹介してくれた声は富士山頂の空気のように澄み渡り、僕の心に染み渡った。
「は、はじめまして。あ、あの、今日、引っ越してきた、後藤田、清です」
緊張のあまりにつかえながらも、なんとか自己紹介をする。少し恥ずかしかったけど、その様子を微笑ましい様子で見守ってくれる笑顔がまた素敵だ。その笑顔は天使みたいというよりも、天使そのものだ。
戸田が買ってきてくれた食材で、四人だけの小さな歓迎会が催された。人数こそ少なくとも、僕にとっては大きな一歩である。給食や弁当の時間以外に母親や祖母以外の女性と食事すること自体初めてだったし、その初めてがこんなにも素敵な女性の手作りだなんて、今まで想像したことすらなかった。
「ごめんなさいね。もっと豪華なものを作れたら歓迎会らしくなるんだけど、レパートリーが少なくて」
そう言って微笑む。
「あい、いえ!ものすごく美味しいです!こんな美味しい料理は初めてです!幸せです!」
僕は本心を正直に申し上げたつもりだったのだのだが、それを聞いた高木さんは楽しそうに笑ってくれた。笑顔も素敵だが、笑い声も最高だ。そして僕は少し考えを改めた。天使ではない。女神様だ。
「そんなにかしこまらないでね」
そうは言われても、緊張して何をどうすればいいのか分からない。
「そうだ。これからは同じアパートの仲間なんだから、もっとリラックスしろよ。マキさんも、後藤田は長いから清でいい」
僕の様子を見かねたように戸田が言った。
「そう?じゃあ、清くん」
なんだか部屋が明るくなった。
女性に苗字ではなく名前で呼ばれたのは初めてだけれど、それがこんなに幸せなことだとは知らなかった。今まで平凡のだと思っていた「清」という名前が、僕の中で急に輝きだした。これほど素晴らしい響きの名前だとは今まで知らなかった。この名前をくれた両親に心から感謝した。
「じゃあ、私のことも下で呼んでね。みんなもそうだし」
そんなことを言われても、そんな勇気はない。たじろぐ僕を面白そうに見ていた戸田が横から口を出す。
「そう、俺たちはみんなマキさんって呼んでる。ほら、清も呼んでみろ」
「・・・・・・」
急に言われても呼べない。あたふたしている僕、その様子を面白がる戸田と高木さんを眺めながら、小山さんが嬉しそうな顔を浮かべている。
「え、ええ、では、マ、マキさん・・・・・・」
消え入りそうな声をなんとか絞り出した。
「はい」
マキさんが楽しそうに微笑みながら返事をしてくれた。
どうやら僕は今、恋をした。
これがアニメだったら、僕の心臓はハート型になって飛び出すところだ。二年の浪人生活の中で、会話した女性は母親と祖母だけだった僕にとって、これほど綺麗な女性と会話できるだけで惚れてしまいそうになるのに、しかもこの微笑みだ。
引っ込み思案の僕だけど、恋に落ちるのは人一倍早い。女性に縁のない思春期の男子には多いと思うのだが、優しく話しかけてくれるだけで恋に落ちてしまうのだ。昔から僕は時折、電撃的に恋に落ちてしまう。もちろん、実ったことは一度もないばかりか、思いのたけを伝えられたことすら一度もない。
マキさん。こんな素敵な女性と仲良くなれるなんて、なんて素敵な東京ライフの始まり方だろう。たぶん、小山さんも戸田も。
歓迎会で出会ったその女性は、僕が今まで出会った女性の中でも特にお美しい方だった。くっきりとした二重瞼とぱっちりした目、筋の通った小ぶりな鼻がなんとも可憐だ。
僕の不安は全くもって意味のない、いや、意味のなさすぎる不安だった。同時に戸田や小山さんもまっとうなことを言える人なんだと知れて安心した。
「はじめまして。高木マキです」
自己紹介してくれた声は富士山頂の空気のように澄み渡り、僕の心に染み渡った。
「は、はじめまして。あ、あの、今日、引っ越してきた、後藤田、清です」
緊張のあまりにつかえながらも、なんとか自己紹介をする。少し恥ずかしかったけど、その様子を微笑ましい様子で見守ってくれる笑顔がまた素敵だ。その笑顔は天使みたいというよりも、天使そのものだ。
戸田が買ってきてくれた食材で、四人だけの小さな歓迎会が催された。人数こそ少なくとも、僕にとっては大きな一歩である。給食や弁当の時間以外に母親や祖母以外の女性と食事すること自体初めてだったし、その初めてがこんなにも素敵な女性の手作りだなんて、今まで想像したことすらなかった。
「ごめんなさいね。もっと豪華なものを作れたら歓迎会らしくなるんだけど、レパートリーが少なくて」
そう言って微笑む。
「あい、いえ!ものすごく美味しいです!こんな美味しい料理は初めてです!幸せです!」
僕は本心を正直に申し上げたつもりだったのだのだが、それを聞いた高木さんは楽しそうに笑ってくれた。笑顔も素敵だが、笑い声も最高だ。そして僕は少し考えを改めた。天使ではない。女神様だ。
「そんなにかしこまらないでね」
そうは言われても、緊張して何をどうすればいいのか分からない。
「そうだ。これからは同じアパートの仲間なんだから、もっとリラックスしろよ。マキさんも、後藤田は長いから清でいい」
僕の様子を見かねたように戸田が言った。
「そう?じゃあ、清くん」
なんだか部屋が明るくなった。
女性に苗字ではなく名前で呼ばれたのは初めてだけれど、それがこんなに幸せなことだとは知らなかった。今まで平凡のだと思っていた「清」という名前が、僕の中で急に輝きだした。これほど素晴らしい響きの名前だとは今まで知らなかった。この名前をくれた両親に心から感謝した。
「じゃあ、私のことも下で呼んでね。みんなもそうだし」
そんなことを言われても、そんな勇気はない。たじろぐ僕を面白そうに見ていた戸田が横から口を出す。
「そう、俺たちはみんなマキさんって呼んでる。ほら、清も呼んでみろ」
「・・・・・・」
急に言われても呼べない。あたふたしている僕、その様子を面白がる戸田と高木さんを眺めながら、小山さんが嬉しそうな顔を浮かべている。
「え、ええ、では、マ、マキさん・・・・・・」
消え入りそうな声をなんとか絞り出した。
「はい」
マキさんが楽しそうに微笑みながら返事をしてくれた。
どうやら僕は今、恋をした。
これがアニメだったら、僕の心臓はハート型になって飛び出すところだ。二年の浪人生活の中で、会話した女性は母親と祖母だけだった僕にとって、これほど綺麗な女性と会話できるだけで惚れてしまいそうになるのに、しかもこの微笑みだ。
引っ込み思案の僕だけど、恋に落ちるのは人一倍早い。女性に縁のない思春期の男子には多いと思うのだが、優しく話しかけてくれるだけで恋に落ちてしまうのだ。昔から僕は時折、電撃的に恋に落ちてしまう。もちろん、実ったことは一度もないばかりか、思いのたけを伝えられたことすら一度もない。
マキさん。こんな素敵な女性と仲良くなれるなんて、なんて素敵な東京ライフの始まり方だろう。たぶん、小山さんも戸田も。
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